音楽学・演劇学専修

この専修では、音楽、演劇、芸能などのいわゆる表演芸術(パフォーミング・アーツ)の研究が行われています。音楽学の分野では、世界諸地域の芸術音楽、伝統音楽、大衆音楽などの幅広い領域にわたって、音現象そのものの研究にとどまらず、それぞれの背景にある文化や思想の研究も含む幅広い研究が展開されています。演劇学の分野では、日本の古典演劇から西洋の現代演劇までの、狭い意味での演劇ばかりでなく、世界各国の映画、オペラ、ミュージカル、バレエ、ダンス、そして芸能を含む幅広い対象を扱っており、それらの実証的かつ理論的な考察を通して、その芸術の美的特質や芸術史的、民族的特徴を理解し、さらにパフォーマンスの原理や本質を解明する試みがなされています。これらの領域を対象として扱っている大学の文学部は他にほとんどなく、本専修はこれらを人文科学の一環として研究することのできる数少ない場所となっています。

教員紹介

教授 永田靖

ながた やすし
演劇学/近代演劇史
20世紀のヨーロッパとアジアにおけるモダニズム演劇の理論的・演劇史的研究。現代演劇の批評理論の研究。
メッセージ
演劇はよく一回限りの芸術で上演が終わったらすべてが消えてしまうと考えられています。しかし実はそう単純でもありません。観客が上演に行くと決める前にはその劇や出ている俳優、またその劇団などについてあらかじめ多少なりとも知っていることが必要でしょうし、見終わってからもプログラムや雑誌、あるいはDVDで見て思い出したり、あるいは人と話したりして楽しんだりします。戯曲を読んで意味を再考するということもあるでしょう。そう考えると演劇とは上演時間だけに縛られない長い、しかし緩慢で自在な時間を持つ営みということになります。他方、Theatre(演劇)という言葉は、古代ギリシャ演劇のテアトロン(観客席)という言葉から生まれたように、見る場所という意味が含意されています。つまりそこに行かないと触れられない、そこにしかない芸術でもあります。上演時間に限定されない一方で、その場所にしか存在しない演劇。この両義性が演劇の特徴ですが、それを理解するためにはまずは観客席に坐ることです。観客席に坐るという知のスタイルを身につけて欲しいと思います。
趣味
写真、旅行(しかし忙しくてほとんど出かけることはできません・・)

教授 市川明

いちかわ あきら
ドイツ文学/ドイツ演劇
ブレヒトとハイナー・ミュラーを中心にドイツ現代演劇を研究。戯曲の翻訳・上演も多い。
メッセージ
最近では「ドイツと日本の演劇における笑い」「ブレヒトと音楽」「ブレヒトとベルリーナー・アンサンブル」といったテーマでドイツの研究者と共同研究を進めています。送り手(作者)と受け手(観客)の間に演出家や俳優が存在することによって戯曲は変容し、舞台上で音楽や美術などさまざまな芸術を束ねながら増殖していきます。演劇では表現行為(演じること)と受容行為(観ること)が「イマ・ココ」という現実と切り結んで起こります。双方向の行為が同時に起こり、スパークする瞬間は、演劇の醍醐味とでも言うべきものです。舞台と観客席が共有するテクストこそが、演劇の究極のテクストであり、演劇の記述はそこに向けられたものでなければならないはずです。演劇作品を上演との関わりの中で考察する、動態的な演劇研究を皆さんとともにやりたいと思っています。そこから戯曲(ドラマ)と演劇(シアター)の相克も見えてくるはずです。
趣味
芸術鑑賞、旅行、テニスなどのスポーツ、山歩き

教授 伊東信宏

いとう のぶひろ
音楽学
東欧の音楽史、民俗音楽研究。とくにバルトーク、ハイドン、ジプシー音楽など。
メッセージ
「歌う」というのは、喉という内奥の器官を振るわせ、その振動で相手の身体に触れ、包み込み、共振させる行為です。「演奏すること」も、それに準じているはずなので、「音楽」というのは、人間の活動の中でも実に微妙で、繊細で、しかも強力なものである、と言えると思います。ときどきカラオケで歌い、通学中にiPodの曲を聴き、街のスーパーの販促音楽にうんざりし、というような通常の音楽との付き合いの中では、それはただの気晴らし、としか思えませんが、「音楽すること」は食べることやコミュニケートすることと並んで、人間の本質に関わるものだと私は思っています。音楽学、という学問は、そういう微妙で繊細で強力な行為にできるだけ密着し、その微妙さにとことんつきあうものでなくてはなりません。阪大文学部の音楽学研究室は、そんなことを目指す、日本でも数少ない研究の場です。
趣味
自転車で近所をウロウロすること

准教授 輪島裕介

わじま ゆうすけ
民族音楽学、ポピュラー音楽研究
日本とブラジルの大衆(民衆)音楽について文化史的な研究をしています
メッセージ
音楽は国境を越える、と言われることがあります。かつての西洋芸術音楽や現在のアメリカ系大衆音楽などは、容易に国境を越えているようにも見えます。しかしその一方で、「ヒップホップはゲットーの黒人のもので、日本人にはできない」というように、人々と音楽の強固で排他的な関係が主張される場合も多くあります。さらに、かつては新奇な(あるいは恥ずべき)「異文化」であったものが、いつのまにか国民的・民族的伝統の地位を獲得することもあります(ジャズやサンバがそうですし、実は「演歌」もそうです)。つまり、問題は単に「音楽は国境を越えるか否か」ではありません。ある音楽がいかに多様な仕方で移動し、意味付けられ、経験されるか、ということに繊細な眼を向けること。これが、総合大学の文学部という場で音楽を研究することの重要な意義の一つだと私は考えています。
座右の銘
そのうちなんとかなるだろう(青島幸男/植木等)

講師 中尾薫

なかお かおる
能楽研究/演劇学/日本演劇研究/芸能史研究/近世国文学
近世能楽研究。国家儀礼の芸能として能はいかなる機能を果たしていたのか
メッセージ
なぜ能の研究をはじめたのですか、とよくたずねられる。いろいろな理由があるが、そういうときは、演劇がむかしから好きなのだけれど、いろんな演劇のなかで能がいちばん自分から遠くて、とても不可思議な演劇に思えたので、と答える。知らないことを知る喜びと、自分の世界が広がる満足感が得られるといえば、かなりうわすべりした言葉になるが、研究の原動力として「好奇心」は大事なのだろうと思う。もっとも、ひとつのことに好奇心を持ち続けるというのは、ある意味けっこうたいへんなことではあるが、演劇というカテゴリーで能をとらえると、アプローチのしかたは様々で、「好奇心」の種はつきない。ともに議論し、学びあうことで、自身の「好奇心」を研究へと深めていきましょう。
小さい頃の夢
バレエ教室の先生

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