| 狩野派、肖像画、画賛(絵画にちなんで記される詩文)、禅宗に関わる絵画、天皇・皇族や画僧(絵画に堪能な僧)など職業画家ではない人物の作品といった事柄をテーマとしてきました。なかでも狩野探幽に長く関心をもち、その技とともに狩野派の組織、権力者や禅僧・儒者と共有した知識や思想、探幽が描く肖像画の図様と画賛の響き合い、天皇の作画にみる美意識が探幽の御用与えた影響などを考えてきました。今後も人間と美術作品の魅力的な関わりをより確かに捉えていきたい。
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| 私は大学生の時に日本美術史に出会ってから今までずっと、日本美術を観ること、それについて勉強することが楽しくてたまりません。美術史学の楽しさは、まずは作品に出会いその造形の芸術性に魅了され、それを把握・分析することにあります。そして、その上で、作品を生み出した社会の状況や特定の集団の思想や嗜好などに向き合うことにあると考えています。作品は社会の鏡です。時代の空気や人々の思いがいかに視覚化されているか、その視覚化のために画家はどのような表現を用いているか、当時の鑑賞者は作品の図様や表現に何をみたのか。作品は社会や人間について多くことを教えてくれます。美術作品を観て、調べて考える、そのスリリングな楽しさを是非多くの学生に知ってもらいたいと願っています。授業では基礎知識から最新の研究まで、間口広く、奥深く美術史の魅力を紹介します。 |
| [著書]『寛永文化の肖像画』(勉誠出版、2002年)、『巨匠
狩野探幽の誕生―江戸初期、将軍も天皇も愛した画家の才能と境遇』(朝日新聞出版、2014年)[論文]「懐月堂派と俳諧に関する一試論」(『浮世絵芸術』145・国際浮世絵学会、2003年)、「詩仙図について」『文学』11(3)(岩波書店、2010年)、「伝狩野元信原画「獣尽図屏風模本」と狩野派の動物画」『國華』1396(國華社、2012年)、「若冲と大典―『素絢石冊』と『玄圃瑤華』の画と詩」中野三敏監修・河野実編『詩歌とイメージ 江戸の版本・一枚摺にみる夢』(勉誠出版、2013年)、「後水尾天皇時代の宮廷絵画―描く天皇、皇族と画壇」(野口剛・五十嵐公一・門脇むつみ『天皇の美術史4 雅の近世、花開く宮廷絵画 江戸時代前期』吉川弘文館、2017年)
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| 「江戸狩野研究の歩み」『美術フォーラム21』28(醍醐書房・2013年)、『巨匠 狩野探幽の誕生―江戸初期、将軍も天皇も愛した画家の才能と境遇』(朝日新聞出版、2014年)、『(展覧会図録)松花堂昭乗、書画のたのしみ―麗しき筆あと、愛らしき布袋―』(八幡市立松花堂美術館、2017年)の論考・作品解説、『(展覧会図録)国宝曜変天目と破草鞋』(MIHO MUSEUM、2019年)の論考・作品解説・年譜の現代語訳・系図。
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