戦国楚簡研究会

中国古代思想史の再検討  戦国楚簡研究会

文献案内

文献案内 戦国楚簡研究会

  • 新出土資料に関する文献の内、特に重要な参考文献を「日本語文献」「中国語文献」に大別した上で紹介する。
  • この文献案内の一部は、大阪大学中国学会『中国研究集刊』に連載中の「新出土資料関係文献提要」を基にしている。

◆日本語文献

『竹簡が語る古代中国思想─上博楚簡研究─』

(浅野裕一編、汲古書院・汲古選書、全265頁、2005年4月)

上海博物館蔵戦国楚竹書(上博楚簡)の解読と研究の成果をまとめた書。全体は、「『容成氏』における禅譲と放伐(浅野裕一)」「『容成氏』における身体障害者(竹田健二)」「『従政』の竹簡連接と分節(湯浅邦弘)」「『従政』と儒家の「従政」(湯浅邦弘)」「『子羔』の内容と構成(福田哲之)」「『中弓』における説話の変容(福田哲之)」「『魯邦大旱』における「名」(浅野裕一)」「『魯邦大旱』の刑徳論(浅野裕一)」「『恆先』の道家的特色(浅野裕一)」「『恆先』における気の思想」の10章からなる。日本では、上博楚簡を対象とした初の論文集である。

『特集号 戦国楚簡と中国思想史研究』(『中国研究集刊』第36号)

(大阪大学中国学会、2004年12月)

2004年3月に大阪大学で開催された国際シンポジウム「戦国楚簡と中国思想史研究」の成果をまとめた特集。日本語・中国語あわせて論考17本、附録2点などによって構成されている。内容は、郭店楚簡・上博楚簡を中心とする論考、パネルディスカッションの記録、シンポジウムのプログラム、上博楚簡の形制一覧表、戦国楚簡研究関係HP紹介などからなる。主な執筆者は、陳鼓應、郭梨華、林啓屏、林素英、顧史考、袁國華、佐藤將之、浅野裕一、湯浅邦弘、福田哲之、竹田健二、李承律など。

『諸子百家〈再発見〉─掘り起こされる古代中国思想─』

(浅野裕一・湯浅邦弘編、岩波書店、全254頁、2004年8月)刊行

近年相次いで発見される出土資料をてがかりに、孔子・老子などの諸子百家の思想を〈再発見〉しようとする書。画期的な新出土資料発見の経緯を述べながら、これらの資料の解読によって明らかになってきた、古代の文字と書物、人間の本性についての新説、孔子と『易』の関係など、その成果をわかりやすく紹介する。全体は、「諸子百家と新出土資料」「諸子百家の時代の文字と書物」「天と人との距離」「人間の本性は善か悪か」「孔子の教えは政治の役に立つか」「老子と道家」「孔子は『易』を学んだか」の7章からなる。

『新出土資料と中国思想史』

(大阪大学中国学会『中国研究集刊』別冊特集号、二〇〇三年六月)

「戦国楚簡研究会」のメンバーが、郭店楚簡および上博楚簡公開分(2004年2月現在)全資料について解説した特集。各文献について、@書誌情報、A内容と研究概説、B主要釈文・注釈・研究を記す。戦国楚簡全資料について和文で詳しく紹介した初の学術雑誌特集である。また、「郭店楚簡・上博楚簡の字体と形制」「郭店楚簡形制一覧」「上博楚簡形制一覧」「書誌情報用語解説」「新出土資料関係文献提要」など、基礎的で重要な情報を掲載し、新出土資料を学ぶための入門書の役割も果たしている。
 なお、『中国研究集刊』(年二回刊)には、引き続き「新出土資料関係文献提要」が連載されており、関係資料の最新情報を知ることができる。

『文字の発見が歴史をゆるがす 20世紀中国出土文字資料の証言』

(福田哲之著、二玄社、二〇〇三年三月)

