研究室だより(2008.10.〜)

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■東洋史学研究室 移転(09.3.30)


イ号館301号室の様子
 文学研究科本館の耐震補強工事のため、東洋史学研究室(研究室および森安教授・片山教授・青木准教授各室)は、工事期間中は他の建物に仮住まいすることとなり、それに伴う移転作業が3月中に順次おこなわれた。

 東洋史学研究室の整えられた環境を、移転先に再現出来るものであるのか、不安の内に始まった今回の移転作業であったが、作業を完遂し得たのは(3月30日完了)、インスペクションなどで培われた手際と、何よりも各員の結束力の賜物であろう。

 これより当研究室はおよそ半年間、イ号館301号室での生活を送ることとなる。短期間ではあるが、快適な研究生活が営めるよう、研究室所属の各員にあっては心がけられたい。

 なお、作業期間中の3月24日には、「追い出しコンパ」が待兼山会館にて盛大に挙行され、卒業・修了生の前途を祝した。

 卒業・修了生は研究室の思い出や今後の抱負を語り、送り出す者ははなむけの言葉を贈り、時に繰り出されるネタや野次に会場は大いに沸いた。(I.Y.)


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■坂尻助教、遼金西夏史研究会にて研究報告(09.3.15)

 3月15日、第9回遼金西夏史研究会(於京都大学文学部)にて、本研究室・助教 坂尻彰宏が「朝貢、貿易、あるいは投資──9・10世紀敦煌の使節派遣」と題して研究報告を行なった。
 坂尻報告は、ペリオ将来敦煌文献の分析から、中央アジアのオアシス国家(敦煌・帰義軍政権)が行なった朝貢貿易の実態に迫るものであり、さらに朝貢の儀式次第や貿易利潤の具体的数値を関連文書との比較検討より詳細に復元した。(T.A)
坂尻助教、遼金西夏史研究会にて研究報告




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■陳春声教授、巫仁恕博士講演会(09.1.28-31)


講演中の巫仁恕博士(右)と通訳にあたる大坪(左)
 1月28日(水)及び1月31日(土)の両日、陳春声教授(中山大学副学長・歴史系)と巫仁恕博士(中央研究院近代史研究所副研究員)による講演会が行われ、本研究室からも多くの院生が参加した。

 28日は巫博士が「台湾近十年以明清史為主的中国史研究新潮流」、陳教授が「中国大陸近十年以明清史為主的中国史研究新潮流」と題して講演された。各講演の内容は台湾と中国大陸における近年の明清史研究動向に関するものであった。講演会には秋田茂教授(大阪大学文学研究科西洋史学)も参加され、多方面からの活発な議論がなされた。なお、講演の通訳には大坪慶之(特任研究員)と田由甲(博士前期課程1年)の両名があたった。

 31日は陳教授による「聚落形態与社会転型−明清之際韓江流域地方動乱之歴史影響」と題した講演が行われた。その内容は地方志を主に使用し、16世紀と17世紀の韓江流域郷村の集落形態の変化を伝統的地域社会の転換として位置づけるものであった。また、参考報告として片山剛教授が「珠江三角洲地区"漢族社会"的形成及其社会、文化特征」と題した報告を行った。31日の講演会には濱島敦俊名誉教授と井上徹教授(大阪市立大学)も参加され、28日に引き続き白熱した議論が繰り広げられた。(J.M)
陳春声教授(右)と通訳担当の田(左)
陳春声教授(右)と通訳担当の田(左)




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■台湾調査(08.12.22-29)

 12月22-29日、森安孝夫教授が台湾に出張し、故宮博物院および曁南大学においてレクチャーを含む研究交流を行った。また故宮博物院においては、国宝級の『元典章』を実見し、宋元仏画とされているものの中からマニ教絵画の可能性のあるものを調査をした。新時代にむけて南分院建設を計画した故宮博物院では、視野をアジア全域にまで広げた活動を行っており、同院からは森安教授との継続的な交流を要請された。


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■九州史学会(08.12.14)


研究報告をおこなう冨田
 12月14日、九州大学箱崎キャンパスにて、平成20年度九州史学会・イスラム文明学部会が、会場が満員となる盛況の中で開催され、午後の部のシンポジウム、「イスラームの知と知識人:多文化的展開」(共催:NIHUプログラムイスラーム地域研究 早稲田大学拠点グループ1)において、本研究室の冨田暁(博士後期課程)が研究報告を行った。

 冨田の表題目は「東南アジアのイスラームにおける知と権力 ‐近世西ボルネオにおけるアラブ人の事例を中心に‐」であり、18世紀後半の西ボルネオにおけるアラブ人を事例とし、イスラームの知と支配者の地位や権力形成との関係について報告を行った。(T.A.)




