音楽学・演劇学(芸術学講座)
音楽学も演劇学もともに我が国の総合大学の中に位置づけられているという点で数少ない存在である。ともに音楽文化、演劇文化全般を広く扱い、いわゆる「クラシック」音楽や民族音楽から日本古典音楽、ポップ・ミュージックまで、また西欧演劇や日本古典演劇からミュージカルやバレエまで、それらを広く表演芸術(パフォーミング・アーツ)としてとらえて、音楽史演劇史的にはもちろん、人類学や社会学また美学や文学などの隣接諸科学との関係の中で研究を進めています。ここには多くの大学院生が所属しており、それぞれの専門領域の研究に熱心に取り組んでいます。専門領域や知的背景を異にする多くの院生たちは、日々の講義や演習を通して互いに刺激しあい、学会での口頭発表や論文執筆をする一方で、それぞれにコンサートや演劇上演など実際に関わる機会も少なくなく、研究の社会的広がりを常に念頭において活動しています。
写真:尼崎ピッコロシアターにおいて舞台機構見学
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教員紹介
教授 根岸一美
ねぎし かずみ
1946年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。文学修士。大阪音楽大学専任講師、大阪教育大学准教授、同教授を経て現職。
専攻:音楽学 |
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- 研究紹介
- アントン・ブルックナー(1824?1896)を中心に、19世紀のドイツ・オーストリア音楽の歴史と美学について研究しています。最近ではブルックナーの作品を日本で初めて指揮したオーストリア人音楽家、ヨーゼフ・ラスカ(1886?1964)について、演奏・教育活動と音楽作品の面から調査・研究を進めています。併せて細々とですが音楽批評活動を専門紙等で行っています。
- メッセージ
- 音楽という生きた現象を扱う研究は、それを実際に営む人間の活動についての研究と不可分に結びついています。その意味で、音楽家たちとの協力関係をはじめ、さまざまな関連分野の人々との関わりのなかで学問を発展させることが大切です。しかし音楽学を学んだ人々が、社会の多くの場面で活躍できる状況からは、まだ遠いと言わざるをえません。私としては事態の改善にむけて、さらなる努力を続けていかねば、と考えています。
- 主要業績
- 共編著『ブルックナー/マーラー事典』(東京:東京書籍、1993);論文「ヨーゼフ・ラスカ(1886?1964)と宝塚交響楽団」(『待兼山論叢』第32号美学篇)
- 概説・一般書
- 共著『西洋音楽の歴史』(東京:東京書籍、1996);共編著『音楽学を学ぶ人のために』(京都:世界思想社、2004)
教授 天野文雄
あまの ふみお
1946年生。国学院大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。上田女子短期大学准教授、大阪大学文学部准教授准教授を経て、1996年から現職。
専攻:能楽研究 |
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- 研究紹介
- 700年の歴史を有する能楽(能と狂言)についてのあらゆることがら─能楽史の全時代にわたる歴史的研究、作品研究、役者研究、作者研究、演出研究など─に関心があるが、現在はとりわけ世阿弥時代の能と能役者をめぐる環境の解明に力を注いでいる。
- メッセージ
- 能楽は先年ユネスコから世界無形遺産に指定され、公演頻度も愛好者の数もおどろくほど多いが(月に平均130公演ほど)、能楽の研究者はせいぜい100人くらいしかいない。理由の一つは、能楽を研究教育の対象にしている大学が日本ではきわめて少ないことにある。その数少ない大学のひとつが大阪大学であるが、世界が注目しているこの価値ある遺産の研究をになう人材が、この大阪大学から一人でも多く生まれることを願っている。
- 主要業績
- 『岩波講座能・狂言1(能楽の歴史)』(表章氏との共著)1987年、岩波書店;『翁猿楽研究』1995年、和泉書院(第18回観世寿夫記念法政大学能楽賞)。
- 概説・一般書
- 『能に憑かれた権力者─秀吉能楽愛好記』(1997年、講談社選書);『現代能楽講義?能と狂言の魅力と歴史についての十講?』2004年、大阪大学出版会。
教授 永田靖
ながた やすし
1957年生。1981年上智大学外国語学部ロシア語学科年卒業,1988年明治大学大学院文学研究科演劇学専攻博士課程単位取得退学。文学修士。日本学術振興会特別研究員、明治大学人文科学研究所客員研究員、鳥取女子短期大学准教授を経て、1996年から現職。
専攻:演劇学 |
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- 研究紹介
- 現代の演劇理論を土台にして、20世紀におけるモダン・シアターの展開過程を歴史的理論的に究明しています。とりわけ、ヨーロッパの近代演劇とロシア、日本との間の演劇的な接触現象に興味があり、現在は、ロシアのモダニズム演劇におけるアジア的様態とロシアにおける朝鮮系演劇の活動とその作品などを対象に研究しています。他方、パフォーマンス・スタディーズとドラマ研究の統合にも関心があり、演劇理論の現代的展開にも強い関心をもっています。
- メッセージ
- 世界中の演劇の遺産は多大なものがありますが、残念ながらそれらを鑑賞することは、例えば絵画や文学のようにはできないのが、演劇研究の面白いところです。現在上演されている演劇も、上演が終われば基本的には過去のものになってしまいます。そんな過去の中にしかない演劇という把え難い芸術に、研究を通して未来の人間の姿を読み取ることは、知的な興奮を覚えることだと思います。
- 主要業績
