美学・文芸学(芸術学講座)

美および芸術活動に関する一切の事象と思索を研究テーマにすることができる。時代は古典ギリシャから現代まで。地域は洋の東西を問わない。

教育スタッフの専門分野は、古典ギリシャ、ヨーロッパ中世、ルネサンス・イタリア、近代のドイツ・フランス・イギリス美学であり、ジャンルは文学・絵画・建築・デザイン・演劇・映画さらに環境美学といった芸術諸学であるが、ここで勉強し研究をすすめている院生諸君のテーマは、絵巻の時間論から舞踊、また近代ロシヤの文学思想に近世中国の美術教育制度と、じつに多彩である。けれど雑多ではない。

思索のことばと作品が大切にあつかわれていること、研究の方法が緻密に鍛えあげられていること、研究者の創意が尊重されていることを、どれにも共通 する特色として挙げておきたい。

教員紹介

教授 上倉庸敬

かみくら つねゆき
1949年、横浜市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程(美学美術史学専攻)単位修得退学。京都大学文学部助手、神戸学院女子短期大学専任講師、大阪樟蔭女子大学助教授、大阪大学助教授を経て、96年より教授。2007年、大阪大学より博士(文学)。
専攻:美学/芸術学/映画学
研究紹介
中世哲学史研究の碩学エチエンヌ・ジルソンの芸術哲学を卒業論文であつかって以来、ジルソンはネオ・トミストであったからトマス・アクィナスにおける美の哲学をさぐる一方、美術、文学、演劇、映画の作品をとおして現代にふさわしい芸術の哲学を樹てようと努めてきた。その間、映画製作の現場ではたらく人々の教えを受け、そうした仕事の深さを知るにつけ、学問ともいえぬ映画研究が罷り通っている現状にあきれて、映画への蒙を啓きながら研究の理論化を目指すことにした。いずれの道も及びがたく一生は短かった。
メッセージ
個人の色が濃すぎるので参考になるとも思えないが、経験を少々。たとえば当面の研究対象がアリストテレスの『霊魂論』だとしよう。ギリシャ語の原文を読む。ラテン語、英語、フランス語、ドイツ語の参考書を読む。それぞれに1時間ずつを充てる。もちろん日本語の翻訳があるものは、それをつねにかたわらに置いてある。とにかく、これだけで1日5時間は机のまえにいる。そのように40年を費っても、結果はこの程度でしかなかった。若いころは、自分の楽しみだけには終わらせまい、という野心もあったが、老いは速く、学は進まない。よくご承知あられたい。
主要業績
「ジルソンの芸術哲学―創造的技芸について―」(『美学』1977年);「詩におけるイメージと概念」(『美学』1979年);「観客の現在」(『美学』1983年);「物語・語り口・時間―森田芳光の方法をめぐって―」(『映像学』1989年)他
概説・一般書
『美の変貌―西洋美学史への展望』(共著、当津武彦編、1988年、世界思想社刊);『芸術の楽しみ』(共著、原田平作・神林恒道編、1996年、晃洋書房刊);『生と死の文化史 懐徳堂ライブラリー4』(共著、懐徳堂記念会編、2001年、和泉書院刊)他

