1941年太平洋戦争が勃発した。その時ヨーロッパと太平洋の2つの主な戦線における攻撃の優先権に関する決定を、連合軍はなさねばならなかった。イギリスとアメリカは、1941年の真珠湾攻撃後すぐに開かれたワシントン会議でビート・ヒトラー・ファースト計画の遂行に同意した。このことはヨーロッパの戦況が改善され、太平洋での軍備が整うまで、日本への反撃を遅らせることを意味していた。

　1943年の一連の会議で、この戦略は再度確認されたが、これはオーストラリアと主要連合国の戦争遂行に関する対立の背景となった。この決定を、列強がオーストラリア政府に伝えなかった事により、状況は悪化した。当時のオーストラリア外務大臣エヴァットの攻撃的な外交は、一面でオーストラリアがこのような主要な決定から除外されていたことに起因していた。日本の勢力拡大に対するオーストラリアの恐怖は、重要な戦争会議から除外されることでより高まり、オーストラリアは軍隊をヨーロッパ方面から撤退させ、本国周辺に軍事力を集結させた。

　同時にオーストラリア政府は、戦略に関する矛盾に直面していた。防衛についてはアメリカの保護に依存していたので、ビート・ヒトラー・ファースト計画を公的に否認すれば、オーストラリアを危険にさらす恐れがあった。しかし、選挙民は自国の安全を最も重大だと感じており、その期待を裏切ることもできなかった。したがって政府は、同盟国とより注意深い取引をしなければならなかった。1943年に太平洋での反撃が本格的に開始されるまでは、ヨーロッパにおける反攻を優先するという決定に一致した政策が一般的にとられた。

　見国祐也00