日本語学(日本語学講座)

本専門分野では、現代日本語学、社会言語学、日本語教育学の各領域の研究を行っています。現代日本語学では、日本語の文法・語彙・音韻・表記等の記述的な研究、社会言語学では、日本語の多様性とそれに伴う言語問題の社会的な研究、日本語教育学では、日本語の学習と教育に関わる心理的・社会的要因の質的な研究を、それぞれ目標とし、全体として、日本語および日本社会の特質を解き明かそうと努めています。

いずれの領域においても、当初から日本人とともに外国人の大学院学生を研究室における当然の存在として導き入れてきました。留学生を含む学生たちが、日本語をめぐって熱心に討論している姿は研究室や教室でいつでも目にする光景ですが、このような対話を繰り返すうちに、いつのまにか対照言語学的な視点が芽生え、日本語を一つの個別言語として客観的に見ていこうとする姿勢が定着してきているようです。そういったグローバルな雰囲気のなかで日本語と日本語社会の特質を解き明かそうと努めていることが本専門分野の大きな特色の一つです。

教員紹介

教授 工藤真由美

くどう まゆみ
1949年生。東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(文学)(大阪大学、1999年)。横浜国立大学教育学部講師、同助教授を経て、1998年4月より現職。
専攻:現代日本語文法論、言語接触論
研究紹介
世界には5000~6000の諸言語があると言われていますが、その中で日本語はどのような特徴をもった言語であるのか、文法構造の問題を中心に研究しています。一口に日本語といっても、標準語のみならず諸方言もあり、文法構造は実に多様です。さらに、海外の日系・沖縄系移民社会では、言語の接触と混交によって、様々な日本語のバリエーションが生まれています。このような日本語のダイナミズムを複眼的、総合的に考えていきたいと思っています。
メッセージ
私の初めてのフィールドワークは復帰前の宮古島(沖縄)の小さな集落でした。多角的な観点から言語の多様性を見つめ直すことができるフィールドに飛び込んでいって、様々な言語文化的背景をもつ人々との交流を楽しみながら、自分を鍛えていける人に期待しています。
主要業績
『アスペクト・テンス体系とテクスト』ひつじ書房(1995年);「否定の表現」『日本語の文法2』岩波書店(2000年);『日本語のアスペクト・テンス・ムード体系−標準語研究を超えて−』(編著、ひつじ書房、2004年);『日本語形容詞の文法―標準語研究を超えて―』(編著、ひつじ書房、2007年);『ブラジル日系/沖縄系移民社会における言語接触』(共著、ひつじ書房、2009年)
概説・一般書
『児童生徒に対する日本語教育のための基本語彙調査』ひつじ書房(1999年);『複数の日本語』講談社(2008年)

教授 青木直子

あおき なおこ
1954年生。1983年、上智大学外国語学研究科言語学専攻博士前期課程修了。PhD(Trinity College Dublin, 2003)。産能短期大学助教授、 静岡大学教育学部助教授、大阪大学助教授を経て、2004年4月より現職。
専攻:第二言語教育学
研究紹介
私の研究のトピックは、第二言語学習における学習者オートノミー、ナラティブ型の教師教育の方法論、在日外国人への日本語学習支援の3つです。初めはそれぞれ別々に始めたことですが、最近は区別するのが難しくなってきました。在日外国人への学習支援の場で学習者オートノミーを育てる実践のできる日本語ボランティアを養成するために「語り」はどのような意味をもつか、というような具合にです。
メッセージ
言語教育も教師教育も、対象となる人々を全人的に理解しようとするところから始めなくてはいけません。言語教育や教師教育に関する研究も同じです。人をいくつかの属性に還元しなくては成り立たない実証主義的研究はこうした目的には向きません。客観的・中立的でなくても、普遍的結論が出せなくても、将来の予測・統制ができなくても、だからこそいい研究というものもあります。
主要業績
Mapping the terrain of learner autonomy: Learning environments, learning communities and identities. Tampere: Tampere University Press. 2009年(共同編集); Defending stories and sharing one: Towards a narrative understanding of teacher autonomy. In Pemberton, R., Toogood, S. & Barfield, A. (Eds.), Maintaining control: Autonomy and language learning (pp. 199-216). Hong Kong: Hong Kong University Press. 2009年;「教師オートノミー」春原憲一郎・横溝紳一郎編『日本語教師の成長と自己研修』(pp. 138-157)凡人社 2006年
概説・一般書
『日本語教育を学ぶ人のために』世界思想社 2001年 (共同編集)

