オーストラリア辞典
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Casey, Dawn

ケイシー、ドーン


1950-
クィーンズランド生まれ
オーストラリア国立博物館の初代館長


 1950年、クィーンズランドのケアンズで先住民の母と父の5人姉弟の長女として生まれる。父は牧場主とそのメイドの子どもで、盗まれた世代Stolen Generationsの一員であり、母方の祖母も盗まれた世代の一員であった。ケイシー自身、初等教育を受けただけで、14歳で中等教育を中断し、16歳で結婚し母となり、掃除婦などで生計を立てる。仕事をすると同時に会計学を学び、教育関係の公務員となる。その後、さまざま先住民政策に公務員として関わり、1999年にはオーストラリア国立博物館the National Museum of Australiaの館長となり、2001年のオープニングを成功させる。しかし、歴史戦争the History Warsに巻き込まれ、2003年に事実上解任された。また、この間、ケイシーを支えた国立博物館の評議員3人の任期は延長されず、すべて自由党の文化政策を支持する委員に置き換えられた。ケイシーは、解任後、西オーストラリア博物館とシドニーのパワーハウス博物館の館長を歴任し、2013年3月現在、オーストラリア先住民局IBAと先住民土地公社ILCの議長である。

 歴史戦争について、ケイシーは次のような発言を行っている。「オーストラリアでは、私たちもこの戦場の一部になっているが、個人的にはそれを残念と思うどころか歓迎したい。国立博物館は、博物館や収蔵品や展覧会は社会的・政治的変化の媒体だという考え方を支持しており、私たちはその役割を担うつもりだ。実際「新しい」博物館は、コミュニティが集合的意識の問題に対する答えを、考え、追求するように仕向けることができる。私たちは、その結果、多様な文化的アイデンティティに誇りと安心感を抱くことができるコミュニティが誕生することを願っている」。こうした発言からは、ケイシー自身が国立博物館を巻き込む一因になったことがうかがえる。

 藤川隆男0313