言語生態論コース

日々国際化し、多岐にわたって情報化していく現代社会においては、言語の果たす役割がますます増大の一途をたどっています。その多様化する現代社会で用いられ、一方ではまたそれ自身がさまざまな側面で変容しつつある言語の実態を適切に理解し把握するために、これまでの言語研究の方法にとらわれない柔軟な姿勢で、より広い総合的な見地から言語を考えることが必要になってきました。

このような必要性にこたえて、本コースでは、言語や言語が伝える情報の実態を言語生成や変化、言語の比較対照、言語データの数量的把握などのさまざまな観点から総合的に分析し理解することを試みます。そして、そのような作業を通じて、一般の大学院生や、実際に言語教育に携わっている学校教員、新聞・雑誌、出版・宣伝広告等に関わっている社会人を、高度専門職業人として養成することを本コースの重要な目的とします。

教員紹介

教授 大庭幸男

おおば ゆきお
1949年生。九州大学大学院文学研究科修士課程(英語学専攻)修了。文学博士(大阪大学、1997年)。山口大学助手、同講師、大阪大学言語文化部講師、同助教授、大阪大学大学院文学研究科助教授を経て、1999年4月より現職。
専攻:英語学
研究紹介
理論言語学の生成文法理論を研究している。この理論は、子供が周りで話されている言語を短期間に、均一的に習得するのは何故かという疑問に答えようとしているものである。そのために、子供は生まれながらに言語を習得できるような文法(これを普遍文法という)をもっているという仮説が立てられている。現在、英語はもちろんのこと、日本語、フランス語、イタリア語、中国語などの言語資料を用いてその文法を明かにしようとしている。
メッセージ
まず、英語の論文や、テクストをしっかり読み、その内容を的確に把握する能力を身につけることが重要である。また、何事にも強い問題意識をもって、それを解決するために論理的な思考を身につけることも大切である。言語には様々な面において、まだまだ解明されていない問題が多く残されている。若くて柔軟な思考能力をもっている学部生・院生諸君と共にこれらの問題を解決すべくチャレンジしていきたい。
主要業績
「優位効果と最小連結条件」『英文学研究』第73巻第1号(日本英文学会、研究社、1996);『英語構文研究』(英宝社、1998);“Island Phenomena and Search Spaces of a Probe,” Linguistic Analysis 30 (published in 2002);『左方移動』(共著、研究社、2002);「特定性効果とフェイズ不可侵条件」『市河賞36年の軌跡』(共著、語学教育研究所、2003);“The Double Object Construction and the Extraction of the Indirect Object,” Linguistic Analysis Vol.32.1-2 (published in 2005);“The Double Object Construction and Thematization/Extraction,” English Linguistics Vol.22.1 (日本英語学会、開拓社、2005)
概説・一般書
『英語学用語辞典』(共著、三省堂、1994);『英語構文事典』(編集協力者・共著、大修館書店、2001)

教授 加藤正治

かとう まさはる
1955年生。名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程修了(英語学講座)。文学修士(名古屋大学、1979)。名古屋大学助手、甲南女子大学講師、大阪外国語大学助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:英語学
研究紹介
英語の歴史的変化を現代言語学(「生成文法理論」)の枠組みでどのように記述するかを研究しています。英語の母国語話者は頭の中に英語を自由に操る能力、即ち「英語の文法」を内蔵しています。従って、英語の歴史的変化とはそれぞれの時代の母国語話者が持つ英語の文法の変化にほかなりません。文法を規則と原理の体系であると単純化すれば、「文法の変化」=「規則と原理の変化」ということになります。そのような変化の中でも特に統語変化を生成文法理論でどのように説明するかを研究しています。
メッセージ
統語論研究は謎の解明に似たところがあります。興味深い統語現象という謎が提示され、次にそれに関する一連の事実が観察によって得られる。それらの事実をもとにして、利用可能な原理・原則、規則といった手段を駆使して(場合によっては新たな原理・原則、規則を提唱することもあります)、その謎を解明する。謎が鮮やかに解明された時の爽快感はなにものにも代えがたいところがあります。そのような爽快感を味わってみたい方のお手伝いができればよいと思っています。
主要業績
「16世紀及び17世紀の英訳聖書の『マタイ伝』にみられる倒置とThere構文」『近代英語の諸相』(英潮社、1993);「NegPと英語否定文の変遷」『近代英語研究』第10号(1994);「否定命令文の変遷に関する一試案―研究ノート―」『言語の深層を探ねて』(英潮社、1996)
概説・一般書
『現代英語正誤辞典』(共著、研究社、1996);『英語学用語辞典』(共著、三省堂、1999);『ワードパル和英辞典』(共著、小学館、2001)

