日本学(日本学講座)

これまで日本文化の研究では、日本の固有性や特異性がことさら探究されてきた。しかし、それは近代日本が西洋を自覚するプロセスのなかで“美しい日本”“伝統の日本”といった形で構築してきた想像の所産ではなかったろうか。日本という地域の歴史や文化、思想を孤立した特殊なもの、あるいは自明なものとみるのではなく、一国史・単一文化の枠を突破し、異質な文化との相互交流・摩擦のコンテクストを踏まえた比較や、フィールドワークに依拠して研究する視角が求められている。日本学研究方法論ゼミでは、多くの留学生たちとともに、互いの文化や民族、性を越境し横断する、開かれた多様なディスカッションの場となることをめざしている。

教員紹介

教授 川村邦光

かわむら くにみつ
1950年生。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学1984年、文学修士(東北大学)1978年。天理大学文学部助教授、同教授を経て、1997年10月現職。
専攻:民俗学/宗教学
研究紹介
これまでさまざまなテーマで文章を書いてきた。この頃では、自分でも収拾がつかなくなっているようだ。ともかく関心の赴くままにやってきたというところかもしれない。近代民衆文化史、近代のセクシュアリティ、巫俗研究、他界論、戦死者論といったものを、とりあえずあげることができる。現在では、死者と生者との関わりを問う弔い論、大本の出口なお・王仁三郎論、農本家の松田甚次郎論に取り組んでいる。
メッセージ
どうもこの頃、世の中がつまらなくなっている。どうしてなのか、世の中への関心が薄れているようだ。やや鬱的な状態なのだろうか。閉じ籠りがちにもなっている。こんな状態を突破するためには、旅に出るのが一番だろう。自由の境涯こそ、新たな構想を生み出すのだ。大学はひとつの居場所にすぎない。徒労をあえて顧みず、旺盛な好奇心としなやかな心身をもって、リアルな世界に旅立とう。
主要業績
『幻視する近代空間』青弓社(1990);『オトメの身体』紀伊國屋書店(1994);『セクシュアリティの近代』講談社(1996);『〈民俗の知〉の系譜』昭和堂(2000);『オトメの行方』紀伊國屋書店(2003);『戦死者のゆくえ』(編著)青弓社(2003);『ヒミコの系譜と祭祀』学生社(2005);『聖戦のイコノグラフィ』青弓社(2007)ほか
概説・一般書
『すぐわかる日本の宗教』(共著)東京美術(2000);『地獄めぐり』ちくま新書(2000);『私にとってオウムとは何だったか』(共著)ポプラ社(2005)

教授 杉原達

すぎはら とおる
1953年生。1975年京都大学経済学部卒業。1977年大阪市立大学大学院経済学研究科前期博士課程修了。博士(経済学)。1977-91年、関西大学経済学部助手、専任講師、助教授、教授を経て、1992年大阪大学文学部助教授、1997年同教授、1998年大阪大学大学院教授。
専攻:日本学/文化交流史
研究紹介
ドイツ・オリエント関係史研究から、日本・アジア関係史研究へと歩みを進めてきて約30年になる。最近では、在日朝鮮人史研究や中国人強制連行問題から、近現代日本の姿を見ようとしている。以前は社会構造史分析を中心にすえていたが、近年はそのような分析も大切にしながら、一方でその社会がおかれている世界的・同時代的な関連をみるとともに、他方で一人ひとりにとっての歴史の意義を問うようになってきた。日暮れて道遠し、の感はあるが、コツコツとやっていきたい。
メッセージ
日本というものを、自明なものとしてあらかじめ見定めてしまわないで、さまざまなレベルで亀裂線をもち、それらの依存と摩擦の中で成立してきたし、今もせめぎあっているという点を考えてみてほしい。そして、自分の「現場」をもちつつ、越境する知のありかたを、手さぐりをしながらじっくりと追求してほしいと願う。テーマは無限にあるだろう。自分が本当に探究したい課題をみつけること、そこにキラリと光る個性を出してください。
主要業績
『移民・難民・外国人労働者と多文化共生―日本とドイツ/歴史と現状』(有志舎、2009、共著)、『帝国への新たな視座―歴史研究の地平から』(青木書店、2005、共著)、『中国人強制連行』(岩波書店、2002、単著)、『越境する民―近代大阪の朝鮮人史研究』(新幹社、1998、単著)、『オリエントへの道―ドイツ帝国主義の社会史』(藤原書店、1990、単著)
概説・一般書
『岩波講座 アジア・太平洋戦争』全8巻(岩波書店、2005-06、共編著)、『日本社会と移民』(明石書店、1996、共編著)、『異文化の交流』(大阪大学出版会、1996、共著)、『歴史と啓蒙』(J.コッカ著、未來社、1994、共訳)、『ドイツ中間層の政治社会史』 (H.A.ヴィンクラー著、同文舘、1994、共訳)

