臨床哲学(哲学講座)

〈臨床哲学〉は、哲学講座倫理学研究室を母胎として設置された専門分野です。当分野 では、欧米および近代日本の倫理思想、道徳理論や現代の社会哲学・文化理論を精密に解 読・批評するとともに、そこに表現されている問いや概念を社会の具体的なコンテクスト に再び置き直して問うこと、また、社会のさまざまな場所で潜在的に問題となっているこ とがらを、社会のなかで現に生きている人たちとの議論を通じて掘り起こし、問いや問題 として定式化すること、に取り組んでいます。

当分野では“共同研究”というスタイルを重視します。研究者が孤独に自分だけの知的 好奇心を満たすだけに終わらず、例えばケア、医療、介護、教育、科学技術、セクシュア リティなどについて、実際に社会でそれらに関わる人たちとの議論をおこなうなかで「何 が問題であるのか」を確定し、研究プランを作り、それを遂行することを重視します。

教員紹介

教授 中岡成文

なかおか なりふみ
1950年生。京都大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位修得退学。文学修士。福岡女子大学専任講師などを経て1996年9月、大阪大 学教授。医学系研究科「医の倫理学」教授を兼任。2005年から2年間、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター長。
専攻:倫理学/臨床哲学
研究紹介
ヘーゲル弁証法、解釈学、ハーバーマス、システム論などの西洋思想のほか、京都学派(西田幾多郎、田辺元、三木清)の哲学、1930年代思想(日欧米)にも関心を持つ。1990年代後半からは鷲田教授とともに臨床哲学のプロジェクトを充実させることに力を注いでおり、とくに医療・看護・介護関係の社会人とつきあったり、哲学カフェにかかわったりしている。「医の倫理学」やコミュニケーションデザイン・センターにかかわった経験から、「ほんとうの内容をもったコミュニケーションを促進するスキル」を重視したい。
メッセージ
「動きながら考える」を標榜しているが、私自身もともと実践的なタイプだったわけではない。本を読むことが好きであってもちろんいい。ただ、エネルギーをそれだけに限定せず、現場からの風に敏感に反応する元気と責任感のある若者に会いたい。他方、勉強し、研究したことがそのまま仕事に結びつきにくい現状には心を痛めている。しかし、ともかくチャレンジしなければ、道は開けない。
主要業績
「否定性と規範―ヘーゲル哲学における実践的なもの」『思想』第684号、1981年6月;「意味と主体のポジシオン」『理想』第638号,1988年4月;「コミュニケーションの戦略」(現代哲学の冒険14『浮遊する意味』)岩波書店,1990年6月;「〈境界〉の制作―30年代思想への接近」『思想』第882号,1997年12月;「ケアする欲求、欲求するケア―臨床哲学のために」,『メタフュシカ』第30号、大阪大学大学院文学研究科哲学講座,1999年12月
概説・一般書
『臨床的理性批判』岩波書店,2001年10月;『私と出会うための西田幾多郎』出窓社,1999年10月;『ハーバーマス』講談社,1996年12月;『知のパラドックス』岩波書店,1997年1月(共編著);『西洋哲学史【近代編】』ミネルヴァ書房,1995年4月(共編著);『システムと共同性』昭和堂,1994年11月(共編著)

教授 浜渦 辰二

はまうず しんじ
1952年生。1984年、九州大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位取得退学。文学博士(九州大学)。1989年、九州大学文学部助手。1991年、静岡大学人文学部助教授。1996年、同教授。2008年4月より現職。
専攻:哲学/倫理学/臨床哲学
研究紹介
もともと、現象学の創設者である哲学者フッサールを中心に、その周辺の現象学、哲学的人間学、解釈学などの現代ヨーロッパ哲学のなかで、間主観性の問題、自己と他者の問題、ケアの問題などを考えて来ました。そうした専門の研究をベースにしながら、現象学との関わりのなかで精神医学や看護学にも関心を持ち、現代社会における「いのちとこころのケアに関わる臨床哲学」という構想を持ちながら、この数年、「ケアの人間学」「対人臨床の倫理と法」「応用現象学」「間文化現象学」といった共同研究に携わっています。
メッセージ
私の研究遍歴を振り返って見ると、臨床哲学の基礎体力を養う「哲学の現場」で修行を積み、「越境する知」としての臨床哲学から「ひとごとではない知」としての臨床哲学を経て、臨床哲学のヴァリアントとしての臨床人間学から臨床哲学のフィールドとしての「ケアの人間学」へと展開し、現在は、「ひととひとの間に関する学」である倫理学から「いま、臨床は哲学を求め、哲学は臨床を求めている」と考える臨床哲学へと繋げていくことを考えています。どこかで皆さんの研究の軌跡と出逢うことを楽しみにしています。
主要業績
『フッサール間主観性の現象学』創文社、1995年;「生と死をケアすること」日本哲学会編『哲學』No.58、2007年;Schutz and Edmund Husserl,in:Alfred Schutz and his intellectual partners,UVK,2009年;「ナラティヴとパースペクティヴ」(木村敏・坂部恵(監修)『〈かたり〉と〈作り〉臨床哲学の諸相』所収)2009年
概説・一般書
『哲学するために』北樹出版、1991年(共著);木田元ほか編『現象学事典』弘文堂、1994年(項目執筆);廣松渉ほか編『哲学・思想事典』岩波書店、1998年(項目執筆);エトムント・フッサール『デカルト的省察』岩波文庫、2001年(翻訳);『〈ケアの人間学〉入門』知泉書館、2005年(編著)

准教授 本間直樹

ほんま なおき
1970年生。大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学修士(大阪大学)。大阪大学大学院文学研究科哲学講座助手、同講師を経て、2005年4月に大阪大学コミュニケーションデザイン・センター専任講師に着任し、文学研究科を兼任。2006年4月より現職。
専攻:哲学/倫理学/臨床哲学
研究紹介
現象学、精神分析、システム理論、フランス現代哲学などの20世紀の西洋思想の研究を軸に、コミュニケーション、社会、意識、身体、セクシュアリティなどについての理論的探究を行う。臨床哲学の活動としては、具体性に向かう哲学的思考の可能性を探究している。また、哲学的な対話法を学ぶワークショップや「こどもの哲学」などの実践に取り組んでいる。
メッセージ
大学に対する社会からのニーズが変化している現在、もはや大学研究者も従来の研究スタイルに固執しているわけにはいかなくなった。状況に十分対応していくために臨機応変さや柔軟さが求められる一方、いざ動こうというときにはやはり語学力や基礎学力が物を言う。臨床哲学を志望する皆さんは、ぜひ入学前に基礎体力をつけておいてください。
主要業績
『行為/モラルの哲学』(岩波講座哲学6)岩波書店、2008年(共著);『応用倫理学講義1生命』岩波書店、2004年(共著);「コミュニケイションと倫理学」日本倫理学会編『倫理学年報』第48集、1999年;「オートポイエーシスと『身体』の問題」現象学年報15、1999年
概説・一般書
『ドキュメント臨床哲学』大阪大学出版会、2010年(共編著)

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