教授 石井正彦

いしい まさひこ
1958年生。東北大学文学部卒、東北大学大学院文学研究科修了。博士(文学)(東北大学)。国立国語研究所研究員、同室長、大阪大学准教授を経て、2009年4月より現職。
専攻:日本語学/計量言語学
研究紹介
現代日本語の「言語使用」の研究を、コーパス言語学、計量言語学、批判的言語学、通時言語学などの立場から研究している。とくに、言語と非言語行動・パラ言語情報との関係を計量的に調査・分析するための「マルチメディア・コーパス」の開発、マス・メディアの言語使用におけるイデオロギー的側面(社会・文化的な意味)の研究、通時コーパスを用いた20世紀後半の日本語における言語変化の研究、探索的データ解析を用いた日本語研究法の開発などにとりくんでいる。
メッセージ
新聞で「沖縄の人々」はあっても「東京の人々」という言い方がほとんどないのはなぜか、歴史教科書で「たとえば」という単語が使われないのはなぜか、テレビ放送で「(私は)〜と思います」という発話が特定の立場の出演者に偏るのはなぜか。言語には、我々をとりまく社会の「ものの見方」がくみこまれており、言語を使うということは、知らず知らずのうちに、そうしたものの見方に従い、それを維持・強化することにもなる。無意識の言語使用に背後に潜む「イデオロギー」の暴露に意識的にとりくむことが必要だと思う。
主要業績
「テレビ放送のマルチメディア・コーパス─映像・音声を利用した計量的言語使用研究の可能性─」(『阪大日本語研究』21号2009、単著);「(小特集「国立国語研究所の60年」)語彙・計量研究」(『日本語科学』24号2008、単著);『探索的データ解析による日本語研究法の開発』(科研費報告書2007、単著);『現代日本語の複合語形成論』(ひつじ書房2007、単著);『語構成』(ひつじ書房1997、共編著);『テレビ放送の語彙調査I・II・III』(大日本図書1995・97・99、共著)
概説・一般書
『コーパス日本語学ガイドブック』(科研費報告書2007、共著);『ケーススタディ日本語の表現』(おうふう2005、共著);『日本語研究法〔古代語編〕』(おうふう1998、共著);『展望現代の日本語』(白帝社1996、共著);『ケーススタディ日本文法』(おうふう1987、共著)

教授 田野村忠温

たのむら ただはる
1958年生。京都大学大学院文学研究科博士後期課程学修退学(言語学専攻)。文学修士(京都大学、1984)。奈良大学文学部講師、大阪外国語大学外国語学部講師、同助教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:言語学・日本語学
研究紹介
現代日本語を中心として、人間の言語の文法・語彙・意味・音韻などの諸現象に見出される規則性やその変化の様子を分析・考察しています。また、現在は国立国語研究所を中心とする日本語コーパス構築計画(特定領域研究「日本語コーパス」、2006~2010年度)および同研究所の共同研究プロジェクト「コーパス日本語学の創成」(2009~2013年度)に参加し、電子資料の利用によって日本語研究をいかに深化・発展させられるかという課題にも取り組んでいます。
メッセージ
言語の研究にはその対象と方法の両面に関して無限の可能性があり得ます。対象面でも方法面でも、興味の範囲を始めから限定するのではなく、自由な意識で多様な可能性に向き合おうとする学生を歓迎します。広く学び、よく考える過程で、今まで取り立てて考えることもしなかった言語の側面に興味が芽生えることも多いはずです。
主要業績
『現代日本語の文法I―「のだ」の意味と用法―』(和泉書院、1990);「疑問文における肯定と否定」『国語学』第164集(1991);「辞と複合辞」『日本語学と言語学』(明治書院、2002);「コピュラ再考」『複合辞研究の現在』(和泉書院、2006);「複合辞の本性について」『言葉と認知のメカニズム』(ひつじ書房、2008);「大規模な電子資料に見る現代日本語の動態」『待兼山論叢』第42号文化動態論篇(2008);「コーパスからのコロケーション情報抽出」『阪大日本語研究』21(2009)
概説・一般書
『Perlプログラミング─テキストデータ処理の基礎─』(大阪外国語大学、2003);『コーパス日本語学ガイドブック』(服部匡・杉本武・石井正彦各氏との共著、特定領域研究「日本語コーパス」日本語学班、2007);R.グリシュマン著『計算言語学─コンピュータの自然言語理解─ 』(山梨正明氏との共訳、サイエンス社、1989)

