更級日記でずっと気になっている言葉が有ります。それは「れうかい」です。 あか月よふかくいでて、えとまらねば、ならざかのこなたなる家をたづね てやどりぬ。これも、いみじげなるこいゑ也。「こゝはけしきある所なめ り。ゆめいぬな。れうがいのことあらむに、あなかしこ、をびえさはがせ 給な。いきもせでふさせ給へ」といふをきくにも、いといみじうわびしく おそろしうて、夜をあかすほど、ちとせをすぐす心地す。からうじてあけ たつほどに、「これはぬす人の家也、あるじの女、けしきある事をしてな むありける」などいふ。 諸注の説くような「慮外・料外」ではあるまいと思われます。だとしたら、クヮ とカの混同になります。「れうかい」で適当な語は無いのでしょうか。小生、実 は「れんがい・れんかい」の可能性も有るのではないかと見当を付けているので す。拙稿「唐音語存疑」に書いたように、「判官はうぐゎん」になるような原理、 ガ行音に引かれて「ん」が「う」に変るのです。ところがあまりぴったりくる言 葉が無いのですよね。「廉介」では意味が通じませんかねえ。 「冷静な心があるだろうから、決して脅え騒いでは行けない。」?