オーストラリア辞典
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The Ghan

ガン号、大陸縦断鉄道


 南オーストラリア州のアデレイドからノーザンテリトリーのダーウィンを結ぶ2979キロのオーストラリア大陸縦断鉄道。途中ウールルー(エアーズロック)観光の拠点としても有名なアリス・スプリングズを経由し、シドニーとパースを結ぶ大陸横断鉄道のインディアン・パシフィックと並ぶ長距離列車である。

 ガンThe Ghanという名は、1860年代からオーストラリアの奥地での運送につかわれたラクダから来ている。特に初期の入植者や旅行者にとってラクダはなくてはならない交通手段であり、そのラクダ隊は最初にオーストラリアに輸入されたラクダとその使い手たちの出身地のアフガニスタンを省略して「ガン」と呼ばれていた。大陸縦断鉄道The Ghanのエンブレムにはラクダに乗ったアフガニスタン人が描かれている。

 初めてこの大陸縦断鉄道が構想されたのは1858年のことである。ダーウィン=アリス・スプリングズ間の重要性を連邦政府が認識したのは1911年になってからである。その後工事が始まり、1929年にはアデレイドとアリス・スプリングズをつなぐ、全長830キロの鉄道が開通した。しかし、アリス・スプリングズからダーウィンに至る北部線の建設は経済性に対する疑問が強かったことから、なかなか実現しないままになっていた。1994年に北部線の建設を連邦政府に勧告する諮問報告書が発表され、97年に国内外の60社が建設プロジェクト入札に関心を表明した。99年10月に連邦政府と南オーストラリア州とノーザンテリトリーが費用負担に関して合意し、ハワード首相が「オーストラリア国内でのインフラとしては最大級の1つとなるプロジェクト」として、全長1420キロのダーウィン=アリス・スプリングズ間の北部線着工を発表した。北部線は2001年4月から基礎工事、02年4月から線路敷設工事が始まり、毎分9メートル、毎日2.2キロのペースでコンクリート製枕木と線路を敷設する工事が約18ヵ月かけて行われた。工事は当初の計画よりも4ヵ月早く完成した。建設予算は総額13億豪ドルで、連邦政府と州、準州政府が5億6000万豪ドルを負担、民間の企業であるアジア・パシフィック・コンソーシアムの経営部門のフライトリンクが7億4000万豪ドルを支出した。

 第1号貨物列車は2004年1月15日にアデレイドを出発し、17日にダーウィンに到着した。沿線の駅や線路沿いには多くの市民が集まり、大陸縦断第1号列車の運行を盛大に祝った。旅客列車は同年2月1日より運行が開始され、アデレイドとダーウィン間は週1回往復、アデレイドとアリス・スプリングズ間は週2回往復する。

 ダーウィンはアジアに最も近い港湾都市であることから、大陸縦断鉄道が開通することでオーストラリア南部の産品をアジア市場へ輸出する取扱量が増えて経済開発が進むと期待されている。しかし、トラック輸送に対抗できるのかといった疑問の声も少なくなく、事業の採算性が今後の課題となるだろう。一方、鉄道旅行の需要が生まれて、ダーウィンへの旅行者が年間3万人増えるのではないかとも予測されている。

 中島花子0704

グレイト・サザン鉄道公社(英語版)

グレイト・サザン鉄道公社(日本語版)