−研究室旅行記・熊本編−


オブサン古墳にて
2001年10月29日から31日にかけて、恒例の研究室旅行が行われた。本年度の目的地は熊本県であった。熊本県は装飾古墳が濃密に分布する地域としてしられる。今回の旅行ではこうした古墳を中心として各地の遺跡や資料館を巡った。

今年は全日程にわたって晴天に恵まれ、順調に見学を進めることが出来た。また昼間は見学に夜は酒宴に汗を流すという旅行スタイルは今年も健在で、学生は夜更けまで議論に花を咲かせていた。

なお今回の旅行では、 熊本大学考古学研究室木下先生・杉井先生をはじめ、見学先の資料館・各施設において様々なご配慮を賜りました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。







10月29日(月)はれ

10:50 JR熊本駅集合。前日以前から旅に出ていた人と、当日出発組が合流した。筆者は当日組。朝7:50の伊丹空港発の飛行機に乗るために、前例のないような早起きをしたので、すでに疲れ気味である。全員そろった所で、観光バスに乗り込む。

11:30 熊本大学着。考古学研究室の方々の歓迎を受ける。沖縄の貝塚の発掘調査で見つかった土器や貝、熊本の旧石器、縄文時代の遺物や円筒埴輪などを見せていただいた。その後、昼食のお弁当をキャンパス内で食べ、旧制五高時代の建物(重文)を見学。レンガ造りのかっこいい校舎だ。熊大は緑も多くて、街中にあるとは思えない広々したキャンパスだった。

15:00 清原古墳群へ。「ワカタケル大王」の名が刻まれた鉄剣で有名な江田船山古墳、装飾古墳の塚坊主古墳などの内部を見学。江田船山古墳のきれいな横口式石棺が印象的。塚坊主古墳の三角形の模様もカラフルだった。

16:30 石貫ナギノ横穴群へ。崖にぼこぼこと大きな穴が空いている。横穴の入り口や内部には三角や円、線刻などで装飾がされている。しかし野ざらし状態なので、文様はかなり見えにくくなっている。何だかもったいない。みんないろんな横穴に出たり入ったりしてはしゃいで、楽しそうだ。この近くの石貫穴観音横穴群へも行く予定だったが、場所がわからなかったので断念した。

17:30 山鹿温泉に到着。馬刺しと露天風呂でいい気分♪




熊本大学考古学研究室の皆さん
(中央木下尚子先・右端後列杉井健先生
その他大学院生の皆さん)




江田船山古墳

10月30日(火)きょうもはれ

9:00 山鹿市立博物館へ。小ぢんまりした博物館だが、内容は充実している。1つずつゆっくり見ていたら時間がなくなってしまった…。

次に、隣接するチブサン、オブサン古墳へ。装飾古墳の中でも有名なチブサン古墳!わくわくしながら内部へ入る。しかしタダでは見事な石室の装飾は見られなかった。石室内部をガラス越しにのぞくための部屋が、ものすごく狭くて、しゃがまないと頭を打つ。しかも、装飾の保存のためにかなりの高湿度を保っており(98%)、不快指数も計算不能ではないかと思える程である。そんな過酷な状況下でも、色鮮やかな文様には感動。みんな写真をいかに美しく撮るかに燃えていた。

11:45 熊本県立装飾古墳館へ。まずはお昼御飯。隣接するレストランで郷土料理の「だごじる」を食べた。餅を細長くしたような団子(だご)が入ったお汁で、とってもおいしい。普通の白米だけでなく黒米を使っただごも入っていた。隣の物産館では黒米アイスまで売っていて、これもなかなか美味だった。

お腹を満たした後は、装飾古墳館を見学。熊本の主要な装飾古墳の、原寸大で精巧なレプリカが素晴らしい。また、古墳館周辺には古墳群が広がっている。前方後円墳の上に駆け登ったりして楽しんだ。どうも高い所が好きな人が多いようだ。復元埴輪で遊べる「はにわの動物園」も大人気。

15:00 鞠智城着。三階建てで瓦葺に復元された八角形建物が目をひく遺跡。突然この建物から3時を告げる太鼓の音が鳴り、かなりびっくりした。遺跡では建物の床面を復元したりしていて、かなり大規模な山城だったようだ。展示スペースには当時の服を復元した物もあり、それを着て写真撮影。気分は防人?

16:30 山鹿市出土文化財管理センターへ。ここは国史跡・方保田東遺跡に隣接しており、まずは発掘作業を見学。その後遺跡の説明を受け、収蔵庫を見学した。目を引いたのがビアジョッキのような土器。弥生時代に九州で多く見つかる物らしい。弥生人もこれで酒でも飲んでいたのだろうか。

18:15 植木温泉に到着。白いお湯と赤いお湯の温泉が最高!



オブサン古墳で説明を頂く学生



チブサン古墳石屋形


装飾古墳館外にて
10月31日 やっぱりはれ

9:30 宇土市図書館に着く。ここには郷土資料室があり、女性首長が埋葬された向野田古墳出土の副葬品が展示されている。これらは国の重要文化財に指定されているが、そのうち鏡をケースから出して下さって、直接、じっくり拝むことができた。

11:15 城南町歴史民俗資料館へ。建物の前に、祭祀を行う古墳時代人の石像が立っているのが印象的。筆者も彼らと一緒に祭りをしながら記念撮影をした。展示室を見学した後、外で昼御飯のお弁当を食べる事になった。資料館の人がお茶を用意してくださった(ありがとうございました)。食べた後は、隣接する塚原古墳群を自由見学。ホットケーキのような円墳がいくつも連なっていて、面白い風景だ。遠足にきている幼稚園児がその古墳の上から草すべりをしてはしゃいでいる。それにつられてか、私たちも前方後円墳によじ登ってはしゃいでしまった。

13:15 御領貝塚到着。まず目に飛び込んできたのは白い地面。貝殻が散乱しているためだ。目を疑うくらいの正真正銘の「貝塚」である。目で見て貝塚とわかる遺跡は、西日本ではここだけとか。落ちているのは貝だけではない。縄文時代の土器から現代のゴミまであらゆる時代の遺物(?)も混じっている。みんな目を血走らせて宝探しに没頭。気が付くと出発予定時刻を大幅に過ぎていた。急いでバスに戻る。

15:30 予定ではもう1つ遺跡を回るはずだったが、時間の関係でこのままJR熊本駅へ。ここでひとまず解散し、ここで別れる人だけ降りる。バスは残りの人を乗せて福岡へ。

17:30 JR博多駅着。ここで完全に解散。まだ旅を続ける人もいれば、本日中にさっさと帰ってしまう人も。筆者はちゃんと辛子明太子と博多ラーメンを買い込んでから、新幹線で帰途に着いた。

五領貝塚
(文:3回生 中村)