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研究のススメ

大学での研究はどんなものなのでしょうか?
大学・大学院での研究生活について伺いました。

聞き手・構成=加藤俊輔(哲学・思想文化学専修2年)、平山裕人(英米文学・英語学専修2年)

大学院に進学予定です。

水谷謙太さん(英米文学・英語学専修4年)の場合

大学に入学したときから、英語科の専修免許を取りたかったので、大学院に進学しようと考えていました。僕はもともと理系だったんですが、英語の受験勉強をしているときに、英文解釈が面白いなと思っていたのと、NHKで認知言語学をベースにした語学番組が放送されていて、文法は暗記だけじゃなくて、面白いところもたくさんあるんだなと知って、浪人するにあたって文転し、言語学をやろうと思いました。

大学院入試準備の開始時期

4年生の4月ぐらいですかね。早いか遅いかはわかりませんけど、なんとか間に合ったかなと思います。ただ、第2外国語は1年生のときの共通教育の授業を大切にしたほうがいいと思います。そこからコツコツやっておくと、直前になって慌てないと思います。

どういうふうに勉強を進めましたか?

自分が苦手な分野を中心に、入門書程度ですけど最低限の知識を身につけようと心掛けていました。先生方や大学院の先輩方の意見を参考にしながら、いろいろな本を読むようにしていましたね。あとは、語学力をつけるためになるべく日本語ではなく英語の本を選ぶようにしていました。

勉強の過程で辛かったこと

第2外国語のドイツ語ですね。言語学をやっているので、文法を学んでいくのはそれなりに楽しかったんですが、とにかく単語が覚えられなかった。「単語は文章の中で覚えるものだ」と変な意地をはって単語帳を使わなかったんですが、今考えると使えばよかったなと反省しています。単語も、1年生のときからコツコツ覚えていくべきだと思います。

大学院で学びたいこと

現段階ではstage-levelとindividual-levelという、述語が表わす性質の違いについて研究したいなと考えています。このテーマについて問題を設定して、自分で考え抜いて、自分なりの答えを出したいという目標を持っています。

高校生へメッセージ

大学院に進学する人を対象としたメッセージではないかもしれませんが、受験勉強が終わって自分の好きなことを勉強できる期間がやってくるので、勉強していて楽しいと思えることを見つけてほしいなと思います。

大学院博士前期課程で学んでいます。

山本哲哉さん(哲学哲学史博士前期1年)の場合

現在の研究テーマを教えてください。

ニーチェの歴史思想を、前期と言われている時期に書かれた著作を中心にして勉強しています。

大学院入試は大変でしたか?

大変でしたね。とにかく受験を決意したのが遅かったですし。まあ自業自得なんですけどね(笑)。先輩の方々から語学が重要だ、ということは聞いていましたので、関心のあった外国語文献を原典で読むようにして対策に充てていました。今になってわかってきたことですが、原語で書物を読むことの重要性はどれだけ強調してもしすぎることはありません。早めに外国語の勉強はきちんとしておくべきでした。

大学院の満足度はどうですか?

院生が自由に研究できるここの環境は、自身の研究に自分が責任を持たないといけませんが、自主性が尊重される分やりがいがあります。しかも指導する先生方は第一線の研究者でもありますし。

大学院を目指す高校生に一言

先ほども言いましたが、言語の学習は大事です。これは外国語に限った話ではなく、母国語についても言われなければならないと思います。要するに、わからないことがあったらきちんと辞書に当たりましょう、という程度のことなのですが、これ以上に重要なことは思い浮かばないですね。
ああ、そうそう。余計かもしれませんが、大学院に進むと一般就職が難しくなるようですから、この点はきちんと考えておいたほうがいいかと思います。

大学院に行ってなかったとしたら?

ホスピタリティに関わる仕事、具体的にはホテルなどへの就職を考えていたのではないかと思います。アルバイトでずっと飲食店で働いていたこともあって、もてなしの空間を提供する、という仕事にやりがいを感じるようになっていましたから。

大学院博士後期課程で研究しています。

嘉目道人さん(哲学哲学史博士後期3年)&藤野幸彦さん(哲学哲学史博士後期2年)の場合

大学院で研究しているテーマは?

嘉目:コミュニケーションが成立するための必要条件は何か、それをドイツ観念論のフィヒテの思想と関係させて研究しています。

藤野:広く言えば存在論、認識論、ということになります。ここに「もの」が“ある” とはどういうことなのか、あるいは我々が「ものがある」と“認識している” とはどういうことか。こういったテーマを扱う学問を形而上学と呼ぶのですが、僕はスピノザ哲学が専門で、彼の形而上学の体系の中でそうした問題を理解しようとしています。

大学院進学をいつから?

