オーストラリア辞典
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Shark Bay ( World Heritage)

シャーク・ベイ(世界遺産)


オーストラリア西海岸。パースから北に830キロ、カナーヴォンの南に位置する大きな湾。


 シャーク湾におけるアボリジナルの居住跡は2万2,000年前にまでさかのぼる。当時この地域は乾燥しており、8,000年から6,000年前にかけて海面が上昇した時、海面下に沈んだと考えられている。エインドラハト号のダーク・ハートグが、1616年10月25日、ヨーロッパ人として初めてオーストラリアに上陸した土地がこのシャーク湾である。1699年に英国の海賊ウィリアム・ダンピアが、この湾で3メートルあまりの大きな鮫を捕まえたことから、この名前がつけられた。1818年にはフランスのフレイシネイ船長により、シャーク湾の調査が行われている。1850年以降1940年代までは真珠の採取が最も重要な産業であった。それに続いた漁業は1960年代にピークを迎え、その後20年間は衰退した。

 現在この湾は人口およそ750人で、その一部はアボリジナルの血を引いている。経済は観光業、漁業、牧畜を含み、近隣のカナーヴォンの住民の一部は、ジュゴン・イセエビ・エビ・ホタテなど様々な海産物に恵まれた漁場であるシャーク湾の漁業に携わっている。

 シャーク湾は1991年に、「世界の進化の歴史の主要な段階の傑出した実例であること」、「地質学上の推移、生物学的な進化の推移、人類と自然環境の相互作用の傑出した実例であること」、「独特で珍しい最上の自然現象・構成・特別な自然の美の特色を含んでいること」、「自然科学と保護の観点から顕著な普遍的価値のある、絶滅の危機に瀕した動植物の重要で価値ある生息地が未だ残っていること」、の4つの観点から世界遺産に登録され、現在も230万ヘクタールが世界遺産として保護されている。

 この湾は、3つの気候区域の集合点で、2つの主な植物相の境界でもあり、ペロン半島やダーク・ハートグ島等に囲まれた珍しい生物相が見られる。480万ヘクタールに及ぶ豊かな海草帯は、世界最大規模を誇っている。また、この湾にはおよそ14,000頭ものジュゴンが生息している。さらに、35億年前の生物体と類似した、ドーム型に堆積した藻類の群生であるストロマトライトの、世界でもっとも多様で豊富な形態がみられる。 そのほかにも、この湾は絶滅に瀕した5種類の哺乳動物の生息地でもあり、また、観光地としては野生のイルカと触れ合える「モンキー・マイア」や花びらのような小さい貝殻で埋め尽くされた全長100キロにも及ぶ「シェル・ビーチ」 が有名である。

 森脇奏0904