教授 藤田治彦

ふじた はるひこ
1951年生。大阪市立大学大学院生活科学研究科博士課程修了。学術博士 (大阪市立大学 1983年)。京都工芸繊維大学工芸学部准教授、ルーヴェン・カトリック大学客員教授、大阪大学大学院文学研究科准教授などを経て、現職。
専攻:環境美学/芸術学
研究紹介
造形芸術全般を研究対象とし、とくに英米と日本の美術、工芸、デザインを中心に、芸術空間と生活空間をひとつの視野に入れた風景画論、景観論、建築論、庭園の研究など、環境の美と芸術に関わる比較研究を行っている。イギリスを中心とした欧米の美学と芸術の研究を継続する一方で、近年は、日本の美学とアジアのデザインの研究にも力を入れている。
メッセージ
環境美学あるいは環境芸術学。あなたが環境の美を専門とするなら、どちらの名を選ぶでしょう。インスタレーション的作品を連想させる環境芸術学より、自然をも対象とする環境美学のほうが包括的で、普遍性の高い選択かもしれません。しかし、もはや地球が実質的にひとつの人工物と化し、私たち自身が環境に責任を持たねばならない現在、環境の美を扱う学は環境芸術学なのだという認識は重要です。名称はともあれ、私たちが環境の美をも対象としつつあること自体、大きく変貌しつつある美学・芸術学の今日の姿なのです。地球環境をここまで人工化させた人間の「デザイン」が、元来は「超越者の創意」であったことの意味がいま問われているのです。
主要業績
“American Design in the Nineteenth Century : Architectural Expression, 1838-1880.” (学位論文 1983);『風景画の光』講談社 (1989);『ウィリアム・モリス:近代デザインの原点』鹿島出版会 (1996);『現代デザイン論』昭和堂 (1999); “Notomi Kaijiro: An Industrial Art Pioneer and the First Design Educator of Modern Japan.” Design Issues, No.17 (2001);『国際デザイン史』思文閣出版(共編著2001);“The Ways of Arts or Ethics in Aesthetics”, International Yearbook of Aesthetics, No.7 (2003);『ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』梧桐書院(共編著2004);『アーツ・アンド・クラフツと日本』思文閣出版(共編著2004);『天体の図像学』八坂書房(2006);『近代工芸運動とデザイン史』思文閣出版(共編著、2008);"Letters on Images," International Yearbook of Aesthetics, No. 12 (2008)
概説・一般書
『マンハッタンの建築』講談社 (1991);『美術とデザインの歴史』NHKきんきメディアプラン (1992);『ナショナル・トラストの国:イギリスの自然と文化』淡交社 (1994);『ウィリアム・モリスへの旅』淡交社 (1996);『ターナー:近代絵画に先駆けたイギリス風景画の巨匠の世界』六耀社 (2001);『ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』東京美術 (2009);『芸術と福祉:アーティストとしての人間』大阪大学出版会(共編著2009)

教授 内田次信

うちだ つぐのぶ
1952年生。京都大学大学院文学研究科西洋古典文学専攻博士課程修了。博士(文学)。2006年より現職。
専攻:西洋古典文学/文芸学
研究紹介
西洋古典(古代ギリシャ・ローマ)文学、とくにホメロス等の叙事詩、ピンダロス等の叙情詩、エウリピデスやアリストパネスらのドラマ、ルキアノス等の散文文学、また中世や近代以降の西洋文学に対する古典の影響や受容、そして文学という芸術の本質について研究している。
メッセージ
西洋文化は、人間中心主義的である、それが現代文明の危機をもたらしている一因だとよく批判される。しかし人間は、草木野獣の成す自然にまったく同一化することはできないことはたしかであり、それと共通するまた相違する点について考えながら、人間がいちばんという思い上りは避けつつ、「他者」との関係において人間の特質を知ろうとする自己省察の営みをこれからも続けなければならない。「なんじ自身を知れ」という諺とか、哲学者ヘラクレイトスの説く「自分自身の探求」は、古代ギリシャ人の人間の本質への持続的な強い関心を示すよい例である。西洋古典にはそういう自己探求のモデルのいくつかが見いだされる。
主要業績
「オデュッセウスとその妻」(『西洋古典論集』1994年)、「Die Gestalt des Dichters in Pindars Erster Olympischer Ode」(Antike und Abendland,1986年)、「呼びかけるドラマ—アリストパネスとギリシア劇」(学位論文、2003年)
概説・一般書
『ルキアノス選集』(国文社、1999年)[訳]

