共生文明論コース

交通手段やコミュニケーション手段の発展とともに、時間と空間の圧縮がすすみ、人々の接触が増大して、その共生が現代社会の大きな課題となりつつあります。本コースでは、人々の多彩な関係を、接触、交渉から衝突や妥協、住み分けなど複合的な関係の発展まで多角的に追跡し、そのメカニズムの形成を歴史的に解明します。またこれを通じて、人々の歴史意識や言語意識、文化観や民族観の形成と変動にもアプローチして、現代世界の理解と共生に貢献することを目指しています。

くわえて、大学での専門研究と歴史教育の実践との間に生じる問題を考察し、新たな研究課題を見いだすとともに、現場の高校教員などと連携して歴史教育の改善を検討しています。地域ごとに区分された既存の方法論を越えて、現代歴史学の方法と課題について幅広い知見をもつこと、これは共生文明論コースのもうひとつの柱と言ってもよいでしょう。

本コースの修了生は、ジャーナリズム・教職のほか国際的な活動をおこなう企業や公共団体などへの就職を考えています。

教員紹介

教授 小林茂

こばやし しげる
1948年名古屋市生れ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。文学修士(京都大学、1973)・博士(文学)(京都大学、2003)。東京都立大学助手、九州大学講師、同助教授、同教授、大阪大学文学部教授を経て、1999年4月より現職。1993年~1995年、外務省専門調査員として在ネパール日本大使館に出張。2003年より放送大学客員教授をつとめている。人文地理学会賞(2004)、日本国際地図学会特別賞(2010、ただし受賞団体「外邦図研究グループ」の代表として)、日本地理学会優秀賞(2010)。
専攻:人文地理学
研究紹介
琉球列島やネパール・ヒマラヤを素材に、人間と環境との関係について検討してきた。これが発展し、最近は天然痘や麻疹、マラリアのような伝染性の疾患と社会との関係に注目するとともに、東アジアの近代地図の作製過程にも関心をよせることとなった。両者を統合する枠組みはまだみつかっていないが、いずれでも関連する集団間に対立や共生が並行してみられ、一面的な理解をゆるさない。このそれぞれについてさらに探究が必要なことを感じている。
メッセージ
変変動する現代世界の背景には、長期的、多面的に眺めねば理解できない多くの基礎的問題がある。そうした基礎的問題に、ともにアプローチできることを期待する。
主要業績
『近代日本の地図作製とアジア太平洋地域:「外邦図」へのアプロー チ』(編著、大阪大学出版会、2009);Race and malaria in the geographies and ethnographies of the Himalayas : A new perspective from recent epidemiological studies, International Journal of South Asian Studies, 1(2008);『農耕・景観・災 害:琉球列島の環境史』(第一書房、2003);『太宰府市史、環境資 料編』(共編著、2001);『福岡平野の古環境と遺跡立地』(共編著、 九州大学出版会、1998)
概説・一般書
『改訂版 人文地理学』(共編著、放送大学教育振興会、2008)

教授 武田佐知子

たけだ さちこ
1948年東京生。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業、早稲田大学大学院文学研究科日本史学専攻修士課程修了、東京都立大学大学院人文科学研究科史学専攻博士課程修了。文学博士(東京都立大学、1985)。大阪外国語大学外国語学部助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。サントリー学芸賞思想歴史部門(1985)、濱田青陵賞(1995)、紫綬褒章(2003)。
専攻 日本古代史/服装史
研究紹介
私は一貫して、「着衣する身体」を研究の対象とし、着ている衣服が表象する人間の意志、性、力といった側面の、歴史と現在を見てきました。衣服の形や衣服形態の諸相を、社会構造や国際関係の分析の具として位置づけ、衣服を着用する人間相互の、社会的位置関係を考える作業をしています。具体的には当面、遣唐使が着て行った衣服や、古代の浴衣の復元、そして現代東アジア世界の民族衣装の激しい変化を、国家や民族とのかかわりで考えています。
メッセージ
ヒトはみーんな服を着ています。服を着ているのがヒトのしるしです。ヒトのあかしの衣服は、現代でさえ、周囲の環境によって規定されます。けっして自由に衣服が着られるわけではありません。どんな衣服を着るか、着なければならなかったかが、その時代の社会を知る鍵になるのです。そうした手法で、みんなで歴史を考えてみたいと思っています。
主要業績
『講座 天皇と王権を考える』9(共著、岩波書店、2003);『天神 祭―火と水の都市祭礼―』(共著、思文閣出版、2001);『アイデ ンティティ・周縁・媒介』(共編、吉川弘文館、2000);「民族衣 装のゆくえ―中国西南部少数民族の世界から―」『EX ORIENTE』 4(2000);『古代国家の形成と衣服制―袴と貫頭衣―』(吉川弘 文館、1984)
概説・一般書
『娘が語る母の昭和』(朝日新聞社、2000);『衣服で読み直す日本 史』(朝日新聞社、1998);『信仰の王権 聖徳太子―太子像をよ みとく―』(中央公論社、1993)

