野中古墳とは

農工具と石製品

農工具
写真1:農工具
野中古墳からは、武器と武具以外にも大量の鉄製農工具や石製品が出土しています。
(写真1)

具体的には、農工具では斧頭が30個、錐状の工具片が45本、穂摘具や切削具であったと考えられる手鎌が35本出土しており、他にもU字形の刃先をもつ鍬先(くわさき)や鋤先(すきさき)、鎌鑿状工具、木材削る為の鉇(やりがんな)などが出土しています。

野中古墳に納められたU字形鋤先・鍬先などは、朝鮮半島から伝来した最新式の農工具です。

鉄鋌
写真2:鉄鋌
鉄製品の素材であると鉄鋌(てってい)が36Kg以上も出土している事も注目されます(写真2)。

当時、日本列島各地は鉄素材を豊富な鉄資源を有する韓半島南部に求めていました。鉄鋌の出土は、埋納した量をはるかにしのぐ量の鉄素材を有していたものと考えられます。

石臼石杵
写真3:石臼石杵

石製品では赤色の顔料であるベンガラを砕くための砂岩製の石臼と石杵が出土しました(写真3)。

刀子型石製模造品
写真4:刀子形石製模造

滑石製(かっせきせい)模造品(もぞうひん)と呼ばれる、斧や鎌、勾玉(まがたま)、紡錘車(ぼうすいしゃ)を模したものが見つかっています。なかでも刀子(とうす)を模した模造品(写真4)が約80個体出土しており、その形状は造りが写実的なものから粗雑なものまであるため、複数の製作者グループが関わっていたと考えられます。

写真1・2・3・4は『仁徳天皇陵古墳築造』(堺市博物館、2009年刊行)より転載しました。