教授 平田由美

ひらた ゆみ
1956年生。大阪外国語大学外国語学研究科修士課程日本語学専攻修了。博士(文学)(京都大学、2002)。京都大学人文科学研究所助手、大阪外国語大学助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:日本文学・文化研究/ジェンダー研究
研究紹介
言語・文体の変容、ジャンルの興七、読者層の拡大や新たなテクロノジーによるメディアの隆盛など、近代のエクリチュールは地殻変動ともいうべき大きな変化を経験した。そうした事態にあって、「日本文学」の「近代」とは何であったかを主題として、「前近代」と呼ばれる時代との断絶と接続のふたつの局面から、文学テクストの生成メカニズムを考察してきた。近年はテクストをとりまくコンテクスト、たとえば文学をめぐる言説や制度の政治性、文学ジャーナリズムやメディアの権力性をも含めた〝近代という問題〟を考えたいと思っている。
メッセージ
自分自身がその真っ只中で生きているせいで見えにくくなっている現実の中から、論じるべき問題の在りかやこんがらがっている箇所を見つけ出して丁寧に解きほぐしながら考えること、その作業を借り物ではないやり方で思考し手垢のついていないことばで伝えようとすること―すごくむずかしいけど、チャレンジングだと思わん?
主要業績
‘The Narrative apparatus of Modern Literature’(Michael Bourdaghs ed., Drifting Clouds of Language: Textuality, Linguistic Theory, and Literary Studies in Contemporary Japan, University of Michigan Press, 2010);『여성표현의 일본 근대사- <여류 작가>:의 탄생 전야-』(『女性表現の明治史:樋口 一葉以前』[岩波書店,1999]韓国語訳,Somyong Publishing, 2008);「《国=家の物語》を組み替える:「戦後文学」としての在 日朝鮮人文学」(西川祐子編『戦後という地政学』東京大学出版会, 2006);‘Fragmented Woman, Fragmented Narrative’(Naoki Sakai et al. eds., Deconstructing Nationality, Cornell University, 2005)
概説・一般書
『岩波女性学事典』(項目執筆,岩波書店,2002);『歴史学事典第9巻法と秩序』(項目執筆,弘文堂,2002);「自己表現という行為:読み書き語りの顛倒性」(講演記録,『女性学研究所年報』11号,2001);『ニュースの誕生:かわら版と新聞錦絵の情報世界』(図録解説,東京大学総合研究博物館,1999);「一筆まゐらせ候:新聞投書と近代日本語」(対談,『月刊みんぱく』19巻10号,1995);「女性の目でみた京の町・京の暮らし」(座談,『気球があがった:近代京都の一世紀』京都文化博物館,1998)

教授 冨山一郎

とみやま いちろう
1957年生。1989年京都大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。1989年-1997年まで神戸市外国語大学助教授、その後大阪大学大学院文学研究科助教授、同准教授を経て、2009年4月より現職。
専攻:歴史学・文化理論
研究紹介
研究分野は沖縄近現代史研究です。しかし研究とは、制度化された分野のマトリックスである前に、他者の言葉を最大限に尊重しながら自らの言葉をそこに重ねること、したがって、言葉が関係を作ることであり、また、他者を招き入れることであると同時に秘蔵していた自分を発見すること、したがって、密会の場を作ることではないでしょうか。分析的であることこそが生み出せる世界があると信じながら、こうした関係を生み出す言葉の手触りと押し隠された場を確保しつづける身体感覚を、大切にしたいと思っています。
メッセージ
私は「バスに乗り遅れるな」という言葉が大嫌いだ。近年とくにそうだ。流行にながされず、自己満足に陥らず、研究を進めることが大切だと思う。
主要業績
『近代日本と「沖縄人」』(日本経済評論社);『増補・戦場の記憶』 (日本経済評論社);『暴力の予感』(岩波書店);『ナショナリティの 脱構築』(共著、柏書房);『ファシズムの想像力』(共著、人文書 院);Formation of Colonial Modernity in East Asia(共著、 Duke University Press);Okinawan Diaspora(共著、Hawaii University Press);『〈複数文化〉のために』(共著、人文書院);『人 種概念の普遍性を問う』(共著、人文書院);Deconstructing Nationality(共著、Cornell University);『記憶が語りはじめる』 (編著、東京大学出版会);『ポスト・ユートピアの人類学』(共編著、人文書院)
概説・一般書
『植民者へ』(共著、松籟社);『日本史講座10戦後日本論』(共著、東京大学出版会);『日本の時代史18 琉球・沖縄史の世界』 (共著、吉川弘文館);『近代日本の文化史4 感性の近代』(共著、岩波書店);『<小林よしのり『台湾論』>を越えて』(共著、作品社);『カルチュラル・スタディーズとの対話』(共著、新曜社);『オセアニア・オリエンタリズム』(共著、世界思想社);『<複数文化>のために』(共著、人文書院);『日本社会と移民』(共著、明石書店);『新視点日本の歴史3巻』(共著、新人物往来社);『新琉球史近代・現代編』(共著、琉球新報社)