教授 江川溫

えがわ あつし
1950年生。京都大学大学院文学研究科博士課程史学専攻中退。大阪大学文学部助手、大阪大学教養部講師、同助教授、文学部助教授、同教授を経て、1998年4月より現職。
専攻:西欧中世史
研究紹介
11、12世紀のフランス封建社会は、大小の地域権力が分立しており、紛争は絶えませんでした。それにも拘わらず、大規模な戦乱が起こることはなく、経済活動はどんどん活発になっていきました。私はここには現代の国際社会がそうであるように、きわめて緩やかながら法秩序が意識されていたのだと考えています。その背景にはカロリング国家の伝統、キリスト教会が与える規範意識がありました。歴史研究として法秩序の意識をどんな形で可視化できるか、いつも考えています。他方で私の関心は、封建社会の支配層であった戦士階級の歴史、キリスト教と世俗社会の文化的関係にも延びています。
メッセージ
私は西欧文明の一時期の研究者に過ぎませんが、歴史学の根本は文化的な他者を理解すること、また他者を通じて自分を理解することと考えています。他者理解にはいろいろな手段があります。歴史研究では文献研究が中心ですが、現地を歩き、景観を見ることも重要です。地理研究や人類学研究ではフィールドワークの重要性はいうまでもありません。語学を鍛え、体を鍛えて頑張りましょう。
主要業績
『死の文化誌―心性・習俗・社会―』(共編著、昭和堂、2002);「〈神 の平和〉運動の軌跡が照らしだすもの―11、12世紀における平和 理念と紛争処理―」服部春彦・谷川稔編『フランス史からの問い』(山川出版社、2000);『岩波講座世界歴史8 ヨーロッパの成長』 (共編著、岩波書店、1998);『西欧中世史 中、下』(共編、ミネルヴァ書房、1995)
概説・一般書
『ヨーロッパの歴史』(編著、放送大学教育振興会、2005);近藤和彦編『西洋世界の歴史』山川出版社(共著、1999)

准教授 堤一昭

つつみ かずあき
1960年生。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程(東洋史学専攻)学修退学。文学修士(京都大学、1988)。大阪外国語大学外国語学部国際文化学科比較文化講座専任講師、同助教授、同准教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授。
専攻:東洋史学
研究紹介
13~14世紀の「モンゴル時代」の中国(いわゆる元朝)の歴史を専門にしています。この時代は最近急速に研究が進み、全ユーラシア規模での人・もの・文化の移動・交流が注目されています。おもに現在の中国地域で異文化接触のなか、どのような社会ができていったのかを研究しています。時代の特質を知るために重要となる中国石刻史料も研究の対象となります。また、広く日本・中国など東アジアにおける自己・相互のイメージの現在にいたるまでの歴史的変遷、「東洋史」という学問の成立やこれからの歴史教育を考える仕事にも取り組んでいきたいと思っています。
メッセージ
私自身は上記のような研究をしていますが、より広く日本を含むアジアの歴史について学びたい人を歓迎します。みなさんには、次のことを目指してもらいたいと思っています。まずひとつは地域・時代・学問分野ほかを越境することにより、自らの視点を相対化すること、もうひとつは自分自身の研究テーマをひたすら深く調べ考えることです。どちらからでも、分からない苦しい時間の連続の後に目から鱗が落ちて、なるほど歴史とは人間とは社会とはそうなのかと思えるようなすばらしい瞬間をぜひ体験してもらいたい。その体験を出発点にして現代世界のさまざまな事象を考えてもらいたいのです。
主要業績
「〈中国〉の自画像―その時間と空間を規定するもの―」『現代中国 地域研究の新たな視圏』(共著、世界思想社、2007);「石濱文庫 拓本資料調査の概要―2006年度前半まで―」『大阪外国語大学論集』35(2007);「大元ウルス高官任命命令文研究序説」『大阪外 国語大学論集』29(2003);「大元ウルス治下初期江南政治史」『東洋史研究』58-4(2000);「元朝江南行臺の成立」『東洋史研究』 54-4(1996)
概説・一般書
『歴史学のフロンティア―地域から問い直す国民国家史観』(共 著、大阪大学出版会、2008);『角川世界史辞典』(項目執筆、角川書店、2001)

