比較文学(国文学・東洋文学講座)

比較文学専門分野は9年前にスタートした、本研究科のなかでは若い専門分野です。日本での比較文学研究の流れからまず西洋と日本の近代文学の関係を考えることが一つの主要な研究テーマとなりますが、たんに個々の作品間の影響関係を考えるだけでなく、西洋の受容あるいは変容を可能にした言語文化的背景など多様で複合的な観点から検討することを目指しています。

このほか、あるテーマに従って世界の文学を横断するテーマ研究、絵画と文学などのジャンル間交渉の問題、性、多民族国家の問題などが主要な研究テーマとなりますが、最近は特にアジアと日本の関係を考える研究も盛んになりつつあり、すでに海外からも本学の比較文学研究への関心、留学の希望など大いに高まりつつあります。

教員紹介

准教授 橋本順光

はしもと よりみつ
1970年生まれ。大阪大学文学部英文学専攻卒業、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究修士課程修了。ランカスター大学大学院歴史研究科博士課程修了。博士(歴史)。2001年4月に横浜国立大学教育人間科学部講師、同准教授を経て、2009年4月より現職。
専攻:比較文学・英国地域研究
研究紹介
19世紀後半から1930年代までの英国地域研究、日英における黄禍論・ジャポニスム・旅行記の研究
メッセージ
イルカの前ヒレとパンダの手は、形は違いますが、同じ哺乳類の前足です。一方、イルカの前ヒレとマグロの前ヒレは、形は似ていますが、器官は違います。生物の授業で習ったかもしれませんが、前者を相同、後者を相似と呼びます、この二つは、十九世紀英国の比較解剖学者リチャード・オーウェンによって区別されました。比較文学は、いわば文学の相同と相似を研究する学問です。ある文学の受容と変貌を、ジャンルや言語それに時代を越境しながら跡づけるのが「相同」だとすれば、「相似」は、起源が異なる文学の共通点を指摘し、同時に相違点を生み出す文脈を明らかにすることになるでしょうか。いずれにせよ、月とすっぽんのように形の類似点だけで比較はできず、解剖にも似た綿密なテクスト分析が必要となります。オーウェンはいろいろな意味で進化論に否定的だったのですが、文学や文化の場合もまた進歩史観や本場主義が通用しません。では、そんな横断と精読が相乗効果をもたらす比較文学のためには具体的にどうすればよいのか、みなさんと一緒に探ってゆきたいと思います。
主要業績
Yellow Peril: Collection of British Novels 1895-1913, 7 volumes (Tokyo: Edition Synapse, 2007) ;"White Hope or Yellow Peril?: Bushido, Britain and the Raj" in David Wolff, et al. (eds.), The Russo-Japanese War in Global Perspective, v.2 (Leiden, Brill, 2007), 379-402;「茶屋の天使-英国世紀末のオペレッタ『ゲイシャ』(1896)とその歴史的文脈-」『ジャポニスム研究』23(2003), 30-50;"Germs, Body-politics and Yellow Peril: Relocation of Britishness in The Yellow Danger" Australasian Victorian Studies Journal, 9 (2003), 52-66 「東亜未来論-チャールズ・ピアソンの黄禍論とラフカディオ・ハーンにおけるその変容-」『比較文学』43 (2001), 75-89
概説・一般書
『国際日本学入門』(成文社, 2009)、『英文学にみる動物の象徴』(彩流社, 2009)、『女は変身する』(青弓社, 2008)、『ファミリー・トラブル』(明石書店, 2006)、『アメリカ1920年代』(金星堂, 2004)(すべて共著)

教授 清水康次

しみず やすつぐ
1954年生まれ。京都大学文学部(国語学国文学専攻)卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程(国語学国文学専攻)修了。博士(文学)(京都大学、1995)。大阪女子大学助手、同専任講師、同助教授、京都光華女子大学助教授、同教授を経て、2009年10月より現職。
専攻:日本近代文学、書誌出版文化研究
研究紹介
芥川龍之介の作品について、創作活動の最初から順に研究していきつつ、次第に、他の作家にも手を広げ、志賀直哉・夏目漱石・太宰治などの作品を取り上げて論じてきました。また、文学の書誌に関心を持ち、漱石の著作の書誌、芥川の著作の書誌をまとめ、より広く出版文化というものに関心が拡大していきました。近年、昭和期の作家に興味が移り始めており、さらに、文学と美術など、文学と外部との関係に目を向けるようになってきています。今は、明治大正期の文学について、考えてきたことをまとめながら、新たに、より幅広い視野で、昭和の文学とその周辺を見ていきたいと考えています。
メッセージ
研究を始めた頃、『芥川龍之介全集』の1冊と向かい合って、ノートに本文を少しずつ書き写してはコメントを加えて、作品をひとつずつ読んでいきました。全集の本文は、最善の本文として、更新されつつ、未来に受け継がれていくものです。それを相手に、読む術を身につけていきました。一方、いつ頃からか、作品が掲載された雑誌や、収録された本に強く惹かれるようになり、古びた大正期の縮刷本などを買い集めてきました。こちらの方は、時空を限定された本文ですが、生きている感じがあります。冷たく静かなテクストと、いろんな光の照り返しを帯びたテクストと、どちらが本当の文学なのでしょうか。その両方に惹かれつつ、矛盾の中に立ち続けることが、案外正解のように思うのです。広い視野といっても、鳥のような視点は期待できなくて、いくつもの場所を行きつ戻りつ、廻り続けるしかないように思います。矛盾や錯誤を恐れず、挑み続けたいと考えています。
主要業績
『芥川文学の方法と世界』(和泉書院、1994);『芥川龍之介全集』第1巻「注解」(岩波書店、1995);『漱石全集』第27巻「単行本書誌」(岩波書店、1997);『芥川龍之介全集』第24巻「単行本書誌」(岩波書店、1998);『芥川龍之介作品論集成』第4巻「舞踏会―開化期・現代物の世界―」(編著、翰林書房、1999);『日本文学と美術』(共著、和泉書院、2001);『二十世紀旗手・太宰治』(共著、2005、和泉書院);『谷崎潤一郎と京都』(共著、京都光華女子大学、2009)

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