文学環境論コース
従来の文学研究は、視点が作品内部に集中し、狭い枠組みを作ってきた傾向があります。本コースでは、より広い視野を持った研究を求めて、日本文学・東洋文学から欧米文学にわたる文学世界を広く研究領域として捉え、作品の内部の世界とそれを取り巻く外界(環境)との関わりを、自然環境・人間環境・文化環境など、多次元的に検証し、そのことを通して、文学に対する根源的な問いを試みていきます。
例えば、1つの時代・地域のあり方や社会通念と文学作品との関係を問うこと、異文化交流や他言語との接触の側面において文学を見ること、絵画・映画など他ジャンルとの関連を考えること、サブカルチャーから対象を見出しての研究など、解明されていないテーマが多く、方法論もそれに応じて作り出していくことになります。領域横断的なアプローチや新しい研究理論も必要で、翻訳も研究の1方法です。そのような取り組みを通して、今日的知見と広範な素養を修得し、ジャーナリズム・マスコミ・教職関係等での活動をはじめ、国際的環境において活躍できる高度な専門的職業人の養成をめざします。
コースHPへ(準備中)
教員紹介
教授 清水康次
教授 平田由美
教授 和田章男
准教授 石割隆喜
教授 清水康次
しみず やすつぐ 1954年生まれ。京都大学文学部(国語学国文学専攻)卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程(国語学国文学専攻)修了。博士(文学)(京都大学、1995)。大阪女子大学助教授、京都光華女子大学教授等を経て、2009年10月より現職。
専攻:日本近代文学、書誌出版文化研究
研究紹介
主たる研究領域は、日本近代文学と書誌出版文化史。まず、芥川龍之介の文学から始め、その初期の作品から時代を追って研究していき、次第に他の作家にも手を広げて、志賀直哉・夏目漱石・太宰治などの作品を取り上げて論じてきた。また、文学の書誌に関心を持ち、漱石の著作と芥川の著作についての書誌をまとめ、より広く出版文化というものに関心が拡大してきた。近年、昭和期の作家にも興味を持ち始めており、さらに、文学と美術など、文学と外部との関係に目を向けるようになってきている。
メッセージ
研究を始めた頃、『芥川龍之介全集』と向かい合って、作品を少しずつ書き写しては自分のコメントを加えて、ひとつずつ読んでいった。一方、その作品を掲載した雑誌や当時の本に惹かれ、古びた雑誌や本を買い集めてきた。冷たく静かな全集のテクストと、時代の照り返しを帯びたノイズの多いテクストと。今も、その両方に惹かれつつ、複数の視点で、文学というものを考えていこうとしている。いろんな角度から同じ場所を何度も見直すことで、鳥のような空からの視点は持てなくても、広い視野が得られると思っている。
主要業績
『芥川文学の方法と世界』(和泉書院、1994);『芥川龍之介作品論集成』第4巻「舞踏会―開化期・現代物の世界―」(編著、翰林書房、1999);「『暗夜行路』「第一」を読む」(『光華女子大学研究紀要』2001);「同「第四」を読む」(『国語国文』2003.3);『二十世紀旗手・太宰治』(共著、和泉書院、2005);「こゝろ」における「不可思議な私」」(『光華日本文学』2009)
概説・一般書
『芥川龍之介全集』第1巻「注解」(岩波書店、1995);『漱石全集』第27巻「単行本書誌」(岩波書店、1997);『芥川龍之介全集』第24巻「単行本書誌」(岩波書店、1998);『日本文学と美術』(共著、和泉書院、2001);『京都と文学』(共著、和泉書院、2005);『谷崎潤一郎と京都』(共著、京都光華女子大学、2009)
教授 平田由美
ひらた ゆみ 1956年生。大阪外国語大学外国語学研究科修士課程日本語学専攻修了。博士(文学)(京都大学、2002)。京都大学人文科学研究所助手、 大阪外国語大学助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:日本文学・文化研究/ジェンダー研究
研究紹介
言語・文体の変容、ジャンルの興七、読者層の拡大や新たなテクロノジーによるメディアの隆盛など、近代のエクリチュールは地殻変動ともいうべき大きな変化を経験した。そうした事態にあって、「日本文学」の「近代」とは何であったかを主題として、「前近代」と呼ばれる時代との断絶と接続のふたつの局面から、文学テクストの生成メカニズムを考察してきた。近年はテクストをとりまくコンテクスト、たとえば文学をめぐる言説や制度の政治性、文学ジャーナリズムやメディアの権力性をも含めた〝近代という問題〟を考えたいと思っている。
メッセージ
自分自身がその真っ只中で生きているせいで見えにくくなっている現実の中から、論じるべき問題の在りかやこんがらがっている箇所を見つけ出して丁寧に解きほぐしながら考えること、その作業を借り物ではないやり方で思考し手垢のついていないことばで伝えようとすること―すごくむずかしいけど、チャレンジングだと思わん?
