• 授業紹介

    講義(近藤) イギリス芸術文化研究

    本講義では、芸術文化史家ニコラウス・ペヴスナーの多彩な研究視点・手法に焦点を当て、これまで注目されてこなかった社会改良の意識に強く牽引されたイギリス芸術文化研究の伝統・系譜について学びます。ペヴスナーは、同時代の一般市民の芸術的素養の育成と産業デザインの質的向上を具体的な目標に定め、芸術・デザイン関連の雑誌の編集、一般読者向け記事の執筆、ラジオ講演等を通して、広くデザインに関する国民的関心を啓発し、一般市民の日常生活の向上と美的素養の育成に芸術文化史的側面から貢献しようと多彩な活動を展開しました。ライプチッヒ出身のロシア系ユダヤ人であったペヴスナーは、1933年ナチス・ドイツによって大学の教壇を追われ、イギリスに研究の拠点を移しました。中世ゴシックから、バロック、マニエリスム、新古典主義、ゴシック・リヴァイヴァル、そしてモダン・デザインまで、多彩な主題を多角的なアプローチで研究したペヴスナーの芸術文化研究について理解を深めるとともに、その旺盛な研究・執筆活動が、彼の社会改良への情熱を常に重要な原動力としていたことを確認したいと思います。