 主に二十世紀に発見された出土文字資料について解説した書。甲骨文に始まり、西周金文、侯馬盟書、郭店楚簡、上海博物館蔵戦国楚竹書、睡虎地秦墓竹簡、馬王堆漢墓帛書、銀雀山漢墓竹簡、走馬楼三国呉簡、楼蘭出土文書、吐魯番出土文書まで、それぞれに豊富な図版を使いながら解説を加えている。戦国楚簡については、「修正を迫られる儒教史の通説 郭店楚簡・上海博物館蔵戦国楚竹書」の章で専論される。
 出土文字資料全般を視野に収めた初の和書であり、各資料の概要や文字学上・思想史研究上の意義を一般読者にも理解しうるよう平易に説いている。また、章ごとに設けられたコラム欄では、「上海博物館蔵戦国楚竹書の信憑性」「走馬楼三国呉簡はなぜ井戸に埋蔵されたのか」などとして、出土資料発見の裏話が紹介されるなど、構成にも工夫が見られる。

『郭店楚簡儒教研究』

(池田知久編、汲古書院、二〇〇三年二月)

郭店楚簡の内、儒家系文献に対する訳注と論考とをまとめた書。「訳注編」「論文編」の二部よりなり、さらに「郭店楚墓竹簡関係論著目録」を附す。訳注編は、「緇衣」「魯穆公問子思」「五行」「唐虞之道」「忠信之道」「成之聞之」の六編の訳注を、論文編は郭店楚簡の儒家系文献各々に対する専論七編を収載している。これらは、雑誌『郭店楚簡の思想史的研究』第一〜五巻に発表された儒家系文献に関する訳注や論文、および『郭店楚簡の研究』一に発表された「忠信之道」訳注を再録したものであるが、各々若干の改訂が施されている。
 なお、編者による「序文」一〜三は、郭店楚簡に関する紹介となっており、和文によるまとまった紹介としては本邦初のものである。そのうち、「四、『郭店楚簡』を読むための工具書」は、楚系文字を読むための工具書の紹介・解説となっている。

『楚地出土資料と中国文化』

(郭店楚簡研究会編、汲古書院、二〇〇二年三月)

主として郭店楚簡に関する論文をまとめた書。十七名(日本人九名、中国人五名、韓国人二名、アメリカ人一名)の研究者による十七本の論文が収録されている。日本における郭店楚簡関係の論文をまとめて収録した書としては初期のものである。
 前掲の『郭店楚簡儒教研究』が郭店楚簡の儒家系文献に対する論文を収めているのに対し、本書はさらに、『老子』『太一性水』等の道家系文献に関するもの、また、馬王堆漢墓、包山楚簡、尹湾漢墓簡牘等、「楚地」から出土した資料に関する論文をも幅広く収めている。

『郭店楚簡の思想史的研究』

(東京大学郭店楚簡研究会編、東京大学中国思想文化学研究室、
 第一巻、一九九九年十一月。第二巻、一九九九年十二月。
 第三巻「古典学の再構築」東京大学郭店楚簡研究会編、二〇〇〇年一月。
 第四巻、二〇〇〇年六月。第五巻、二〇〇一年二月。第六巻、二〇〇三年二月)

郭店楚簡各篇の訳注を収載した書。第一巻に「魯穆公問子思」「五行」「唐虞之道」、第二巻に「性自命出」「成之聞之」、第三巻に「緇衣(上)」、第四巻に「緇衣(下)」を収めている。また、訳注以外にも、関係論文、上博楚簡に関する情報(第二巻)、郭店楚簡に関係する文献目録(第三・四巻)等を掲載している。第五巻、第六巻は、論文集である。
 訳注の底本には、『郭店楚墓竹簡』(荊州市博物館編、文物出版社、一九九八年)を使用し、詳細な注釈を付記する点に特徴がある。
 なお、郭店一号墓の造営時期については、多くの副葬品の考古学的編年から、戦国中期(紀元前三百年頃)とするのが一般的な見解であるが、本書の論文編は、郭店楚簡各篇の成立時期が戦国末期であることを前提としたもの、および戦国末期説を補強する論文が多く載せられている。

『郭店楚簡老子研究』

(池田知久著、東京大学文学部中国思想文化学研究室、一九九九年十一月)

郭店楚簡の三種の『老子』写本(甲本・乙本・丙本)に対する釈文および注釈、並びに論文および郭店楚簡関係論著目録からなる書。
 初めに、「前書き」として郭店楚簡全般について概論を述べ、特に郭店楚簡『窮達以時』の成書年代について、戦国後期、紀元前二七八年前後もしくはそれ以降とする見解を示す。次いで郭店楚簡関係論著の目録を、論文集、著書、論文、新聞記事・会報、学会発表に分類して掲載する。
 本編の内、第一編は『老子』に関する論文であり、著者は郭店楚簡『老子』を、すでに成書されていた『老子』五千言の一部分ではなく、なお形成途上にある『老子』最古のテキストと結論付けている。続く第二編からは、郭店楚簡『老子』甲本・乙本・丙本の釈文および注釈である。今本『老子』の章立てに従って分章し、さらに竹簡によって分段した釈文を載せ、それを訓読して注解する。巻末には付録として、郭店楚簡『老子』の全文を載せる。

