アデレイドはオーストラリアで5番目に大きい都市である。アデレイドという地名は、イギリス国王ウィリアム4世の妃の名前に由来する。この地に初めて上陸したと言われるヨーロッパ人は、コレット・ベーカーCollet Barkerであり、1831年のことであった。それ以前にアデレイドに住んでいたのは、アボリジナルのガーナKaurnaの人々であった。1836年にウィリアム・ライトWilliam Lightによってこの場所が首府に選ばれ、測量され、都市計画が行われた。ノース・アデレイドも彼の設計によるものである。

　1837年、植民地総督ジョン・ハインドマーシュJohn Hindmarshがここに移動し、地所の割り当てが始まった。1838年に南オーストラリア最初の教会であるホーリー・トリニティー・アングリカン教会の建設が開始された。この教会はその後、1844-45年と1888年に拡張された。また1838年には植民地最初の学校が作られた。この年にケンジントンが分割された。1839年に総督官邸の建設が始まったが、その後20世紀に至るまで、何度も拡張工事が行われた。また同年、アデレイドとポート・アデレイドを結ぶ幹線道路が建設された。

　1840年8月にオーストラリア初の地方自治体が創設された。1840年代は、ノース・アデレイドの開発が始まった時期であり、1850年代から1880年代にかけてシティでの建物の建設が相次いだ。1840年にはクェーカー教徒の集会場と、E.ソロモンの設計によるクィーンズ・シアターが建設された。クィーンズ・シアターは1842年から46年にかけて最高裁判所として使用されたが、その後、ロイヤル・ヴィクトリア・シアターとなった。1841年にはマウント・バーカーへと続く有料道路が建設された。これは南オーストラリアで唯一の有料道路であった。40年代初め植民地は経済危機に直面したが、1842年のカパンダKapunda、1845年のバラBurraにおける銅の発見によって救われた。

　1855年、ポート・アデレイドがタウンの宣言を行い、翌年にはアデレイドとポート・アデレイドを結ぶ鉄道と電信線が開通した。1857年には、アデレイドへの水供給を改善するためにトレンズ・ダムと水道の建設が行われた。1866年にはタウン・ホールが、1867-68年には最高裁判所が、1867-72年には郵便局がそれぞれ建設された。1873年にはグレネレグGlenelgへの郊外鉄道が開通し、1878年には馬による軌道鉄道が開通した。また同年、トレンズTorrens川にアルバード・ブリッジが架けられた。1878-80年、現実離れしていたが、ロシアの侵攻を防ぐ目的でグランヴィル砦がセマフォアSemaphoreに設けられた。

　1881-84年の干ばつで、羊毛や穀物、銅の価格低下などのダメージを南オーストラリアは受けた。他方、町の開発はますます進み、1874年にはアデレイド大学が開学した（正規の承認は1881年）。この大学は当初から男性だけではなく女性の入学も許可していた。1883-89年には植民地議会議事堂が建設された。1855年築の旧議事堂は憲法博物館となっている。1890年には「アフガン人」の支援によるモスクが建設された。彼らはダーウィンまで続く大陸横断電信線建設において、ラクダによる輸送を担当した。「ガン」という特急の名は彼らに由来する。1886年からは女性に選挙権を与える運動が始まり、1894年にはニュージーランドに続いて世界で2番目に女性に選挙権が与えられた。1900年、南オーストラリア・アート・ギャラリーの本館が完成し、また電気が利用できるようになった。

　1901年、ポート・アデレイドがシティーの宣言を行った。1906年には市軌道鉄道会社が設立され、1909年には初めて市電が登場した。1910-14年と1921-29年の時期に住宅建設ブームとそれに伴う郊外への拡大が起こった。1924年には南オーストラリアで最初のラジオ局が開局した。1930年代の不況時、トレンズ川の周囲に住む失業者たちは、政府に対する反対行進を行った。1949年にポート・アデレイド拡張計画が発表され、1950年代から郊外への拡大が急速に起こった。1954年にマリー川のマナムMannumからウォーター・パイプラインが建設され、翌年にはウェスト・ビーチに現在のアデレイド空港がオープンした。1960年にはアデレイド・フェスティバルが初めて開催された。1963年には市街地の南の端にあたるポート・スタンバクPort Stanvacに石油精製施設が建設された。1972年、フェスティバル・シアターがオープンした。ヴィクトリア広場と、ノース・アデレイド、ポート・アデレイドには、景観保護地域がある。1985年からはフォーミュラ１のグランプリが開催されるようになったが、ヴィクトリア州に移動した。

　藤岡真樹0902