教授 渋谷勝己

しぶや かつみ
1959年生。東京外国語大学外国語学研究科日本語学専攻修了、大阪大学大学院文学研究科日本学専攻中退。学術博士(大阪大学)。梅花女子大学講師、京都外国語大学助教授、大阪大学准教授等を経て、2009年4月より現職。
専攻:日本語学
研究紹介
一口に日本語といっても、そのなかには方言があり、古典語があり、また最近では外国人の話す日本語も加えられてきました。これまでの日本語研究では、このうち書きことばと共通語だけが脚光を浴びてきましたが、規則があるという点ではほかの日本語も同じです。文法面を中心にして、このような多様な日本語のなかにはそれぞれどのような規則があるのか、また、それらの規則は世界のさまざまな言語とくらべたとき、どのような特徴をもっているのか、といった問題を解明するのが私の研究です。
メッセージ
言語学という研究分野は、混沌として見える言語事象の裏にある規則や規則性を探り出し、そのような規則を生み出すにいたった人間の言語能力を明らかにしつつ発展してきました。ふだんあたりまえのように使い、また耳にしていることばの後ろには、見事な規則や規則性が横たわっています。どのようなことばであれ、そのことばのなかに、これまで見出されていない規則や規則性を発見したとき、大きな充足感を味わうことができます。いろいろなことばをじっくりと見極めてみたいという方を歓迎します。
主要業績
「日本語可能表現の諸相と発展」(『大阪大学文学部紀要』第33巻第1分冊(1993、単著);「文末詞『ケ』―三つの体系における対照研究―」『近代語研究第十集』(武蔵野書院1999、単著);「副詞エの意味」『国語語彙史の研究十九』(和泉書院2000、単著);『シリーズ方言学3方言文法』(岩波書店2006、共著);『音声言語研究のパラダイム』(和泉書院2007、共著);「記述文法から見る『方言文法全国地図』」(『日本語学』26-11、2007、単著);『シリーズ日本語史4日本語史のインタフェース』(岩波書店2008、共著)。
概説・一般書
『新・方言学を学ぶ人のために』(世界思想社1991、共著);『社会言語学』(おうふう1992、共著);『地域性からみた日本』(新曜社1996、共著);『展望現代の方言学』(白帝社1999、共著);『日本語学習者の文法習得』(大修館書店2001、共著)。

准教授 高木千恵

たかぎ ちえ
1974年生まれ、大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻修了、博士(文学)。神戸松蔭女子学院大学非常勤講師、京都光華女子大学非常勤講師、関西大学専任講師、同准教授を経て、2010年10月より現職。
専攻:日本語学
研究紹介
社会言語学を専門にしています。具体的には、異なる体系を持つ言語(方言)どうしの接触によって起こるダイナミックな言語変化に興味を持っています。これまでは、関西の若年層の話しことばに注目して、メディアによる標準語の影響を受けながらも独自性を保ち続ける地域語の姿を明らかにしてきました。地域社会に生きる人々が、標準語という絶対的権威をもつ言語変種と日常的に接触しながら自身のことばをどのように運用しているか、その実態を解明し、地域社会のことばの動向を追究したいと考えています。
メッセージ
社会言語学は、ことばと、それを操る人間とのかかわりに関心を寄せる学問分野です。わたしたちは決して、日本語の教科書に出てくるようなことばづかいだけで生きているわけではありません。相手に応じて、場面に応じて、ときには無意識のうちにことばを切換えています。その、とらえどころのない生きたことばたちと向き合いながら、ことばの使い手である人間を理解していくのが社会言語学だと思っています。みなさんが日常生活のなかで感じることばへの疑問の多くが、社会言語学のテーマになりうることと思います。
主要業績
『関西若年層の話しことばにみる言語変化の諸相』(『阪大日本語研究』別冊第2号、2006、単著);『最古の富山方言集―高岡新報掲載(1916~1917 年)「越中の方言」(武内七郎)―』(桂書房2009、共編);「関西若年層の用いる同意要求の文末形式クナイについて」(『日本語の研究』5-4、2009、単著);「標準語との接触による地域語の変容と話し手の意識の類型化―関西と奄美の事例をもとに―」(山口幸洋博士の古希をお祝いする会編『山口幸洋博士古希記念論文集 方言研究の前衛』桂書房、2008、単著)。
概説・一般書
「標準語との接触による地域語の変容」(『日本語学』29-14、2010、単著);「日系カナダ人の日本語」(『日本語学』29-6、2010、共著);「関西若年層の新しいことば」(『日本語学』28-14、2009、単著);「関西若年層にみる東京語の使用」(『言語』37-1、2008、単著);「各地方言からみる『方言文法全国地図』近畿方言―若年層―」(『日本語学』26-11、2007、単著);「関西」(真田信治・友定賢治編『地方別 方言語源辞典』東京堂出版、2007、単著)。

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