植民地の最も初期の芸術作品は、調査の記録である。その作品は芸術家というよりも挿絵の作家の作品であった。この形態はニューサウスウェールズでの植民に前後する科学調査に随行した挿絵の作家によって生み出され、自由植民が増加する1820年代にさらに強化された。ゴールドラッシュにより生み出された金は、オーストラリアの新たなイメージとともに、芸術への新たなパトロンを生み出し、多くの芸術家が育つようになる。1880年代には、オーストラリアの印象主義が成長し、ナショナリズムと結合した。その中心となったのが、ハイデルバーク学派である。

　ヨーロッパのモダニストの動きは、オーストラリアにはあまり浸透しなかった。概して、オーストラリアの芸術はモダニズムを回避し、むしろハイデルバーク学派やイギリスでの最も保守的な傾向を反映していたのである。オーストラリアがポスト印象主義のトレンドに同調し、表現主義の形態を模索しはじめたのは、1930年代後半のことである。そこではセザンヌの影響が大きかった。いくつかのファクターがこの時期の新たな芸術の傾向に貢献しているが、その中にはオーストラリア芸術アカデミーの設立も含まれる。

　1940年代にはオーストラリア芸術は多様化し、シュールレアリスムの動きが活発になった。同時に景観における印象主義の影響力が、表現主義の攻撃にさらされるようになる。1950年代には抽象表現主義があらわれ、1960年代までにオーストラリアの芸術は、モダニスト形態の主流の中に、自己を見出すようになった。

　松田真00