社会デザインは、利益をあげることを目的とせず、社会問題の解決に向けて、
何かをを生み出そうとする活動である。そのかぎり、社会デザインは、問題の当事者である市民本位のデザインであり、
市民のために市民とともに有意義なものを生み出そうとする活動である。
また、社会デザインがそもそもデザインと呼ばれるのは、デザインらしく何かを生み出すかぎりである。
すなわち、社会デザインは、何かを計画したり、何かを造形したり、何かを生み出す創造活動をとおして、
社会の役に立つだけではなく、美質をそなえた産物をもたらそうとする。
社会デザインは、利益の最大化を目的とせず、社会問題の解決に向けられるかぎり、
デザインの力によって何をもたらすかは決まっていない。大きく見れば、ものを生み出そうとする場合と、
人々の協力関係を生み出そうとする場合がある。前者の場合には、労働のありかたや消費のありかたが考慮され、
後者の場合には、生活のありかたが考慮される。広い意味での社会デザインは、
倫理に導かれた一種の態度をあらわすが、狭い意味での社会デザインは、
人々の協力関係をもたらそうとする仕事として、製品デザインなどと区別される一つの分野と考えうる。
上記の区別から導き出されるのは、三つの類型である。第一類型は、労働のありかたを見直して、
美しいものを生み出そうとする仕事であり、社会に配慮したものづくりの仕事である。
第二類型は、消費のありかたを見直して、必要なものを生み出そうとする仕事であり、社会に貢献するものづくりの仕事である。
第三類型は、生活のありかたを見直して、人と人との関係を生み出そうとする仕事であり、社会を創造しようとする仕事である。
この場合のデザイナーは、自分の仕事として、仕組みを考えたり、出来事を考えたり、人々の社会活動をうながして、
人々の協力関係を引き出そうとする。
社会デザインの三つの類型はたんなる分類図式ではなく、社会デザインの発展段階をあらわしている。
第一段階は、労働のありかたを見直して、美しいものを生み出そうとする段階であり、社会に配慮しようとする段階である。
第二段階は、消費のありかたを見直して、必要なものを生み出そうとする段階であり、社会に貢献しようとする段階である。
第三段階は、生活のありかたを見直して、人と人との関係を生み出そうとする段階であり、社会を創造しようとする段階である。
21世紀になって、便利な道具だけでは問題解決にいたらないという認識のもと、人々がみずから問題解決にあたれるよう、
人々の協力関係を引き出すことに主眼が置かれるようになる。
以上の三つは、社会デザインの発展段階をあらわすが、一つの段階がその次の段階によって克服されてきたとは考えない。
労働の改善という課題も、道具の発明という課題も、今日まで引き継がれている。三つの段階はむしろ、
課題の積み重ねであり、経験の積み重ねである。反対に、各段階の予兆はかなり過去まで遡ることができる。
第三の段階は、デザイナーが人々の協力関係を生み出すことを本分とする段階だが、
先行する段階にも萌芽は見られるだろうし、コミュニティの創出はデザイナーの仕事とみなされていなかったに過ぎない。
それでも、以上の三段階モデルは、各時代の実践における関心の変化をとられていると考えられる。