家族とは何か、あるいは何が家族を家族たらしめる要件なのかをめぐっては、古くから歴史学や人類学、社会学など、それぞれの領域で多くの研究と議論が重ねられてきました。その中で少なくともこの20年ばかりに関して見れば、〈近代家族〉という概念ほど大きなインパクトを持ち、かつ広範に言及されてきた家族論は、他になかったと言えるでしょう。 社会史や歴史人口学の中から立ち上げられた〈近代家族〉という概念は、私たちが「家族」として思い浮かべる家族は近代社会固有の装置にすぎないと暴露することで家族に歴史性を付与するとともに、フェミニズムと交錯することによって、夫婦・親子の愛の空間であるはずの家族にはらまれた抑圧や権力関係の分析をも可能にしてきました。 では、非婚化や超少子化が進行し、「家族の崩壊」が嘆かれる一方で、代理出産や精子・卵子の供与、同性カップルの結婚や子育てのように、家族形成における選択可能性が増大しつつあるようにも見える現在、異性愛や性別役割規範に基づいた〈近代家族〉はもはや絶滅への道をたどっていると考えて良いのでしょうか。それとも微調整をくり返しながら、ポスト近代に適合的な新しいヴァージョンへと変容しつつあるのでしょうか。 本研究会では、日本への近代家族論の紹介者であり、〈近代家族〉定義論争の一方の主役でもある落合恵美子さんと、「パラサイト・シングル」の名付け親であり、斬新な家族論で知られる山田昌弘さんをお招きし、いま、家族の現在をとらえるうえで〈近代家族〉論はどこまで有効なのか、あるいはどのような新たな分析枠組みが必要なのかという観点から、縦横に論じていただこうと考えました。コメンテーターの一人、牟田和恵さんも、近代家族の歴史的形成に関する研究で知られており、刺激的な議論の展開が期待されます。多くの方々のご参加をお待ちしています。 |