『郭店楚簡の研究』

(大東文化大学郭店楚簡研究班編、大東文化大学大学院事務室、
 第一巻、一九九九年八月。第二巻、二〇〇〇年九月。第三巻、二〇〇一年三月)

郭店楚簡各篇の訳注(第一巻「太一生水」「窮達以時」、第二巻「魯穆公問子思」「忠信之道」)、関係論文(第一・三巻)、関係文献目録(第一・二巻)等を収めた書。大学院ゼミの成果をまとめたものである。訳注の底本には『郭店楚墓竹簡』(荊州市博物館編、文物出版社、一九九八年)を用いている。論文は、書道史と思想史を中心としている。

『中国出土資料研究』

(中国出土資料研究会、一九九七年三月〜)

中国出土資料学会の機関雑誌。「論文」「訳注」の他、「書評」「論著目録」「研究動向」などからなる。年一回刊。本学会は、一九九五年四月に設立された中国出土資料研究会を前進とする全国学会で、出土資料に関わる多様な分野の研究者が集うことにより、従来の枠組を越えた学際的な研究を進めることを目的としている。年数回の例会を開催し、会報および本誌を刊行している。
 郭店楚簡に関しては第三号に小特集があり、また、第六号のシンポジウム「出土資料学への研究」に関する報告において、楚簡を中心とした特集が組まれている。

◆中国語文献

『郭店楚墓竹簡』

(荊州市博物館編、文物出版社、一九九八年五月)

郭店楚簡の写真、および翻刻と注釈を収めた書。郭店楚簡研究の底本となる資料。本書には、郭店楚簡の有字簡の全て(七三〇枚)が次のように収録されている。
 「老子(甲・乙・丙)」「太一生水」「緇衣」「魯穆公問子思」「窮達以時」「五行」「唐虞之道」「忠信之道」「成之聞之」「尊徳義」「性自命出」「六徳」「語叢(一・二・三・四)」。
 本書の構成は、「図版(写真版)」と「釈文 注釈」とに分かれる。釈文は( )等の記号を使用し、各々の釈文を行なっている。また、釈文の後に若干の注釈を附している。
 また、初期段階での釈文であるため、注釈はやや簡略で、未釈・待考として保留されている部分もあり、それらについては後続の注釈書・研究書によってかなりの補訂がなされている。

『上海博物館蔵 戦国楚竹書』

(馬承源主編、上海古籍出版社、二〇〇一年十一月〜)

上博楚簡の図版(写真版)と釈文とを収載した書。上博楚簡研究の底本となる資料。上博楚簡の有字簡全一二〇〇余枚、三五〇〇〇余字を収録予定。「図版」と「釈文考釈」との二部からなる。二〇〇四年二月現在、第二巻まで発行されており、その内容は以下の通り。第一巻、「孔子詩論」「緇衣」「性情論」。第二巻、「民之父母」「子羔」「魯邦大旱」「従政(甲篇・乙篇)」「昔者君老」「容成氏」。
 「図版」(写真版)はカラー写真を用い、各篇ごとに竹簡全体の写真を用いて配列したパートと、原寸を三・六五倍に拡大した写真をページごとに一簡づつ掲載したパートとの二部よりなる。サイズの異なる写真が二種類掲載されていることによって、当該簡の全体像と各々の文字の形体との両方を確認することが可能となっている。
 また、「釈文考釈」では、まず「説明」として当該篇の簡単な解説を附した後、簡ごとにモノクロ写真を載せ、当該部の釈文を附す。さらに、当該簡の釈文を数句に分けて一句ごとに提示し、それに対してかなり詳細な注釈を附している。

『郭店楚簡研究』第一巻文字編

(張光裕主編、袁国華合編、陳志堅・洪娟・余拱璧助編、芸文印書館、一九九九年一月)

