文学部からの海外留学は、どのように行われているのでしょうか?
留学経験者に、実体験を語ってもらいました。

聞き手・構成=渡川和子(比較文学専修2年)、佐々井明里(日本語学専修2年)

夏期に語学研修  研修先:University of Essex(イギリス)

前田朱莉亜さん[比較文学専修2年]

留学をしようと思ったきっかけは?

安かったから!大学のプログラムだから手配も楽だったし、イギリスの大学で英語を勉強できるというプログラム内容もよかったし、大阪大学から一緒に行く人も多いし。初めての海外長期滞在だけど、大学がサポートしてくれるからなんとかなるかなあと(笑)。

留学の準備で大変だった点は?

大阪大学も海外からの学生を受け入れていて、オリエンテーションで何度かカリフォルニア大学からの学生と交流したのが印象的でした。あと、このプログラムは応募する際に能力基準が設定されていないんですが、IELTSというイギリスやオーストラリアへの留学に使えるTOEFLのような試験を1回日本で受けておかないといけなかったのがちょっと大変でした。

留学中に心に残ったことはありますか?

行く前までイギリスのイメージがはっきりしていなかったのですが、ロンドンを観光していると本当にたくさんの人種の人がいたんです。観光都市だし当たり前かなとも思ったのですが、ただいろんな人が観光に来ているだけでなく実際にいろんな人種の人がそこに住んで、商売していた。多文化共生の社会なんだなって。私の父はイタリア人で、外見から日本では尋ねられることがよくあるんですけど、イギリスにはいろんな人種が生活してるから特に聞かれないかなって思ってたら、「どこの血が混ざってるの?」とよく聞かれました。やっぱり共生しているからこそ血筋とかに敏感なのかなって実感して、日本とは違う価値観だなあと思いました。
あとは、大学内にパブが四つくらい、ディスコが二つくらいあって、みんな金曜日の夜は朝まで踊っていました。それと、オリンピック、パラリンピックの時期だったので、五輪のマークが掛かったタワーブリッジを見たときは「イギリスに来たんだ!」と思いましたね。

留学に行く前と行ったあとで自分の中で変化はありましたか?

英語を話すことに抵抗がなくなったのはよかったです。あと、留学から帰って日本で生活していると、改めて日本の良い部分やいまいちな部分が見えてきました。

留学に興味のある学生に一言!

大阪大学はいろんな部署がさまざまなプログラムを用意してくれているので、行きたいと思ったらいくらでもチャンスはあります。積極的に自分で調べて、自分に合ったプログラムを見つけて、少しでも海外で楽しんでもらえたらなと思います!

1年間私費留学 留学先:University of the Arts London(イギリス)

橘 佳奈さん[美学・文芸学専修4年]

留学をしようと思ったきっかけは?

ずっと海外に行きたいと思っていました。イギリスの美術や音楽に興味があったので、本場に飛び込みたかったんです。就活前の3年生の秋から休学してイギリスに行きました。学生ビザの手配が大変でしたが、阪大は休学中に授業料を払う必要がないから恵まれていると思います。

イギリスに行く前と、行ってからの印象の違いは?

身分が残っているとか、保守的なイメージを持っていましたが、実際は分け隔てなく接してくれました。私が行ったのはロンドンでしたが、白人だけじゃなくて、世界中からいろいろな人種の人たちが来て住んでいました。住む地域が分かれていてそれぞれで文化が形成されているので、イギリスの中だけで世界旅行ができる感じでしたね。

留学中の思い出は?

芸術を学ぶ学生にとっては天国みたいな場所でした。美術館もほとんど無料で入れましたし、CDやアーティストのライブのチケットも日本と比べて安かったです。芸術を重視していて、親が子どもにアーティストのライブを見せて、教養のある人間に育てようという意識が高いと思いました。
あとは、好奇心の強い人が多くて、よく話しかけてくれましたね。美術館で絵を描いていたら、知らないおじちゃんがアドバイスをくれたり、褒めてくれたり。個性の強い人たちとの触れ合いが楽しかったです。

学校の授業について

少人数のクラスで、意見を求められて発言するので大変でした。勉強をしない人は放っておかれます。海外の学生たちは、すごくメリハリがついていましたね。週末にあれだけみんな騒ぐのは、普段勉強している反動だと思いました。

就職活動に留学経験はどう活かされていますか?

留学のエピソードを言うと、興味を持ってくれますね。でも語学留学とか、ボランティアとか、ありふれたエピソードは飽きられています。なので、私は音楽や絵画などの自分の好きな文化を通して、国籍や年齢そして言葉の壁を超えて人々と仲良くなったことについて話しています。

留学に興味のある学生に一言!

学生の間しか、なかなか海外に行ける機会はないと思います。しかも大学生は専門知識を学んでいるから、趣味や専門を生かしてもっと文化の深いところまで触れることができると思います。語学力を伸ばすだけじゃなくて、プラスアルファを求めて行ってほしいですね。

1年間交換留学 留学先:University of California(アメリカ)

西本慎之介さん[フランス文学専修3年]

留学をしようと思ったきっかけは?

1年生の夏休みから手伝いをしていた政治家の影響が大きいです。私は、大学入学当初は漠然と自分の専攻と関係のあるフランス留学を考えていたのですが、その政治家はアメリカで留学・就職経験があり、よくアメリカ留学時代の話を私にしてくれました。そのときに聞いたアメリカの大学に非常に魅力を感じ、アメリカの大学に交換留学することを決めました。英語の試験対策など具体的な準備を始めたのは2年生の6月からです。

留学の準備で大変だった点

私の場合は、寮の申請手続きなど、現地での生活情報の入手に想像したよりも苦労しました。大阪大学は、一つの大学に1~2人しか派遣しない方式を採っているからです。結果として経験者からの情報が限られていたり、偏ったりすることになります。交換留学の派遣が決定したのが12月31日で、出発の翌年9月14日まで準備が思うように進まず、不安も大きかったです。私は、大学の国際教育交流センターに問い合わせて経験者の連絡先を教えてもらうのと同時に、ICUや同志社大学などからカリフォルニア大学に留学した人のfacebookアカウントやブログを探して相談しました。

アメリカに行く前と、行ってからの印象の違いは?

毎日新しい発見に驚いていますが、人が非常に開放的な性格というのに一番驚いています。これは大学の中だけの傾向だと思いますが、例えば、教室や図書館でくしゃみをすると“ Bless you.” と知らない人から声がかかります。大学職員や店員の方も非常ににこやかで、親しげです。また、大学の外でも、例えば、服屋では売り上げをすぐに値段に反映するというシステムを採用していて、同じメーカーの服でもサイズ、色、店舗によって値段が違い、非常に合理的だと感動することもありました。

留学に興味のある学生に一言!

人の話を鵜呑みにしないことが大事だと思います。私が交換留学の準備をしたときは、「TOEFLはとても難しい」「交換留学は選考が厳しくて合格できない」「アメリカの大学はとても大変でついていけない」という曖昧な話を留学経験者から繰り返し聞きました。結果、準備期間中も余計な不安を感じたり、TOEFLの受験を躊躇したりすることがありました。しかし、実際に留学してみると、これらの発言は間違いだと感じました。留学を考える一方で、語学力や外国での生活に不安を感じている人も、それは自分や他人の思い込みではなく、本当にそうなのか納得いくまで考えるとよいかもしれませんね。

『大阪大学文学部紹介2013-2014』からの抜粋。学年・所属は取材(2012年10月)当時。