植民地間の境界線の位置は、19世紀中頃にニューサウスウェールズからヴィクトリアとクィーンズランドが分離する時点で、すでに問題となっていた。連邦憲法は、新しい州の設置とそのために必要な運動をすることを許可した。新州設置に関する王立調査委員会は、いくつかの地域からの分離を求める圧力に対する解答として、連邦政府とニューサウスウェールズ州政府によって1920年代に設立された。それを支援したのは地方党であり、新しい州は地方分権の公約への答えとみなされていた。

　アメリカが比較的自由に州を増やしたという事実から、より小さい単位を州とした方がオーストラリアの安定性が高まるという議論が新州設立の根拠としてあげられた。しかしながら、運動の背景には、中央政府に対する地方の不満があった。その他の設立運動の要素として、オーストラリア内の人口に偏りがあり、特に地方では人口が減少していたということもあった。政府が人口の多い地域に公共事業を集中させている間に、地方は放置され、無視されているという意識が強まったことが、新州設立の動きに影響した。

　1920年代にクィーンズランド中部（カプリコニア）と北ニューサウスウェールズ（ニューイングランド）で、新しい州を求める運動が行われ始めた。南西ニューサウスウェールズ（リヴェリーナ）も1930年代前半から加わった。リヴェリーナ Riverinaの運動は、基本的にジャック・ラングの労働党州政権への反発であった。ニューイングランドでは、1915年にグラーフトンで会議があり、地方党代表のアール・ペイジの強い支援を受けて、1919年にはニューイングランド高地地方にまで、新州設立の運動は広がった。ニューイングランドの運動は1948年に再び現れ、北部クィーンズランドでは1955年に、西部ヴィクトリア地域では1960年代に新州設立運動が起こった。ほとんどすべての運動は一時的なものであったが、ニューイングランドのそれは、新州設立の是非を問う1967年の住民投票が実施されるまでに拡大した。しかし、新州の境界をどこに置くかが大きな論点となり、その一部に含まれることになったニューカッスルを中心とする都市部が、ニューサウスウェールズからの分離に反対したので、新州設立の提案は否決されることになった。

　田中沙依0401