白人とは何か?
ホワイトネス・スタディーズ入門

ようこそ!

このページでは藤川隆男編著『白人とは何か?』(刀水書房、2005年)を紹介します。

『白人とは何か?』紹介

本 白人性(ホワイトネス)の問題が、近年、歴史学や文学、女性学や人種研究、社会学や法学、教育学や心理学など人文・社会諸科学の広い領域で注目を集めるようになっている。この本は、白人性研究を日本で初めて体系的に解説する書物である。本書は4部構成で、第I部では全般的理論、第II部では白人の歴史的形成、第III部では非白人の側から見た白人、第IV部では白人性の構造について論じる。下に学生による各章の要約と感想、感想へのコメントを掲載した。

 「国民」が国民国家の形成とともに「構築」されてきたという認識は、歴史家の間で広く共有されているように思う。白人研究においても、生物学的に客観的な基準で分類されていると思われる「人種」が、社会的・歴史的に構築されてきたと考えられている。その結果、白色人種はどのようにして生まれてきたか。最初は白人とみなされていなかった移民集団がどのように白人化するのか。白人という身体が歴史的にどのように創られてきたか。普遍的な人間像が白人性といかなる関係にあるかなどが、研究のテーマとされるようになってきた。

 歴史学のなかでも、とりわけ帝国や移民の研究では、白人性は避けて通れないテーマの1つになりつつある。アメリカ史においては、アイルランド人を中心とするヨーロッパ系移民の白人化が講義などでも頻繁に取り扱われるテーマになっている。イギリス帝国史では、ヴロン・ウェアが、時代を溯って、19世紀の第1波フェミニズムの時代におけるホワイト・フェミニティと人種の関連を検証し、女性史研究に大きな影響を与えている。また、オランダ領インドをフィールドにする歴史人類学者アン・ストーラーも、白人の非白人化を積極的に主題化した。

 19世紀末からイギリス帝国は本格的な移民規制の時代に入る。白豪主義を確立したオーストラリア、アジア系移民を規制した南アフリカ・カナダ・ニュージーランドを考察対象とするとき、帝国内の移民と白人化の問題は切り離すことができない。アメリカにおけるアイルランド系移民の白人化と、イギリス本国と上記の自治植民地におけるアイルランド系移民の同化のプロセスとの比較だけでも、新しい歴史研究の地平は広がるだろう。先住民の問題や植民地主義の問題、スポーツ史や文化史、女性移民やレイディ・トラヴェラー、ミッショナリーの研究、とりわけイギリス帝国の支配理念や帝国意識の問題と、白人性の問題は密接に関係しており、今後の研究の進展が期待されている。

内容の要約と感想

CD-ROMのアップデート

編著者の藤川は、白人の歴史だけでなく、別の研究もこつこつしています。下で紹介している『オーストラリアの歴史』付属のCD-ROMに収録されている「オーストラリア用語辞書」および「オーストラリア年表」の更新ファイルを配布しています。以下のリンクからファイルをダウンロードしてご利用ください。(※更新作業はオンライン版『オーストラリア辞典』が優先的に行われますので、最近の内容については、そちらをご確認ください。)

bun45.zip (2004年6月22日版、3.46MB)

更新ファイルについて

更新ファイルはZIP形式で圧縮されています。ZIP形式に対応したアーカイバで解凍してご利用ください。(※ 解答する際にはパスワードが必要です。『オーストラリアの歴史』262ページの最初の6文字を入力してください。)解凍後に作成されるファイルは、

  1. bun45.chm (用語辞書と年表のインデックスファイル)
  2. chronicle.chm (「オーストラリア年表」更新ファイル)
  3. dictionary.chm (「オーストラリア用語辞書」更新ファイル)

の3つです。辞書と年表の両方を参照される場合は、これらのファイルを同一のディレクトリに置いた上で、bun45.chmを開いてください。更新ファイルの動作環境は付属CD-ROMに準じますが、更新ファイルの起動には付属CD-ROMは必要ありません。

編著者紹介

著者近影藤川 隆男(大阪大学大学院文学研究科 教授)
最近もっとも多くの時間を費やしているのは、インターネットで利用できるオーストラリアのGhost Gazetteerとオーストラリア年表の作成である。Ghost Gazetteerはオーストラリアの失われた地名辞典で、英文で作成し世界に発信することを意図している。全体として日本向けには、オーストラリア辞典を含めて、オーストラリアの人名・地名・事項などを総合的に検索できるサイトを目指している。余った時間には、本来の仕事、オーストラリア連邦制度の歴史やオーストラリアへの移民や先住民の歴史を研究している。前者は、グローバル化の進む中での連邦システムへの関心から、後者は昔からやっているテーマである。2004年4月には、有斐閣から『オーストラリアの歴史』という概説書を出版した。私の編著で、オーストラリア辞典と年表のCD-ROMを添付した。概説書は辞典の編纂と同じく、オーストラリアの歴史に関する基本的な情報を正確に提供したいという思いがその動機である。歴史辞典と年表のCD-ROMを添付した日本で初の歴史学のテキストである。2005年3月には『空間のイギリス史』、10月には『白人とは何か?』を編著で出版している。
BUN45へ戻る
最終更新日 2005/11/16
お問い合わせはfujikawa@let.osaka-u.ac.jpまで