研究室だより(2007.8.〜)

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■卒業式・学位授与式(08.3.24-25)

 陽光もいよいよ春めくなか、卒業式と学位授与式が行われた。本年は学部の卒業生7名と博士後期課程の修了者3名が学位を取得した。例年、東洋史研究室では、卒業式・学位授与式後に茶話会が催され、卒業生と教員らがよろこびを分かち合う。今年も学部卒業生5名(うち大学院進学者3名)が研究室に参集し、にぎやかな雰囲気のもと祝杯が挙げられた。東洋史研究室で学んだ卒業生・修了生の今後ますますの活躍を期待したい。

 なお、学部の卒業式と大学院の学位授与式が別日程で行う本年度の変更に対応して、来年度からはインスペクション最終日に行う追い出しコンパと卒業式後の茶話会とを統合し、予餞会(仮名)としてインスペクションの数日後に開催する運びとなっている。

 本年度の行事もすべて終了し、研究室にも久々の静粛の時が訪れたが、およそ十日後には新メンバーを加えて研究室ガイダンスが予定されている。この休息の後には新年度の諸行事が今か今かと待っている。卒業生・修了生ならびに学生・院生諸氏はそれぞれの務めに備えられたいと思う。(S)

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■遼金西夏史研究会第8回大会(08.3.22-23)

 新年度のスタートが間近にせまる3月22〜23日、第8回「遼金西夏史研究会大会」が東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(於 東京都府中市)で開催され、本研究室の伊藤一馬(M1)が研究発表を行った(23日)。表題は「北宋後期の西北辺地域における軍事体制」であり、卒業論文提出後の研究成果の一部を披露した。


発表中の伊藤

 同大会では、本研究室OBの赤木崇敏氏(22日「曹氏帰義軍節度使系譜考─敦煌莫高窟第61窟供養人像の再検討─」)や佐藤貴保氏(22日「西夏法典研究に関する諸問題─ロシア蔵カラホト出土『天盛禁令』刊本の現物調査から─」)、松井太氏(23日「敦煌出土西夏語文献裏面のウイグル語占卜文書」)も研究発表を行っている。その他、阪大東洋史の大学院生やOB諸氏も数多く参集し、本研究室が当該領域研究を推進する人材を輩出していることを印象付けた。(S)


アジア・アフリカ言語文化研究所

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■図書インスペクション(08.3.10-12)

 春の足音が聞こえる3月10日から12日の三日間,東洋史研究室の恒例行事「図書インスペクション(蔵書点検)」が行われた.これは,研究室に配架されている書籍と「図書カード」の整理を行い,それらの有効利用をはかるために実施されている.

 初日の午前中は,全員で図書カードの誤配列を修正する作業に従事した.午後からは,例年通り,和漢中文書班と洋書班の2班が編制され,それぞれの班長の指揮下にインスペクションが遂行されてゆく.

 和漢中文書班は,初日午後から早速,研究室の図書の読み上げを開始した.院生が書名を次々に大声で読み上げる迫力に,最初はカードを捜索する学生側はとまどってしまうのだが,2日目,3日目と時間が経過するうちに慣れるものである.今年度は前半日程で研究室を,後半日程で第二研究室の図書を点検し終わった.


読み上げられた図書の書名カードをいかに早く発見するかが勝負!

 一方,洋書班は,ここしばらくは「書名カード」と図書原物との確認を行ってきたが,本年は「著者名カード」を用いて点検をすることになった.本のどこに著者名が書いてあるのか,そして,どの情報を著者名としてカードに登記してあるのか,を判別しなくてはならない.従って,和漢中文書班とは対照的に,洋書班では読み上げする者が慣れるまで時間がかかる.ただし森安教授の研究室に配架されている洋書については本年度の対象外としたため,洋書班は初日で第二研究室を,2日目で研究室の洋書をほぼ点検し終えることができた.


図書カードの捜索は集中力と忍耐力を要する作業である!

 ところで,本年度から新規に登録された図書の図書カードが供給されなくなったことをうけ,新規配架図書を電子情報と照会させる別働隊が編成された.東洋史研究室では,2007年度以降の配架図書については,以前の図書と区別するためのマークを記して対応している.別働隊は,このマークと図書登録データとを照合させ,蔵書状況を確認するのである.