准教授 宇野田尚哉

うのだ しょうや
1967年生。1993年大阪大学大学院文学研究科博士前期課程修了,96年同後期課程単位取得退学。博士(文学)。2000年神戸大学国際文化学部講師,01年同助教授,07年同大学大学院国際文化学研究科准教授。2010年より現職。
専攻:日本思想史
研究紹介
近世・近代の日本思想史を専門に研究しています。もともとの研究テーマは荻生徂徠を中心とする18世紀日本の儒家思想ですが,近年は近現代の諸問題も扱っています。思想史を研究する場合,ある思想家がなにを考えていたのかを正確に理解することも重要ですが,その思想が社会のうちに投げ出されたときそれを受け止めた人々がその思想をどう生きたかを明らかにすることもまた重要です。私は,後者の側面に重点を置きながら,〈思想の社会史〉と特徴づけることのできるような研究を行っていきたいと考えています。
メッセージ
テキストをその歴史的背景と絡めあわせながら読み解くことにより,その時代とその時代を生きた人々とを総合的に描き出すような歴史叙述をしてみたいと思っていますが,一筋縄ではいきません。テキストに沈潜するのでも,テキストを歴史的背景に還元するのでもないような読みの水準を,文学や歴史の研究を志す方々といっしょに探っていければと思っています。
主要業績
『彦根城博物館叢書6 武家の生活と教養』(共著)彦根城博物館(2005);『身分的周縁と近世社会5 知識と学問をになう人びと』(共著)吉川弘文館(2007);『近世の宗教と社会3 民衆の〈知〉と宗教』(共著)吉川弘文館(2008年);『宗教から東アジアの近代を問う』(共著)ぺりかん社(2002);「成立期帝国日本の政治思想」『比較文明』19(2003);『復刻版ヂンダレ・カリオン』別冊(共著)不二出版(2008)ほか。
概説・一般書
『「在日」と50年代文化運動』(共著)人文書院(2010)ほか。

准教授 北原恵

きたはら めぐみ
1956年生。大阪大学経済学部卒業。同志社大学大学院文学研究科(美學及び芸術學)修了、東京大学大学院総合文化研究科博士課程(表象文化論)満期退学、学術博士(東京大学)。2001年甲南大学文学部助教授、2004年同教授、2008年より現職。
専攻:歴史学・文化理論
研究紹介
表象文化論、美術史、ジェンダー論。視覚表象の社会における機能や、視線が構築する権力関係の重層的な構造分析に関心があります。日常を取り巻くビジュアル情報―たとえば、お菓子のラベルから絵画にいたるまで―を、ジェンダーやセクシュアリティ、民族、人種、階級などの視点を中心にして読み解く作業のほか、最近は、戦争表象の研究に取り組んでいます。
メッセージ
芸術は、日常での当たり前の決まりごとを目に見える形にして疑問を起こさせる力を秘めていますが、同時に、世界のあちこちで続く戦争や疫病、貧困などの悲惨な状況は、文化がないから起きているのではなく、文化があるからこそ起きているという側面があります。自分自身の立つ根拠をも掘り崩すこわい作業を始めませんか。
主要業績
『アート・アクティヴィズム』『攪乱分子@境界』(インパクト出版会)、「正月新聞に見る<天皇ご一家>像の形成と表象」(『現代思想』2001年5月)、「消えた三枚の絵画―戦中/戦後の天皇の表象」(『戦争の政治学』倉沢愛子他編、岩波書店、2005年)、「米国プロパガンダ・ポスターにみるナショナリズムとジェンダー」(上村くにこ編『暴力の発生と連鎖』人文書院、2008年)、「《御前会議》の表象―『マッカーサー元帥レポート』と戦争画」(甲南大学文学部社会学科『甲南大学紀要・文学編:社会科学特集』151巻、2008年)、「元旦新聞にみる天皇一家像の形成」(『性の分割線』青弓社、2009年)ほか
概説・一般書
「フェミニズム・アート」「フェミニズム・アート批評」(『岩波女性学事典』2002年)、「ファッション広告」(『グローバル化を読み解く88のキーワード』西川長夫他編、平凡社、2003年)、「美術史を書き直す」(『女性とメディア』北九州市立男女共同参画センター“ムーブ”2005年)、「現代アートとジェンダー」(『ジェンダー・スタディーズ』牟田和恵編、大阪大学出版会、2009年)

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