公的諸問題に関するカトリックの主張を表明するために、1913年に活動を始めたカトリック連合Catholic Federationの政治部局として、民主党は1919年に設立された。しかし、その活動期間は長くはなかった。民主党の設立には、第1次世界大戦以降の全般的な政治に対する不信や、1916年のオーストラリア労働党の社会主義的宣言によって、カトリック内部に生じた緊張関係を反映したものであった。また、カトリックが一体として投票すれば、小政党であっても、2大政党の勢力バランスを左右することで、大きな影響力を行使できるという、カトリック内部にあった伝統的な主張を具体化したものでもあった。

　新しく比例代表制が導入され、それに助長される形で、民主党は1920年のニューサウスウェールズにおける選挙に9人の候補者を送り出した。州政府によるカトリック学校への援助の実現が民主党の選挙戦における最大の公約であった。しかし、投票の結果は、6人のカトリック教徒のうち1人しか民主党を支持していないことを示すものであった。次の1922年の選挙では、民主党は候補者の数をしぼりこんだ。その中にドクター・シリル・ファロンDr Cyril Fallonという人物がいた。彼は地元であるシドニー東部の郊外で、住民に根強い人気を持っていた人物であった。ファロンは民主党で唯一当選を果たした候補者であったが、1925年議席を失い、党もその後、解党した。

　民主党は、ニューサウスウェールズやオーストラリア全体で宗派の対立が高まった時期に存在した。カトリックが敵対的存在であると見なされた環境の中で、カトリックの要求を主張しようとすればするほど、その存在は対立を刺激するものとなったのである。民主党の活動が短期に終わったことはまた、大部分のカトリック教徒が、たとえカトリックの利害を強く主張する政党が存在していたとしても、オーストラリア労働党への支持を継続したことを証明している。

　藤岡真樹0401