日本・東洋美術史研究室  教職員紹介




Last Up 2019/5/27



文化表現論専攻 美術史学
芸術史講座 日本・東洋美術史 教職員




教授  橋爪 節也
はしづめ せつや
1958年生。東京芸術大学大学院修士課程修了。芸術学修士。1985年4月より東京芸術大学美術学部附属古美術研究施設助手、1990年4月より大阪市教育委員会事務局文化財保護課、大阪市立近代美術館(仮称)建設準備室の学芸員(大阪市立美術館兼務)。1998年4月より2008年3月まで大阪市立近代美術館(仮称)建設準備室主任学芸員。

専攻:日本美術史/近世近代絵画史

江戸時代の文人画研究からスタートしたが、1990年代、大阪の美術館学芸員として活動するなかで、大阪画壇研究が停滞していることに危機感を深め、大阪の美術に関する調査研究をはじめた。近世では木村蒹葭堂を中心に、近代では北野恒富に注目して大阪画壇の流れを再検証しようとしている。また、文人画研究とも結びついて美術と「文人」というライフスタイルの問題に関心があるほか、心斎橋などの繁華街に展開した美術、デザインなども含めて“大大阪”の時代の都市と美術、人のかかわり方の関連も探っている。
美術館の現場を経験してきた立場から言えば、研究対象として取りあげるべき作家や作品、ジャンルはまだまだ残されています。さらにそれに切り込む新しい見方の発見もまだまだあり得ると思います。そのとき重要になるのがシャープな「眼」です。過去の研究や社会との関係を尊重しつつも、新しい時代の風に吹かれて“美術”に携わることが、自立したシャープな「眼」を養うチャンスになればと思います。
「柳澤淇園とその人物画」(『東京芸術大学美術学部研究紀要』第24号、1988)、「柳澤淇園と播但間通船計画−大阪府立中之島図書館所蔵香弁上人宛柳澤淇園書簡」(『大阪市立美術館研究紀要』第11号、1998)、「近世大坂文人画の展開と問題−木村蒹葭堂とその周辺を中心に−」(『大阪市立博物館大阪学調査研究報告書』1、1998)、「夢の中にある船渡御−生田花朝と「浪速天神祭」−」(『天神祭−火と水の都市祭礼』大阪天満宮文化研究所編、思文閣出版、2001)、「大阪市美術協会結成における紛擾と「大大阪」の日本画壇・洋画壇」(『大正期美術展覧会の研究』東京文化財研究所編、中央公論美術出版、2005)など
『生誕100年記念 佐伯祐三展』(大阪市立美術館、愛知県立美術館ほか、1998)の共同企画・カタログ執筆、「大阪の憂鬱/軽視された“美術都市”−近世大坂画壇研究に思う」(『美術フォーラム21』創刊号 特集:日本美術史再考 江戸の美術はどのように語られてきたか、1999)、「没後200年記念 木村蒹葭堂−なにわ 知の巨人−」(大阪歴史博物館編、思文閣出版、2003)の企画・カタログ編集、「北野恒富展」(東京ステーションギャラリー、石川県立美術館、滋賀県立近代美術館、2003)の企画・カタログ編集、編著『モダン道頓堀探検−大正、昭和初期の大大阪を歩く−』(創元社、2005)、著書『モダン心斎橋コレクション−メトロポリスの時代と記憶−』(国書刊行会、2005)、「『野獣派』と山本發次郎」(河崎晃一監修『山本發次郎コレクション遺稿と蒐集品にみる全容』淡交社、2005)、共編『生誕100年記念 前田藤四郎“版”に刻まれた昭和モダニズム』(東方出版、2006)、「“街の記憶”へのタイムトラベル−《モダニズム心斎橋》展とは何だったか−」(『CEL』76号、大阪ガス エネルギー・文化研究所、特集:「都市のオルタナティブ・ツーリズム」)、編著『大大阪イメージ─増殖するマンモス/モダン都市の幻像─』(創元社、2007)など



教授  藤岡 穣
ふじおか ゆたか
1962年生。東京芸術大学大学院修士課程修了。芸術学修士。1990年4月〜1999年3月大阪市立美術館学芸員、1999年4月〜2009年3月大阪大学大学院文学研究科准教授。2009年4月〜現職 。