 我々東洋史学研究室のメンバー一同は10年先の研究環境をも見据えつつ,増え続ける図書の登録・管理方法に創意工夫を加えてゆかねばならないであろう.

 以上3日間の蔵書点検の後,「追い出しコンパ」が待兼山会館で開催された.本年度は卒業生・博士後期課程修了者に加えて,任期満了をむかえる山内助教のそれぞれが思い出や今後の抱負を語っている.他方,研究室に残る教員・院生・学生からは送辞があった.惜別の感情によるものなのか? あるいはインスペクションでの疲労からか? はたまたアルコールによるものなのか? それぞれ高ぶる感情の満ちあふれた言葉であった.


ありがとう! 山内晋次助教(写真右)

 なお,散会後は2次会も開催され,例年になく20名以上の参加があった.山内助教を囲みつつにぎやかに深夜まで宴は続いたという.(S)


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■博士学位申請論文公開試問(08.2.5-8)

 今年度は3名が課程博士学位請求論文を提出し、その公開試問が行われた。学位請求者の試問期日と題目は以下の通り。

  ◎2月5日(火) 坂本和子「織物に見るシルクロードの文化交流:トゥルファン出土染織資料 ―錦綾を中心に」

  ◎2月6日(水) 大坪慶之「清末垂簾聴政下における清朝中央の政策決定過程」

  ◎2月8日(金) 鈴木宏節「突厥可汗国の王権と展開」


 公開試問は、まず申請者による論文の概要報告(40分程度)、そして主査・副査(2名)の教員からの試問・コメント(1時間程度)、最後に教員・学生ら参加者からの質疑という形で進められた。学内の教員・学生・院生だけでなく、学外の方にも参加していただき、活発な議論が交わされた。(Y)







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■台湾資料調査(07.12.17.-28)

 12月17日から28日にかけて、本研究室の片山剛教授が台湾で2007年2回目の調査を行った。これは科学研究費補助金(基盤研究A)「1930年代広東省土地調査冊の整理・分析と活用」によるもので、夏の資料調査を補うためのものである。本研究室からは、大坪慶之(本研究室博士後期課程)、山本一(本研究室博士後期課程)、沼田英年(本研究室博士前期課程)が参加した。

 今回の調査では、中央研究院近代史研究所図書館・国史館・国立中央図書館台湾分館・国立台湾大学附属図書館を利用し、前回のワークショップで片山教授と追手門学院大学 田口宏二朗講師(本研究室OB)が使用した資料を更に充実させることができた。この成果は、次年度からの研究に資することとなるだろう。(Y)

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■ワークショップ「近代東アジア土地調査事業研究」(07.11.24-25)

 昨年に引き続き、11月24日(土)から翌25日(日)にかけて、ワークショップ「近代東アジア土地調査事業研究」が大阪大学において開催された。これは科学研究費補助金の研究課題「1930年代広東省土地調査冊の整理・分析と活用」(基盤研究(A),2005〜2008年度)の一貫として、科研代表者である片山剛教授の主催で行われた。(参加者等詳細は
こちら

 本学OBの田口宏二朗 追手門学院大学講師は、台湾国史館に残る1930年代の南京市街地の「土地他項権利証明書存根」をもとに、当該時期の複雑な土地権利関係に考察を加えた。また、片山教授は1930年代に広東省で実施された土地調査事業の際、郷の境界が争われた事例に着目し、当該時期の広東省における郷の境界の存否を検討した。

 他にも2本の報告と6名のコメンテーターによるコメントが寄せられ、昨年以上に白熱した議論が行われた。本ワークショップの詳細は、今年度末に作成予定である本科研費のニューズレターに掲載される予定である。(Y)

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■史学会大会(07.11.18)

 冬空の澄みわたる11月18日(日)、東京大学・本郷キャンパスで開催された2007年度史学会大会・東洋史部会で本研究室の山本一(博士後期課程2年)と鈴木宏節(同3年)が研究発表を行った。

 山本の論題は「清末の幕僚について──張之洞の幕僚を中心に──」、鈴木の論題は「突厥第二可汗国の歴史観──キョル=テギン碑文東面冒頭の再検討──」であった。ともに発表内容を早期に論文にされんことを願う。