准教授 井本恭子

いもと やすこ
1963年生。大阪外国語大学大学院外国語学研究科修士課程(イタリア語学専攻)修了。文学修士(大阪外国語大学、1990)。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科ヨーロッパIII講座助手、講師、同助教授、同准教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科准教授。
専攻:人類学
研究紹介
ヒトという生き物によって分節され、言語化される世界を読み解くこと、ヒトを規定するものをどこかでいつも考えながら、サルデーニャ島(イタリア)の習俗、信仰、伝承を研究してきました。それは同時にヨーロッパの自己意識を対象化することでもあります。「内なる他者」である島の人びとが概念化する世界、社会関係とのズレに解釈をあたえ、その構造をあぶりだすことが、私のこれまでの仕事です。最近は、内的多様性の進行にともない、さまざまな状況で表れる、「われわれ感覚」、「われわれ意識」といったヒトの共同性のありかたに関心をもっています。
メッセージ
多様な世界の探究は、ヒトの全体像をつねに意識しながら、細部にこだわることだと思います。具体的な事象の個別性をみてゆくことが、「文化の公分母」を模索する道を切り拓くことにもなるからです。差異化の進む世界に分け入る、雑食で、野太く、好奇心旺盛な人を求めています。フィールドと理論を往復しながら、自らの感覚と思考を鍛えませんか。
主要業績
「ex votoの謎―セディロの聖コンスタンティヌスに返礼する人びと―」『AULA NUOVAイタリアの言語と文化』6(2007);「エコツーリズムにみる〈地域文化の創造〉―サルデーニャ島の事例から―」『学術的観光コンテンツの開発に関する研究成果報告書』(2006);「幻想の植物誌―人間の木―」『饕餮』9(訳・解説、2001);「サルデーニャの村落とocru malu―ひとつの人類学的解釈―」『大阪外国語大学論集』21(1999)
概説・一般書
『女の性と生』嵯峨野書院(共著、1997)

准教授 伊川健二

いがわ けんじ
1974年東京生。2003年~06年日本学術振興会特別研究員(PD)、2008年~09年東京大学日本史学研究室研究員等を経て、2009年8月より現職。博士(文学)(2006年、東京大学)。日本歴史学会賞(2001年)
専攻:日本中世対外関係史
研究紹介
あるサイトで「世界から日本をみつめる歴史研究家」と紹介していただいたことがあります。その看板に追いついているか否かはわかりませんが、15~16世紀の日本を中心とした国際関係をいろいろと扱っています。この時期の日本は、明、朝鮮、琉球はいうまでもなく、ポルトガル、スペイン、さらにはインドネシアのパレンバンなど、対外的に開かれた地域でした。日本史ではありながら日本にはほとんど関係史料がなく、外国史料からその実態がわかる世界です。そこがこの領域の難しさでもあり、尽きない魅力です。
メッセージ
歴史学というのは、究極の異文化理解だと思っています。歴史が対象とする人々は、そのほとんどがすでに死んでしまっている人々だからです。外国学においては、書物から学ぶこともできますが、その国の人々と対話をすることもできる。双方向の交流で理解を深めることも可能です。ところが歴史学では、対象とする人々、たとえばフランシスコ・ザビエルとは対話ができない。そのなかにあって、自己満足に陥らず、どのようにより適確に時代を理解していくかが、この分野のもっとも重要な課題なのではないかと思います。
主要業績
『ウルバーノ・モンテ年代記』にみる天正遣欧使節と織豊期の日本 (1~2)『東京大学日本史学研究室紀要』13-14(2009-10)、 Alessandro Valignano S.I., uomo del Rinascimento, ponte tra Oriente e Occidente(Roma: Institutum Historicum Societatis Iesu, 2007, 共著)、『大航海時代の東アジア』吉川弘文館(2007)
概説・一般書
『日本・スペイン交流史』れんが書房新社(共著、2010近刊予定)、『伊奈のむかし』ぎょうせい(共著、2003)、『日本歴史大事典』小学館(項目執筆、2001)ほか

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