パーソナルツール

現在位置: ホーム / 概要 / ご挨拶

ご挨拶

文学研究科・文学部へようこそ

文学研究科長・文学部長 三谷 研爾

 大阪大学文学研究科・文学部は、1948年に創設されました。1931年の開学当初、理系学部のみで出発した大阪大学は、文系学部を設置することを悲願としていました。その願いが、ようやく第二次世界大戦後に実現したのです。草創期には、戦後復興の時代にふさわしく、時流におもねらない自由かつ着実な人文学研究・教育の確立が謳われました。

 以後70年あまりが経過し、そのあいだに世界情勢も日本の社会状況も大きく変化しました。私たちの文学研究科・文学部もまた、そうしたなかで自己変革を重ねながら今日にいたっています。明治時代以来の伝統的な学問分野である哲学・史学・文学を中核に据えながら、1970年代以降は芸術学と日本学というユニークな領域を開拓、さらに1990年代末の大学院重点化を機にいちだんと専門分野を拡充しました。とりわけ2007年の大阪外国語大学との統合にあたっては、現代社会のさまざまな課題に応接する分野横断的な文化動態論専攻を増設しました。このような私たちの歩みを貫いているのは、伝統的かつ精緻な文献・資料研究−−−基礎的な研究−−−と、現代の社会・文化の諸現象と斬り結ぶアクチュアリティーの高い研究−−−応用的な研究−−−とをつねに両立させる姿勢です。

 人文学には、歴史はむろん哲学でも文学でも、過去を遡ることをとおして問題を考えるという特質があります。ですがそれは、過去に沈潜することと同じではありません。そうではなくて、過去をとおして現在を捉える営みです。歴史家トインビーは第一次世界大戦中、古代ギリシャで起こったペロポネソス戦争について講義しているさなかに、「われわれはいまペロポネソス戦争を戦っているのだ」と直観しました。ギリシャ世界を二分した古代の大戦争が、はるか遠い過去の事件ではないどころか、まさにいまヨーロッパ社会を分断しながら進行中の出来事として把握されたのです。逆に、世界大戦がもたらすであろう社会・文化の変質は、ペロポネソス戦争の帰結を介して理解されます。トインビーの現代社会への透徹した考察や提言は、まさにこうした人文学的な同時代感覚と知識に支えられていました。私たちが日々取り組んでいる研究・教育もまた、つまるところ私たちが立っている〈いま〉をより深く理解することをとおして、来たるべき社会・文化を構想するものです。

 現在、大阪大学文学研究科・文学部は、大学院で23の専門分野と4つのコース、学部で20の専修をそなえています。近代諸語だけでなく古典諸語(古文・漢文、ラテン語、サンスクリット語など)で書かれた文献を読み抜いて思索を深める能力の鍛錬、地図や絵画を精査し、音楽演奏や演劇上演を分析する経験の蓄積、医療現場や文化施設運営への学究的参画、遺跡の調査研究を活かした街づくりへの協働にいたるまで、私たちの研究・教育はますます広がりつつあります。その活動をより国際的に展開することはとりわけ重要で、海外の研究機関との交流をいっそう深めるために、さまざまな研究プロジェクトや教育プログラムをすすめています。このHPをとおして、皆さまが私たち大阪大学文学研究科・文学部の姿とその取り組みについて、より広く知ってくださることを切に願っています。

 18世紀の大坂で、市民の手によって開設された学問所「懐徳堂」が、私たちの文学研究科・文学部の精神的な源流です。そこでの学問研究は、ごく身近なものとして町人たちの日々の生活と隣り合っていました。私たちもまた、日常のなかから問いを立てて学問に昇華させ、成果をつねに市民社会に還流することに努めています。そのために多くの公開講座や市民講座を開催し、教員も学生もいろいろな連携プロジェクトに積極的に参画してきました。研究の世界と市民社会とを結ぶこうした取り組みについても、ご理解とご支援をいただければさいわいです。