嘉目:高校時代は文芸部にいたこともあって、作家になりたかったのですけど、大学に入ってすぐに方向転換して大学院に行くことに決めました。

藤野:子どものころから学者になりたかったのは確かなんですが、それがいつからだったかは覚えていません。初めは天文学者になりたかった。けれど、これもなぜ天文学者だったのかは覚えていません。ただ学者になりたいという思いはずっと持っていて、高校生のときに哲学に出会ったのをきっかけに、その行き先が哲学研究者だと決まりました。高校に進学したころは理系の学生で、いわゆる文転というやつです。こんな事情なので、大学院に行くことも昔から決めていたことになると思います。大学院に行かなければ学者になれないと知ったときに決めた、と言えば聞こえだけは良いかもしれません。

嘉目:最初から僕らが大学院に行くつもりだったというのは博士後期課程の人間だからだと思います。後期課程は研究者を目指す人たちの集まりですから。前期課程の人に聞いたらまた違うかもしれません。

藤野:他の道は塞がっていきますから、ある意味では度胸のいることかもしれません。その「他の道」を選んだ人たちもきっと同じだったんでしょうが。

大学院以外の道があったらどうするか

嘉目:営業やエンジニア、事務会計をしている自分が想像できないので、やっているとしたらフリーターか塾講師ですかね。それから売れない作家もどきをしているかもしれない。

藤野:想像するのは難しいです。初めから大学院に進学することを決めてしまっていたので。ですが、実は自分には研究職は向いていなかったんじゃないか、と最近感じます。逆に、それ以外の仕事が向いていない、とはあまり思わない。でもそれは自分のやりたいことではなかった、と言っているわけですから、これは勝手な言い分ですね。

嘉目:だいたい自分達より優秀な人間って、先に就職してしまうんですよね(笑)。研究職以外でも簡単にこなしてしまうから。向いているというより、諦めきれない人が残るんですよ。

藤野:その通り。いまだに研究職が諦められない、というか、諦めたくない。これは確かだと言いたいですね。

大学院入試で大変だったことは?

嘉目:特に博士前期の入試、博士後期の入試も同様ですが、語学力が大事であると先輩に聞いていたので、僕の場合ドイツ語をしっかりと勉強しました。

加藤:テストはどういう形式だったのでしょうか?

嘉目:意外なほどに高校のテストのようで、パラグラフを要約したりだとか訳したりだとかする形式ですね。語学のテストと専門のテストに分かれるのですが、専門のテストは哲学の場合、哲学史に関する小問と、与えられたお題に関する小論文ですね。一番語学が大事と言われていますが、自分の場合は小論文のほうが成績が良かったです。

藤野:語学は全専門分野共通のテストと専門分野別のテストがあって、僕は全専門分野共通をフランス語で、専門分野別は英語で受けました。僕は小論文より語学のほうが成績がよかったらしくて意外でした(笑)。それと、大学院入試というのは、受かってみたところでそれは通過点に過ぎないんです。入試は全部そうだと思いますが、入学して、やっとスタートに立っただけ。だからもっと先を見据えて、入試くらいクリアして当然、というくらいのスタンス、気概を持ってほしいです。もちろん、ちゃんと勉強しないとそうはいかないんですけど。

加藤:博士前期と博士後期とでテスト形式は変わるのでしょうか?

藤野:ほとんど同じです。共通の語学は無くなりますが、専門の語学と小論文があって。ただ、これは哲学の場合なので他の専門分野のことはわかりません。問題のレベルもさほど変わらなかったと思いますが、博士後期では求められる解答のレベルは高くなるようです。

大学院の満足度について

嘉目:日本でもトップレベルの権威がそろっているといっても過言ではないと思います。そのような先生方に対して、学生や院生が食らいつくことができるというのが阪大のいいところだと思います。直接的なやり取りをすることが許されているところがあるのです。恵まれていると思います。

藤野:教授の方々は世界を舞台に活躍されている。その先生方がまだまだ未熟な学生を相手にして、水平な立ち位置で議論に応じてくださる。すごくリベラルな研究現場だと思います。僕はそのことに感謝していますし、とても満足しています。

これから大学院を目指して入ってくる高校生へ一言!

嘉目:入って何をするかということに対して、しっかりとビジョンを持っていることが大事だと思います。あとは留学すべきだと思います。

藤野:大学院はゴールでは無くて通過点だ、ということを再度強調したいですね。大学院を目指す高校生の中には、研究職に就く希望を持っている人が多いかと思います。それなら尚更、大学院に入ったら勝ちではなく、入ってからが勝負、ということを覚悟しなければいけません。

『大阪大学文学部紹介2013-2014』からの抜粋。学年・所属は取材(2012年10月)当時。