第2章 ドリーミングと同質性
―アボリジナル社会―

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要約

アボリジナルは、オーストラリア大陸の多様な環境の全域にわたって居住するが、そこで営まれている彼らの生活は、言語や慣習、物質文化において、きわめて高い同質性を持っている。植民以前のアボリジナルの総人口は、現在75万人と推計されている。そして、生活の上での基本的な集団は、地方的な出自集団、クランと半族、セクションである。これらの集団は、アボリジナル社会の複雑な婚姻規則において、大変重要な役割を担っていた。また、彼らは文字をもたなかったが、各々の集団はそれぞれに固有の言語を保持してきた。これらのアボリジナル諸語は、北部のアーネムランドとキンバリー地方を除き、大部分がパマ・ニュンガン語群に含まれ、高い同質性を持っている。

このようなアボリジナル社会の特質は、彼らが外部社会と接触をもたないことによって生じたものではなかった。彼らはパプアニューギニアやインドネシアといった大陸外の人々と密接な交易関係を持ち、また、大陸内部においてもバーター貿易を盛んに行っていた。大陸外の地域からは多くの文化要素がもたらされ、特にインドネシアからナマコ漁に来ていたマカッサンと呼ばれた人々とアーネムランド・アボリジナルは、様々なトラブルを抱えながらも、200年にわたり、きわめて親密な関係を築いていた。しかし、こうしたアボリジナル社会は、18世紀末以降からのヨーロッパ人の植民によって大きく変化させられるのである。

用語解説

感想

これまで、アボリジナルの人々が大陸外とも交流をしていたことは知らなかったので、インドネシアやパプアニューギニアの人々が、アボリジナル社会に組み込まれたり、アボリジナルの言語に影響を与えるほど親密な関係を持っていたことがとても新鮮でした。また、アボリジナルの婚姻規則に関しては、科学的に実験などを行ったわけではないのに、種の保存のための人間の知恵というのはすごいなあと思いました。

コメント 接触のあり方は、本文に記述されているほど平和的であったかどうかは、議論の分かれるところです。


アーネムランド・アボリジナルがマカッサンから借用した言葉のひとつに、お金及びお金の単位として用いた「ルピア」がある。バリ島の通貨単位もルピアだった。今年3月にバリ島旅行したときの、バリ人たちの「ルピィー()」という発音を思い出し、急にアボリジナルの人々を身近に感じた。歴史の理解とは人間の理解であり、人間の理解とは究極のところ実体験にもとづく。なんて考えたりした。

コメント 歴史家はできるだけ他の文化と触れ合うように努めるといいね。僕なんか頭が働かないときは、旅行をして体で歴史を勉強しているよ。


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