- 『ヨーロッパ演劇の変貌―ゲオルグII世からストレーレルへ』(共著; 山内登美雄編 明治大学人文科学研究所叢書 白凰社 平成 6 年 8 月);『演劇論の現在』(共著; 西洋比較演劇研究会編 白凰社 平成11年 5月);『アヴァンギャルドの世紀』(共著; 宇佐美斉編 京都大学人文科学研究所研究報告 京都大学学術出版会 平成 13 年 12 月); Theatre and Democracy, coauthor, Rawat Pub. 2008;『日本の芸術論』(共著、ミネルヴァ書房、平成12年4月);『20世紀の戯曲Ⅲ』(共著、社会評論社、平成17年6月)
- 概説・一般書
- (翻訳) 『アンドレイ・タルコフスキー:映像の探究』P・グリーン著 国文社 平成6年12月; (共訳)『セルゲイ・パラジャーノフ』国文社 平成10年8月 その他。
教授 市川明
いちかわ あきら
1948年生。大阪外国語大学外国語学部ドイツ語学科卒業。1976年、大阪外国語大学外国語学研究科修士課程ドイツ語学専攻修了。文学修士。近畿大学教養部助教、同講師、同准教授、大阪外国語大学准教授、同教授を経て、2007年10月より大阪大学大学院文学研究科教授。
専攻:ドイツ文学/ドイツ演劇
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- 研究紹介
- ブレヒトとハイナー・ミュラーを中心にドイツ現代演劇を研究してきました。最近では「ブレヒトと笑い」「ブレヒトと音楽」といったテーマでドイツの研究者と共同研究を進めています。演劇作品を上演との関わりのなかで動態的に研究する重要性を感じています。送り手(作者)と受け手(観客)の間に演出家や俳優が存在することによって戯曲は変容していきます。こうした拡散・ズレを総合的に考察することで、テクストの静態的・内在的解釈に厚みと変化をもたらすことが研究の力点です。そこから戯曲(ドラマ)と演劇(シアター)の相克も見えてくるはずです。日本演劇学会や阪神ドイツ文学会の役員を務める傍ら、演劇創造集団ブレヒト・ケラーの代表や国際演劇評論家協会の関西支部長として、翻訳・上演や演劇雑誌の編集にも携わっています。演劇の理論と実践を結ぶ、そんな研究をこれからも続けていきたいと思っています。
- メッセージ
- 演劇作品は上演・パフォーマンスにより、音楽や美術など様々な芸術を束ねながら拡散・増殖し、静態的な文学テクストに回帰していきます。演劇創造の現場に入って、演劇を動かしてみませんか。大学の演習だけでなく、演劇実習(演技実習でも観劇実習でもない)にも参加して理論面から上演をサポートしてください。劇場の制作者や劇団の創造者、新聞社や出版社の文化担当者など、演劇の魅力を伝える人を養成したいと思っています。
- 主要業績
- Brecht-Handbuch Bd. 2, Gedichte(共同執筆,Verlag Metzler,2001);『ドイツの笑い・日本の笑い―東西の舞台を比較する―』(共著、松本工房、 2003);”Befremdendes Lachen”(共著、IUDICIUM Verlag、2005);『世紀を超えるブレヒト』(編著、郁文堂、2005);『抒情詩への回帰――歌としてのブレヒト詩』(編著、花伝社、2007)
- 概説・一般書
- 『ゲルマーニア ベルリンの死――ハイナー・ミュラー戯曲集』(共訳,早稲田大学出版部,1991);「ブレヒトからミュラーへ」(『世界地域学への招待』嵯峨野書院,1998);ギュンター・グラス『はてしなき荒野』(共訳,大月書店,1999);フォルカー・ブラウン『本当の望み』(共訳,三修社,2002);『ドイツ語ステップアップ』(共著,郁文堂,2006);「エルンスト・バルラハの演劇作品」(『エルンスト・バルラハ』,朝日新聞社,2006)
准教授 伊東信宏
いとう のぶひろ
1960年京都生れ。大阪大学文学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。文学修士。リスト音楽院、ハンガリー科学アカデミー音楽学研究所などに留学。1993年より大阪教育大学准教授。2004年4月より現職。 |
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- 研究紹介
- 大学院時代からのテーマは、20世紀ハンガリーの作曲家、バルトークに関する研究です。彼の作品の分析的研究から始めて、その資料批判的研究なども行ってきました。同時に、彼自身が東欧の民俗音楽を熱心に収集したことに導かれ、ハンガリーやルーマニアの民俗音楽、大衆音楽についても調査しています。また、中・東欧の社会を反映したオペレッタの社会史的研究や、ハイドンの作品研究 (ハイドンは長くハンガリーの領主に仕えていました) なども行っています。
- メッセージ
- 博士課程まで備えた大学院の中で、音楽学を学べる場として、本学大学院は今でも数少ないものの一つです。音楽学というのは、とても魅力的で、同時に非常に要求の多い学問だと思います。端的に言って、対象とする文化の言葉を学ばねばならないのは当然として、それ以外に、まずその文化の音楽実践を習得せねばなりませんし(楽器を演奏するとか、特殊な発声で歌うとか)、その記譜法やそれに相応しい分析のやり方にも通暁せねばなりません。音楽を含む「音の文化」は、そういう苦労をしてでも取り組んでみる価値と魅力を持っています。
- 主要業績
- 著書『バルトーク』(中公新書、1997年、吉田秀和賞受賞)。著書『ハイドンのエステルハージ・ソナタを読む』(春秋社、2003年)。共訳書B.バルトーク著『ハンガリー民謡』(間宮芳生と共訳、全音楽譜、1995年)。共訳書J.カールパーティ著『バルトークの室内楽曲』(江原望と共訳、法政大学出版局、1998年)。論文「シャガールのヌーシュ叔父さんはどんなヴァイオリンを弾いたか」(『ExMusica』第4号、2001年)。論文「民族の音楽/音楽の民族:コダーイ、クンデラ、そしてモルドヴァのファンファーラ」(大津留厚編『近代ヨーロッパの探究:民族』、ミネルヴァ書房、2003年)。
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