 

 なお、発表要旨は『史学雑誌』117編1号に掲載予定。(S)

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■ソフトボール大会 春秋連覇!(07.11.2)

 11月2日(金)に猪名川河川敷で行われた文学研究科院生協議会主催のソフトボール大会において、我が東洋史チームが見事春秋連覇を成し遂げた。

 秋晴れの空のもと、今大会は5チームによるリーグ戦で優勝を争うこととなった。東洋史チームの初戦は快速投手を擁する国文チーム。今年の春期大会決勝でこの快速投手を打ち崩してはいるものの「この初戦に負けると、優勝はない」という思いの中、東洋史チームは粘りの野球で、何とか2−2の引き分けに持ち込んだ。こうなると波に乗る我が東洋史。残る3試合を「堅い守り」と、細いながらも「繋がる打線」で勝利し、3勝1分で春期大会に続く連覇を勝ち取ったのである。

 試合結果は以下の通り

  第一試合 対国文学  2−2(相手の1点は女性点。実質勝利)
  第二試合 対英米文学 9−3(久しぶりの先発Y崎組長が好投)
  第三試合 対日本史学 7−4(初先発M木、白星デビュー)
  第四試合 対西洋史学 9−2(Y内助教の先頭打者ヒットで勢いづく)

 ※試合の詳細はこちら!
  
伊藤一馬撰『續ソフトボール實録長編』卷五,二〇〇七年秋之條 [2008.1.10 up!]



 東洋史チームの強みは何と言っても守備力。I藤主将の号令のもと、通常週1回だった練習を週2回に増やすなど、春秋連覇に向けて練習に練習を重ねた(一部ではKazuma's Boot Campと囁かれている)。今後もこの猛練習によってさらなる東洋史黄金時代を築いていってほしい。

 なお、東洋史では対外試合も受け付けている。希望される方は山内助教までメールをいただきたい。(あくまで素人の草ソフトなのでお手柔らかに)(Y)


一撃必殺のY内助教


V2!



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■山西・陝西現地調査(07.8.21-9.2)

 8月21日から9月2日にかけて、科学研究費補助金(基盤研究A)「シルクロード東部地域における貿易と文化交流の諸相」の一環として、下記で述べた「日中独シルクロード学術調査団」とは別に、早稲田大学の石見清裕教授を団長とする調査団が組織され、山西・陝西省においても調査が行われた。参加メンバーは、広島市立大学の服部等作教授、広島大学の白須浄眞講師、神戸市立外国語大学の影山悦子(非常勤講師)、佐藤貴保(本研究室OB、非常勤講師)、中田美絵(本研究室OG)、南開大学留学中の山本明志(本研究室博士後期課程)である。

 山西省では五台山・太原・交城県・介休県を、陝西省では銅川・西安市を訪れ、晋陽古城などの遺跡や、隋・虞弘墓誌をはじめとする北朝から唐・五代期の碑文・墓誌・遺物などの調査を行なった。また、文殊菩薩の住処とされる五台山では、主に景観および寺院・仏像の調査を行なった。五台山の多くの寺院は明清期の重建であるが、仏光寺や南禅寺には唐代の建築物や仏像・石幢なども残されており、唐から清までの長きにわたる五台山文殊信仰の変遷を目の当たりにすることとなった。なお、本調査で得られた成果は、来年度にまとめられる科研報告書で公表される予定である。

 今回の調査では、日程の2日目に、北京から山西省五台山に向かう途中の国道で、石炭を載せたトラックの渋滞に巻き込まれたため、いきなり車中泊を余儀なくされるという不運に見舞われた。しかし、隊員全員の"熱意ある"調査活動によって、最終的にはそのロスをすべて取りかえことができたことも付け加えておく。(N)

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■台湾資料調査(07.8.20.-9.9)

 昨年に引き続き、8月20日から9月9日にかけて、本研究室の片山剛教授が台湾において学術調査を行った。これは科学研究費補助金(基盤研究A)「1930年代広東省土地調査冊の整理・分析と活用」によるもので、追手門学院大学 田口宏二朗講師(本研究室OB)、大坪慶之(本研究室博士後期課程)、山本一(本研究室博士後期課程)等が参加した。