専攻:東洋美術史


専門は東アジアを中心とした仏教美術史。絵画よりも彫刻を得意とし、東南アジアや中央アジアにも関心を持つ。目下の研究テーマは、呉越〜宋の都杭州や外港都市と知られる寧波の彫刻と、半跏思惟像。時間があれば運慶についても再考したい。
机に向かうより体を動かしている方が性にあっている自分にとって、美術史は実にありがたい研究領域である。たとえば仏像の調査にでかける。重い調査道具をかついで寺へ行き、暑さ寒さに耐え、埃や煤にまみれながら、実測し、技法や修理状況を観察し、写真を撮る。緊張したなかでの調査は肉体的にも精神的にもつらい。しかしそれによって仏像の魅力を肌身で感じとることができるのは我々の特権である。仏像の魅力を知って、どうしてこんなものが作られたのだろうと推理するのが次の仕事である。形や色が伝える情報を読み解いていくと、文献だけではわからない歴史の一面がわかったりする。感性と知性、そして体力の結集、それが美術史だと思っている。
『新修茨木市史第9巻 史料編 美術工芸』(共編著、茨木市);「興福寺南円堂四天王像と中金堂四天王像について」(『国華』1137・1138号);『聖徳太子信仰の美術』(共編著、東方出版);『国宝葛井寺千手観音』(共編著、大阪市立美術館);『中国の石仏−荘厳なる祈り−』(大阪市立美術館)
『日本仏像史』(共著)




准教授  門脇 むつみ
かどわき むつみ
1970年生。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了・博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、城西国際大学研究員・助教・准教授を経て現職。第14回國華奨励賞。

専攻:日本美術史/中近世絵画史


狩野派、肖像画、画賛(絵画にちなんで記される詩文)、禅宗に関わる絵画、天皇・皇族や画僧(絵画に堪能な僧)など職業画家ではない人物の作品といった事柄をテーマとしてきました。なかでも狩野探幽に長く関心をもち、その技とともに狩野派の組織、権力者や禅僧・儒者と共有した知識や思想、探幽が描く肖像画の図様と画賛の響き合い、天皇の作画にみる美意識が探幽の御用与えた影響などを考えてきました。今後も人間と美術作品の魅力的な関わりをより確かに捉えていきたい。
私は大学生の時に日本美術史に出会ってから今までずっと、日本美術を観ること、それについて勉強することが楽しくてたまりません。美術史学の楽しさは、まずは作品に出会いその造形の芸術性に魅了され、それを把握・分析することにあります。そして、その上で、作品を生み出した社会の状況や特定の集団の思想や嗜好などに向き合うことにあると考えています。作品は社会の鏡です。時代の空気や人々の思いがいかに視覚化されているか、その視覚化のために画家はどのような表現を用いているか、当時の鑑賞者は作品の図様や表現に何をみたのか。作品は社会や人間について多くことを教えてくれます。美術作品を観て、調べて考える、そのスリリングな楽しさを是非多くの学生に知ってもらいたいと願っています。授業では基礎知識から最新の研究まで、間口広く、奥深く美術史の魅力を紹介します。
[著書]『寛永文化の肖像画』(勉誠出版、2002年)、『巨匠 狩野探幽の誕生―江戸初期、将軍も天皇も愛した画家の才能と境遇』(朝日新聞出版、2014年)[論文]「懐月堂派と俳諧に関する一試論」(『浮世絵芸術』145・国際浮世絵学会、2003年)、「詩仙図について」『文学』11(3)(岩波書店、2010年)、「伝狩野元信原画「獣尽図屏風模本」と狩野派の動物画」『國華』1396(國華社、2012年)、「若冲と大典―『素絢石冊』と『玄圃瑤華』の画と詩」中野三敏監修・河野実編『詩歌とイメージ 江戸の版本・一枚摺にみる夢』(勉誠出版、2013年)、「後水尾天皇時代の宮廷絵画―描く天皇、皇族と画壇」(野口剛・五十嵐公一・門脇むつみ『天皇の美術史4 雅の近世、花開く宮廷絵画 江戸時代前期』吉川弘文館、2017年)
「江戸狩野研究の歩み」『美術フォーラム21』28(醍醐書房・2013年)、『巨匠 狩野探幽の誕生―江戸初期、将軍も天皇も愛した画家の才能と境遇』(朝日新聞出版、2014年)、『(展覧会図録)松花堂昭乗、書画のたのしみ―麗しき筆あと、愛らしき布袋―』(八幡市立松花堂美術館、2017年)の論考・作品解説、『(展覧会図録)国宝曜変天目と破草鞋』(MIHO MUSEUM、2019年)の論考・作品解説・年譜の現代語訳・系図。



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