准教授 加藤浩

かとう ひろし
1960年生。大阪大学文学部美学科(美学・文芸学)卒。大阪大学大学院文学研究科博士課程(芸術学)単位取得退学。文学修士。岡山大学文学部助手・講師・助教授、大阪大学文学部助教授を経て現職。
専攻:古典詩学/文芸学
研究紹介
古代ギリシアからルネサンスに至るまでのポイエーシス(詩作)理論史、および文芸ジャンル生成論に基づく小説の理論を主たる研究領域としている。前者の研究においては、往々にして恣意的に歪められて使用される憾みがあるポイエーシス概念を実証的に歴史的文脈の中に定位することで、古典詩学を歴史的・体系的に再構築することを試みている。また後者の研究においては、古典詩学の提供する理論的枠組を超脱する小説の特性をジャンル生成論の視点から記述することを通じて、近代において文芸学が成立するに至る経緯を確認するとともに、現代における文芸学の課題を考察している。
メッセージ
古典詩学と小説の理論という両極端にあるように見える研究領域を文芸学において綜合することが、積年の課題である。プラトンやアリストテレスのポイエーシス理論を研究の出発点として、スカリゲル『詩学七巻』(1561年)の翻訳に従事しているのも、この課題を達成するための基礎作業である。ジャンル論と言えば古典詩学の偏狭さの代名詞のごとく取り扱われるが、小説の生成をこのジャンル論から照射すると、詩学から文芸学へという道筋が思いの外鮮明に浮かび上がってくる。目下、古代ポイエーシス理論史を纏め、文芸学基礎論の構築に取り組んでいる。
主要業績
「詩作の成立―プラトンにおける霊感と模倣の概念をめぐって―」 (1986年『フィロカリア』)「詩作と哲学―プラトン<詩学>構築のた めに―」(1986年『美学』)「アリストテレス『詩学』におけるepeisodionの意味」(1989年『岡山大学文学部紀要』)“Mythos and Poiesis-A Possibility of Plato's Poetics,” Aesthetics, 6, 1994;「ユリウス・カエサル・スカリゲル『詩学七巻』の基本構想」(1999年『文芸学研究』)ジロラモ・フラカストロ『ナヴァジェロ、もしくは詩作に関しての対話』(翻訳・註解1990年『芸術学研究』)ユリウス・カエサル・スカリゲル『詩学七巻』(翻訳・註解1992年より『芸術学研究』『文芸学研究』に連載中)その他
概説・一般書
『美の変貌―西洋美学史への展望』(共著、1988年、世界思想社)『芸術学フォーラム第7巻文芸・演劇の諸相』(共著、1997年、勁草書房)

准教授 三宅祥雄

みやけ よしお
1951年生。岡山大学法文学部哲学科卒業、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。文学修士(大阪大学、1977)。大阪外国語大学外国語学部講師、同准教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授。
専攻:現代フランス哲学/映像論
研究紹介
学生時代から飽きもせずサルトル、バルト、ドゥルーズを読み続けています。この三人に共通するのはいずれも「映像」に関して基礎的な仕事を残していること。サルトルの想像力論をたずさえ勇んで旅に出たものの、バルトの写真論でみごとに哲学の正道を踏みはずし、あちこちさまよったあげくドゥルーズの『シネマ』という巨大な森の入口にたどり着いたのがほぼ15年前のことでした。以後うす暗い木漏れ日の下で古参の固有名たち(バザン、ミトリ、メッツ)と戯れながら、研究も講義も映画理論・映画美学に偏りがちです。
メッセージ
年間500本をこなすと豪語したかつてのシネフィルたちは、もはや社会的に許容されないお荷物でしかないのでしょうか。それでも冗談半分に映画検定を受験してみたり、ジョン・カーペンターのお宝ヴィデオをこっそり収集している絶滅寸前の映画オタクが今なお生息しているとすれば、これを手篤く保護し種の存続をうながすベく尽力することにやぶさかではありません。映画を学問として極めるなどと大仰に構える前に、この密室の快楽を社会的実践に向けて開いていく工夫を学生諸君とともに重ねていきたいと思います。
主要業績
「映画の視点とその変容(1)」『美学研究』第7号(2009);「表層の 映像― ロラン・バルトは暗い部屋をいかに改装したか」EX ORIENTE, vol.12(2005);「『意味の論理学 』 注 解(一)(二-a)」 études françaises, no. 30-31(1997-1998);「サルトル、あるいは〈意識の複数性〉というスキャンダル」(1)~(3)」études françaises, no. 20(1984)et 22-23(1986-1987);「〈心的なもの〉 の疎外構造― 初期サルトルにおける心理学批判の射程」『カルテシアーナ』第2号(1979)
概説・一般書
『ラルース哲学事典』(共訳、弘文堂、1998);ロベルト・ザッペーリ『妊娠した男』(共訳、青山社、1995);『哲学基本事典』(共著、富士書店、1992);『現代思想のトポロジー』(共著、法律文化社、1991)

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