用語解説

タイポグラフィ

typography

タイポグラフィは、今日の広い意味では、活字にかかわるデザインの全領域をあらわすが、書体デザインが活字自体のデザインならば、タイポグラフィは活字をもちいたデザインである。 タイポグラフィは、根本において活字を組む仕事であり、タイポグラフィをあえて漢語であらわすなら組版のことである。 日本語でいう組版はもともと活字を組んで版をつくる仕事だったが、今日では画面上で活字を配置する仕事となっている。 英語では、組版はタイプセッティングであるが、組版はまたコンポジションともいわれる。タイポグラフィの本質はすなわち構成にほかならない。

タイポグラフィとは何だったのかは、印刷技術と切り離しては考えられない。タイポグラフィはもともと活版印刷術そのものだった。 西洋の活版印刷術は、グーテンベルク以来の長い歴史をもつが、20世紀になっても金属活字を組むことは続いていた。 20世紀前半、前衛美術家たちがタイポグラフィの分野に参入したことで、タイポグラフィは植字工の仕事にとどまらなくなるが、タイポグラフィはそれでも活版印刷にもとづくかぎり、金属活字をもちいるかぎり、物質の構成をなお前提としていた。 20世紀後半になると、光学にもとづく写植が実用化され、コンピュータによるDTPが本格化して、タイポグラフィは活字にかかわるデザイン全領域をあらわすようになり、物質の制約を受けないという意味で、真の意味において平面の構成となる。