教授 田野村忠温

たのむら ただはる
1958年生。京都大学大学院文学研究科博士後期課程学修退学(言語学専攻)。文学修士(京都大学、1984)。奈良大学文学部講師、大阪外国語大学外国語学部講師、同助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:言語学・日本語学
研究紹介
現代日本語を中心として、人間の言語の文法・語彙・意味・音韻などの諸現象に見出される規則性やその変化の様子を分析・考察しています。また、現在は国立国語研究所を中心とする日本語コーパス構築計画(特定領域研究「日本語コーパス」、2006〜2010年度)および同研究所の共同研究プロジェクト「コーパス日本語学の創成」(2009〜2013年度)に参加し、電子資料の利用によって日本語研究をいかに深化・発展させられるかという課題にも取り組んでいます。
メッセージ
言語の研究にはその対象と方法の両面に関して無限の可能性があり得ます。対象面でも方法面でも、興味の範囲を始めから限定するのではなく、自由な意識で多様な可能性に向き合おうとする学生を歓迎します。いろいろなことを学び、考える過程で、今まで取り立てて考えることもしなかった言語の側面に興味が芽生えることも多いはずです。
主要業績
『現代日本語の文法I―「のだ」の意味と用法―』(和泉書院、1990);「疑問文における肯定と否定」『国語学』第164集(1991);「辞と複合辞」『日本語学と言語学』(明治書院、2002);「コピュラ再考」『複合辞研究の現在』(和泉書院、2006);「複合辞の本性について」『言葉と認知のメカニズム』(ひつじ書房、2008);「大規模な電子資料に見る現代日本語の動態」『待兼山論叢』第42号文化動態論篇(2008);「コーパスからのコロケーション情報抽出」『阪大日本語研究』21(2009)
概説・一般書
『Perlプログラミング─テキストデータ処理の基礎─』(大阪外国語大学、2003);『コーパス日本語学ガイドブック』(服部匡・杉本武・石井正彦各氏との共著、特定領域研究「日本語コーパス」日本語学班、2007);R.グリシュマン著『計算言語学─コンピュータの自然言語理解─ 』(山梨正明氏との共訳、サイエンス社、1989)

教授 神山孝夫

かみやま たかお
1958年生。東京外国語大学大学院外国語学研究科修士課程修了。博士(文学)(東北大学)。大阪外国語大学外国語学部教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:印欧諸語の歴史と印欧語比較言語学、音声学
研究紹介
第一の専門は英語やヨーロッパ諸語の歴史と、印欧(=インド・ヨーロッパ)語の比較言語学です。従来の研究に潜在する矛盾の補正を試みています。印欧語を母語としない我々にはナショナリズムと無縁の冷静な判断が可能であり、この点ではむしろ有利かもしれません。第二の専門は音声学です。その応用として、外国語と日本語の発音上の違いを抽出し、外国語を学ぶ日本語話者や日本語を学ぶ外国語話者の便を図りたいと考えます。文字論や日本語史、また印欧語地域を中心に歴史、宗教、神話等にも関心があります。
メッセージ
小生と同様に、ヨーロッパを中心にことばが大好きで、特にその歴史的あるいは音声学的研究を目指す方を歓迎します。他分野を専門とする方々にも、授業を通して印欧語地域の言語文化理解の基礎を養い、また言語運用能力を高めるお手伝いができればうれしく思います。様々な言語研究に触れて視野を広げるべく、また同学の方々との和を広げるべく、各種学会、講演会、研究会等にも積極的に参加ください。
主要業績
『日欧比較音声学入門』(鳳書房、1995); On the Vowel Lengthening of the Sigmatic Aorist in the Prehistory of Slavic. Japanese Contributions to the XIIth International Congress of Slavists(The University of Tokyo、1998); アンドレ・マルティネ 『「印欧人」のことば誌: 比較言語学概説』(訳編、ひつじ書房、2003); 『印欧祖語の母音組織: 研究史要説と試論』(大学教育出版、2006)など.
概説・一般書
竹林 滋編 『新英和大辞典(第6版)』(外来語発音、研究社、2002); 国際音声学会編 『国際音声記号(IPA)ガイドブック: 国際音声学会案内』(竹林 滋氏と共訳編、大修館書店、2003); 『脱・日本語なまり: 英語(+α)実践音声学』(大阪大学出版会、2008)など.

教授 渋谷勝己

しぶや かつみ
1959年生。東京外国語大学外国語学研究科日本語学専攻修了、大阪大学大学院文学研究科日本学専攻中退。学術博士(大阪大学)。梅花女子大学講師、京都外国語大学助教授、大阪大学准教授等を経て、2009年4月より現職。
専攻:日本語学
研究紹介
ひとりの話し手やひとつの言語共同体のなかでふたつ以上の言語や方言が接触したときに、その接触を経験した話し手や言語共同体、言語や方言にどのような変化が生じるのか/生じないのか、またどうしてそのような変化が起こるのか/起こらないのかを追究することに興味をもっています。こういった視点のもと、これまで、各地の方言の変化や、日本語を外国語として学ぶ学習者の日本語習得、日本の植民地下で日本語を身につけたミクロネシアの人々の現在の日本語能力、言語接触の場に生じる言語問題などを研究してきました。
メッセージ
昔から今に至るまで、私たちはほかの言語や方言を話す人々と接触することを繰り返し、その過程において、自分の使うことばやことばのレパートリーが変化するという経験を積み重ねてきました。このような接触は、現代社会でもごく日常的に観察できることがらですが、その接触の現場では、ことばがダイナミックに変化し、ときにコミュニケーションをめぐる言語問題や社会問題を引き起こしています。言語接触をつぶさに観察し、それを取り巻くさまざまな問題について考えてみたいと思う方をお待ちします。
主要業績
「社会言語学的にみた日本語学習者の方言能力」『日本語教育』76(1992、単著);「旧南洋群島に残存する日本語の可能表現」『無差』2(1995、単著);「旧南洋群島に残存する日本語の文法カテゴリー」『阪大日本語研究』9(1997、単著);「国語審議会における国語の管理」『社会言語科学』2-1(1999、単著);「消滅の危機に瀕した第二言語」『国立民族学博物館調査報告39消滅の危機に瀕した言語の研究の現状と課題』(2003、単著);『シリーズ日本語史4日本語史のインタフェース』(岩波書店2008、共著)。
概説・一般書
『新・方言学を学ぶ人のために』(世界思想社1991、共著);『社会言語学』(おうふう1992、共著);『地域性からみた日本』(新曜社1996、共著);『応用社会言語学を学ぶ人のために』(世界思想社2001、共著);『日本語学習者の文法習得』(大修館書店2001、共著)。

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