 今回の調査は、近代中国における土地調査事業に関するものであり、当時の地図資料や文字史料を広汎に収集した。特に、民国時期の地主−佃戸関係を記した「地籍図」は、当時の土地所有状況をつぶさに示す、非常に貴重な資料と言える。この成果は、昨年と同じく11月下旬に行われるワークショップにおいて報告される予定である。(Y)

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■日中独シルクロード学術調査(07.8.11-9.10)

 去る8月11日〜9月10日、科学研究費補助金(基盤研究A)「シルクロード東部地域における貿易と文化交流の諸相」の一環として、「日中独シルクロード学術調査団」が組織され、シルクロード東部の中でも特に重要な地域である新疆ウイグル自治区と甘粛省において調査が行われた。日本側の団長は、本研究室の森安孝夫教授が務め、中国側は新疆ウイグル自治区吐魯番市文物局長の李肖氏、ドイツ側はベルリン自由大学教授で、ウイグル学の世界的権威である Peter Zieme 教授がそれぞれ団長を務めた。

 日本側からは、本研究室の荒川正晴教授、京都大学の吉田豊教授、大阪大学の藤岡穣准教授・高橋照彦准教授、弘前大学の松井太准教授(本研究室OB)、中国中央民族大学の張銘心教授(本研究室OB)、及びベルリン自由大学の笠井幸代(本研究室OG)、坂本和子(本研究室OG)、赤木崇敏(本研究室OB)、白玉冬(本研究室博士後期課程)等がメンバーとして参加した。

 一同は約20日間をかけ、隋唐時代の北庭故城があった吉木薩爾(ジムサル)、烏魯木齊(ウルムチ)、吐魯番(トゥルファン)、敦煌等で調査研究を行い、文書・遺跡・地形調査において、それぞれ大きな成果を上げた。これらの成果は、来年度、科研報告書としてまとめられる予定である。(B)


ベゼクリク千仏洞(8/19)


玉門関(8/28)

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■モンゴル国遺跡調査2(2007.8.6-20)

 8月6日から20日まで、博士後期課程の鈴木宏節がモンゴル国突厥関連遺跡調査に参加した。この調査は、大阪国際大学・松田孝一教授の主催する科研費研究「内陸アジア諸言語資料の解読によるモンゴルの都市発展と交通に関する総合研究」によるもので、モンゴル国科学アカデミー考古学研究所と提携した「ビチェースII」プロジェクト(3年間継続予定)の2年目となるものである。鈴木は本科研の研究協力者であり、今夏も大阪外国語大学・大澤孝准教授(研究分担者)とともにこの調査に参加した。

 現地踏査は、考古学研究所のムンフトルガ氏とともに、8日から19日まで行われた。調査対象はウンゲト・オンギ・ホショー=ツァイダム・タイハル・シベート=オラーン・ホル=アスガト遺跡など10ヶ所以上。遺跡の計測調査や突厥碑文の採拓、石人・サルコファック(石槨)などの観察を行った。その他、調査ルート周辺に散在する鹿石やヘレクスールなどにも立ち寄り、踏査距離は1700キロメートルにおよんだ。


トブ(中央)県ウンゲト遺跡(8/8)


オブルハンガイ県アルバイヘール市郊外の草原(8/10)


ボルガン県シベート=オラーン遺跡からフヌイ河(左)・ハヌイ河(右)の合流地点をのぞむ(8/15)


 なお,首都ウランバートルではドイツのボン大学・モンゴル国科学アカデミー考古学研究所・国立モンゴル歴史博物館の共催による国際会議Archaeological Research in Mongolia 1st International Conference August 19th - 23rd(2007, Ulaanbaatar/Mongolia)が開催されており、これにも鈴木は大澤准教授とともに参加し、研究発表を行った(23日)。表題は Reconsideration of the Choir Inscription であり、2003 年に阪大に将来した突厥文字銘文の拓本を用いて,碑文の再解釈を提示した。(S)


シベート=オラーン遺跡周辺の放牧風景(8/15)

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大阪大学大学院・文学研究科・東洋史学研究室