『郭店楚墓竹簡』(荊州市博物館編、文物出版社)を底本とし、郭店楚簡文字の釈読をまとめた字書。主に、1)「文字編(正文・合文・待考文)」2)「索引(部首・画数・合文)」 3)「原簡与釈文対照図版(含残簡)」4)「釈文」からなる。
 1)「文字編」は、郭店楚簡に見える文字を『康煕字典』に従い配列したもの。各文字には本書における統一番号(正字一〜一三四四、合文一〜二二、待考字はなし)を付し、a楷書体、b小篆(基本的に『説文解字』と合致するもの)、c原簡字写真(「原簡与釈文対照図版」と対応した簡号を付す)、d例句を載せる。dでは、読み替えた文字を( )で、欠文を補った文字を【 】で表示する。 3)「原簡与釈文対照図版(含残簡)」は、原簡写真の横に手書き釈文を加えたもの。4)「釈文」は、3)の手書き釈文を活字にしたもので、読本として活用できる。
 本書は「文字編」でありながら楚簡内容が同時に参照でき、逐字索引として使えば該当文字を含む全竹簡番号が一目で分かる。また、3)の手書き釈文は『郭店楚墓竹簡』の釈文と一部異なるため、本書は対校本としての特色も持つ。しかし、釈文に注釈がないため、釈読の根拠はわからない。
 本書と張守中氏『郭店楚簡文字編』の相違として挙げられるのは、張守中氏が類似字形を一項にまとめているのに対し、本書は類似字形も全て載せている点、張守中氏と比べて釈読に積極的な点である(断定を避けた文字数は、張守中氏が五三字、本書は十二字)。
 なお、本書の主編者である張光裕氏と香港中文大学図書館による「郭店楚簡資料庫(http://bamboo.lib.cuhk.edu.hk/)」がインターネット上で公開されており、郭店楚簡の釈文が検索できる。また、本書の緒言によれば第二巻は『疏証』、第三巻は『研究』が予定されている。

『郭店楚簡文字編』

(張守中・張小滄・郝建文撰集、文物出版社、二〇〇〇年五月)

『郭店楚墓竹簡』(荊州市博物館編、文物出版社)を底本とし、竹簡文字の釈読と用例をまとめた字書。巻末の検字表(画数索引)によって文字検索ができる。本書は「単字」「合文」「存疑字」「残字(認定が難しいもの)」の四部構成。収録字数は、「単字」一二二六字(重文二四一一字)、「合文」二一例(重文十一例)、「存疑字」五三字(重文十一字)、「残字」七字。文字配列は『説文解字』によるが、『説文』所収文字の場合、その見出し字として『説文』の小篆を挙げ、下に楷書文字を付す。(『説文』にないものは見出し字として楷体隷字を挙げる。)その下には楚簡で使用されている文字の写真を複数並べており、同字内での字形比較もできる。各楚簡文字の下には篇名と簡号、用例数を付す(例えば「老甲二二」は「老子」甲本第二二簡、「緇五 九例」は、「緇衣」第五簡 用例数が計九ということ)。
 本書のように郭店楚簡の文字を分類・配列した字書は、古文字、特に戦国の楚文字資料を研究する上で実用性が高く、同時に現在公開が進められている上海博物館蔵戦国楚竹書の研究にとっても有益である。同社出版の関連書としては、『包山楚簡文字編』『睡虎地秦簡文字編』などがある。

『楚文字編』

(李守奎編著、華東師範大学出版社、二〇〇〇年十二月)

中国の古文字の内、楚系文字の全容について、近年公開された新出土文字資料をも加えて用例を掲げた総合的な字書。配列は『説文解字』(大徐本)に従い、各文字について該当する楚国の古文字の用例を列挙する。その配列は、所載材料の形態(銅器、貨幣、簡牘、帛書、璽印)順とし、同一形態の資料の中では時代の古い順に掲載する。たとえば、「天」字では、銅器記載文字の用例を掲げた後、簡牘文字について、「郭・老甲・19」(郭店楚簡『老子』甲本第十九簡の意)とか「郭・太9」(郭店楚簡『太一生水』第九簡の意)など出拠を明示しながら用例を掲げる。
 この他、合文と未釈字は巻末にまとめて掲げ、さらに、画数順索引、四角号碼検字表、主要参考文献を付す。残念ながら上海博物館蔵戦国楚竹書については未収録となっているが、楚系文字のほぼ全体を概観できる貴重な資料である。