主要業績
‘The Narrative apparatus of Modern Literature’(Michael Bourdaghs ed., Drifting Clouds of Language: Textuality, Linguistic Theory, and Literary Studies in Contemporary Japan , University of Michigan Press, 2010);『여성표현의 일본 근대사-<여류 작가>의 탄생 전야-』(『女性表現の明治史:樋口 一葉以前』[岩波書店,1999]韓国語訳,Somyong Publishing, 2008);「《国=家の物語》を組み替える:「戦後文学」としての在 日朝鮮人文学」(西川祐子編『戦後という地政学』東京大学出版会, 2006);‘Fragmented Woman, Fragmented Narrative’(Naoki Sakai et al. eds., Deconstructing Nationality , Cornell University, 2005)
概説・一般書
『岩波女性学事典』(項目執筆,岩波書店,2002);『歴史学事典第9巻法と秩序』(項目執筆,弘文堂,2002);「自己表現という行為:読み書き語りの顛倒性」(講演記録,『女性学研究所年報』11号,2001);『ニュースの誕生:かわら版と新聞錦絵の情報世界』(図録解説,東京大学総合研究博物館,1999);「一筆まゐらせ候:新聞投書と近代日本語」(対談,『月刊みんぱく』19巻10号,1995);「女性の目でみた京の町・京の暮らし」(座談,『気球があがった:近代京都の一世紀』京都文化博物館,1998)
教授 和田章男
わだ あきお 1954年生。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。パリ第四大学第三課程博士(文学)。大阪大学文学部助手、言語文化部講師、助教授 を経て、1993年大阪大学文学部助教授、1999年文学研究科助教授、2004年より同研究科教授。
専攻:フランス文学
研究紹介
プルーストが残した厖大な草稿資料に基づき、その畢生の大作『失われた時を求めて』の生成過程の研究を進めています。3年間かけて作成した「プルースト草稿帳総合索引」を踏まえて、同時代の文学事象と関連づけることが現在の研究課題です。また、プルーストの批評言説を、批評史・受容史の中に位置づけ、その独自性を相対化する試みをしています。そのほか、小説におけるトポス(場)の問題にも関心があり、今、「パリ」という大きなテーマに手をつけようとしています。
メッセージ
今年から文学環境論コースの担当となりました。文学作品の中における「場」の問題、あるいは文学作品の創作、出版、受容をめぐる文学の「環境」も刺激的な研究テーマです。文学と他の芸術ジャンルとの交差、文化事象との関連、国や地域そして言語をも越えた比較論、本コースでは、新しい発想、斬新な切り口による知の冒険を試みましょう。いろいろな学問ジャンルにおいて経験豊かな教師陣と留学生も含めた国際的な学生陣との共同によって、新しい知の世界が切り開かれることを期待しています。
主要業績
Index général des Cahiers de brouillon de Marcel Proust(科学 研究費成果報告書、2009);“Proust et Leconte de Lisle: un autre poète dans le Contre Sainte-Beuve”(GALLIA , No. 47, 2008);「20世紀フランス文学における旅とエクリチュール―「旅行記」 の終焉と「旅行小説」の興隆」(『テクストの生理学』,朝日出版社、 2008);“Proust et le paysage de Camille Corot” («Proust sans frontières», Marcel Proust 6 , Lettres Moderne Minard, 2007);「プルーストとネルヴァル批評」(『大阪大学大学院文学研究科 紀要』,第47巻、2007)
概説・一般書
『フランス文学小事典』(朝日出版社、2007);『エクリチュールの冒険―新編・フランス文学史』(大阪大学出版会、2003);『怪鳥』(翻訳)(『ジュール・ルナール全集』4,臨川書店、1995);「ピエール・ロチ『お菊さん』―日本イメージ形成の物語」(『異邦人の見た近代日本』、懐徳堂ライブラリー3、1999)
准教授 石割隆喜
いしわり たかよし 1970年生。大阪外国語大学外国語学部(英語学科)卒、大阪大学大学院文学研究科博士課程(英文学専攻)修了。博士(文学)(大阪大学、1999)。大阪外国語大学助手・講師・助教授・准教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授。
専攻:アメリカ文学
研究紹介
トマス・ピンチョンら「ポストモダン」の作家の作品ははたして「小説」と呼べるのか。「小説」は歴史のある時点で興り、今もしかしたらその役目を終えつつあるのかもしれないという、「小説」形式の歴史性とでも呼ぶべき問題に関心を抱いている。20世紀後半以降のポストモダン文学の分析を通して、広く「近代」という歴史的条件の中で「小説」がどのような役割を果たしてきたのか、「小説」という形式を必要としたのはどのような「人間」だったのか、といったことを探ってゆきたいと考えている。
メッセージ
そのままではまず使いこなせない機械の箱、ハードウェアであるコンピュータと、われわれユーザーとの間を仲立ちしてくれるのがOS(オペレーティング・システム)というソフトウェアであるように、文化とはわれわれ人間と環境(ハード)とのあいだを取り持ってくれる「ソフト」だといえるのではないでしょうか。その「ソフト」の一つ(たった一つ!)が「小説」―このような風通しのよい視点をもちながら「小説」についてもう少し深く考えてみませんか。
主要業績
「シュールリアリスティックな資本主義―Gravity’s Rainbow 、 あるいはPynchonの『ポスト・ノヴェル』」『英文学研究』第85巻 (2008);「死者の〈怨〉の二つの型 ― フロイトの『文学』、 Vinelandの“Cahmmunism”」『関西英文学研究』第1号(2007); 「ヘーゲル主義者、Stencil― V.の他者」 『英文学研究』第81巻 (2005);Postmodern Metamorphosis: Capitalism and the Subject in Contemporary American Fiction (英宝社、2001)
概説・一般書
「ポストモダンを目撃するということ―『小説の死』再考」鴨川卓博・伊藤貞基編『身体、ジェンダー、エスニシティ―21世紀転換期アメリカにおける主体』(英宝社、2003)
このページのトップへ
大学院専門分野・コース紹介一覧に戻る