美学・文芸学専修

本専修では、おもに四つの方向で研究が行われています。
第一に、地域や時代とともに様々に変貌する美的現象を考察し、そのための基礎理論をも習得すること。第二に、芸術作品およびデザイン作品の本質的な構造を論理的かつ実証的に究明すること。第三に、文芸(芸術としての文学)について、各国文学研究の枠をこえて、普遍的かつ体系的に研究すること。第四に、古典ギリシア、ラテン文学を研究することです。
本専修で扱われる対象は、たとえば富士や桜といった美しい自然はもちろん、都市的規模の建築や造園から家具調度や各種メディアのデザインまで、また、たとえばプラトン、アリストテレスから、現代アメリカやアジアの芸術家たちまで、多岐広範にわたります。人間のつくりだしたもの、感じ考えたことなら、およそすべて、研究の対象となります。それだけにかえって、本専修で学ぶ諸君には、テーマを明確に設定し、研究のための厳密な方法を考えるといった、積極的な態度が求められます。

教員紹介

教授 上倉庸敬

かみくら つねゆき
美学/芸術学
さまざまな時代と土地での美と芸術の関係。キリスト教と芸術の関係。映画研究の理論化。
メッセージ
ディズニー映画のビデオを3歳の孫と見ます。テムズ川の上空、雲に腰かけて手鏡をとりだし、白粉をはたく冒頭の姿から、孫の目はメリー・ポピンズに釘づけですが、当方はセリフを日本語にいいかえて場面も説明して、大いに慌ただしい。それでうっかり「あ、傘に乗って飛んで来た」。すると、「傘に乗ってないねえ、乗ってないねえ」と非難される。たしかに傘は差しているだけ。傘と飛行の強い因果関係は、おとなの錯覚です。子どもでも、くりかえし見るので、よく分かっています。「チン・チム・ニ」と一緒に歌い、ロンドンの屋上を跳びまわって踊る煙突掃除夫たちに声をあげても、さいごには「これ要らん」。歌わない、見ないと、悲しく泣きはじめる。そういわれれば、いかにも、『メリー・ポピンズ』は歓びの果ての哀しみを描いた映画でした。傍からどういわれてもよい。巻きかえし繰りかえし見るもの、聞くものを、勉強の対象に選びましょう。逆ではありません。葦編三絶した相手を研究なさい。
趣味
ドライヴ先のスーパーで、家内とする買い物。

教授 藤田治彦

ふじた はるひこ
環境美学/芸術学
英米を中心とした美学・芸術学研究、日本とアジアのアート・クラフト・デザインの研究
メッセージ
環境美学そして環境芸術学。もし、あなたが環境の美を専門とするなら、どちらの名を選ぶでしょう。インスタレーション的作品を連想させる環境芸術学より、自然環境をも対象とする環境美学のほうが包括的で、普遍性の高い選択かもしれません。しかし、もはや地球が実質的にひとつの人工物と化し、私たち自身が環境に責任をもたねばならぬ現在、つくるにせよ守るにせよ、環境の美を扱う学は環境芸術学なのだという認識は重要でしょう。名称はともあれ、私たちが環境をも研究の対象としつつあること自体、大きく変貌しようとしている美学・芸術学の今日の姿なのです。地球環境をここまで人工化させた人間の「デザイン」が、元来は「超越者の創意」であったことの意味が、いま問われているのです。
趣味
少し放浪癖あり

教授 内田次信

うちだ つぐのぶ
西洋古典文学/ギリシア神話/神話学
ギリシア・ローマ古典文学や神話、また西洋古代の精神特性
メッセージ
西洋古代の文学や歴史に接すると、何よりもその偉大で個性的な、真に人間くさい人物像の数々に引き付けられる。人間であるということは、機械とは異なり、個性的ということと切り離せないが、その手本が西洋古典には豊かにある。それに触れることで人は人間というものを、また私という存在を見つめ、自分独自の生きざまを考えることにもなるだろう。生き方とは要するに自己表現の謂いである。もちろん目立つのがよいという意味ではなく、たとえ縁の下の力持ち的な役でも、自ら選び取って心をこめて演ずれば立派な役者である。学問とはたしかに「真理」の探求であるが、独自の思考を築き上げる研究を通じて自己表現する道でもある。「ヒューマニズム(人文学/主義)」は、さまざまな形の人間表現を生み出しうるフィールドである。
趣味
サザンオールスターズ(何故か桑田桂祐のソロにはとくに心を惹かれない)

准教授 加藤浩

かとう ひろし
文芸学/西洋古典学/美学
古代ギリシアからルネサンスに至るまでのポイエーシス(詩作)理論史、文芸ジャンル論に基づく小説の理論
メッセージ
私の研究者としての出発点は、「プラトンの詩学」の研究でした。卒業論文でも修士論文でも、プラトンをテーマとして選びました。プラトンの理論の帰結は、芸術否定論です。歴史上もっとも苛烈なる芸術否定論を展開したのがプラトンなのです。美学の研究を志す者が、なにゆえに芸術否定論に取り組まねばならないのか、当初はずいぶんと悩みました。しかし、芸術否定論を通じて見えてくるものは、芸術と哲学の連続性と非連続性をめぐるとてつもなく深い思索の歴史でした。今でも、ことあるごとにプラトンに立ち戻りつつ、貧しいながらも日々研究に勤しんでいます。立ち戻ることのできる地歩を固めることが、何事においても大切であると考えています。今は特に、古代ギリシアからルネサンスに至るまでのポイエーシス理論史の記述という基礎作業を踏まえた上で、小説のジャンル規定という問題を詩学から文芸学へと向かう歴史の文脈の中で考察しています。Festina lente !(ゆっくり、急げ。)
趣味
猫と遊ぶこと

准教授 三宅祥雄

みやけ よしお
現代フランス哲学/映像論
現代フランス哲学/映像論。とくにバザン、メッツ、ドゥルーズの映画理論。
メッセージ
映画館の座席に身をうずめ、スクリーンに眼を凝らしながら、その奥底へ吸い込まれるように眠ってしまうことほど心地よい経験はありません。つまらない映画だったわけでも昨夜の寝不足がたたったわけでもないのに何故だろう、そう考えることから映画についてのささやかな理論的考察が始まります。たとえば私的空間と公共空間の境目をかぎりなく曖昧にする映写室の暗闇、画面のちらつき(フリッカー)が生みだす呪術めいた催眠効果、そしてなによりもまずカメラや登場人物への同一化をうながす映像自体の絶えまない生成-変化。映画のなかには世界に関するすべての問題があり、映画について思考するとはそれらを映画とともに思考することです。ただし先を急ぐ必要はありません。大学の4年間は短いようで長く、楽しい映画、すばらしい映画は星の数ほど存在するのですから。さてとりあえずは、映画館でのんびり昼寝する方法を学ぶことから始めてみましょうか。
趣味
SF、パイプ、コーヒー、弦楽器の音色、深夜の長電話

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