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■後期集中講義(08.12.9-12)

原宗子先生
原宗子先生
 12月9日から12日にかけて、後期の集中講義が開講された。今回は、流通経済大学より原宗子先生をお招きした。

 原先生は、中国環境史がご専門であり、古代中国の環境実態の復元や、歴史的事象と環境との相関関係の分析等を研究のテーマとされている。著書に、『「農本」主義と「黄土」の発生』(研文出版,2005年)などがある。

 今回の講義は、「ザッと眺める中国環境史」と題され、先史時代(ヒマラヤ造山運動による黄土高原の環境成立)から明清時期までの中国史を、環境史の視点から解説するものであった。

 授業では、漢籍史料の読解を軸に、地質学・土壌学・農学・水文学・考古学などの幅広い関連分野の成果を取り入れ、中国の歴史の流れを環境の変化から概観された。中国環境史という学問分野は、日本では広く研究されているとは言えず、今回の講義は大変貴重な機会であった。

 また、講義期間中に催された懇親会でも、アカデミックな話題に花が咲き、大いに盛り上がった。研究の醍醐味を熱心に説かれた先生に、感銘を受けた学生も多いことであろう。中国でのフィールドワークや講演活動等、精力的に研究活動をなされる先生の勢いを感じた4日間であった。(I.E.)

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■ワークショップ「近代東アジア土地調査事業研究」(08.11.23-24)

 2006・2007年に引き続き、11月23日(日)から翌24日(月)にかけて、ワークショップ「近代東アジア土地調査事業研究」が大阪大学豊中キャンパスの法・経大学院総合研究棟において開催された。これは科学研究費補助金の研究課題「1930年代広東省土地調査冊の整理・分析と活用」(基盤研究(A),2005〜2008年度)の一貫として、科研代表者である片山剛教授(本研究室)の主催で行われた。

 今年度は台湾の中央研究院より廖泫銘氏をお迎えし、廖氏の特別講演では、航空写真など地理的情報を復元する上で非常に貴重な資料が提示され、その際には会場から感嘆の声があがるほどであった。

 また、片山教授は、「20世紀前半、南京江心洲開発史と土地調査事業」と題する報告を行い、研究室OBの大坪慶之(大阪大学 特任研究員)・田口宏二朗(追手門学院大学 准教授)の両氏も「南京八卦洲の旗地に対する権利について」・「南京国民政府時期の土地登記と「他項権利」(2):「抵押権」を中心に」と題する報告を行った。

 廖氏による特別講演と片山教授らによる計3本の報告に対し、6人のコメンテーターによるコメントが寄せられなど、活発な議論が交わされた。

 最後に、事前準備や開催当日において、資料となるデータベースの作成、会場の運営、通訳に尽力した本研究室の院生・学部生らの働きがあったことを付記しておく。(Y.H)


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■沼田英年(M2)・中田美絵・赤木崇敏が史学会大会で報告(08.11.9)

 11月9日、曇り空のもと、東京大学本郷キャンパスにて、史学会第一〇六回大会・東洋史部会が、一時は立ち見もでるほどの盛況の中開催された。

 本研究室からは博士前期課程の沼田英年が報告を行った。沼田は、ケース・スタディとして湖広地域を取り上げ、明代地方軍事体制の特色ある事例を紹介しながら、当該地域の清代における地方行政にもつながる展望を示した。

 なお、2007年3月に大阪大学より博士号を取得した中田美絵(甲南大学非常勤講師)と赤木崇敏(甲南大学非常勤講師)の両氏もそれぞれ口頭報告を行った。各報告タイトルは以下の通り(報告順)。

・中田美絵「唐朝代宗朝における五臺山文殊信仰と王権」
・赤木崇敏「一〇世紀敦煌の王権像と転輪聖王思想」
・沼田英年「明代地方軍事体制の構造について――都司と総兵官の関係を中心に――」
(M.M.)


質疑応答中の沼田


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■山本明志(D3)、日本西蔵学会第56回大会にて発表(08.11.1)

 去る11月1日(土)に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所にて開催された第56回日本西蔵学会大会において、本研究室博士後期課程3年の山本明志が研究報告を行った。報告題目は「13世紀チベットにおけるジャムチの設置と戸口調査」である。当日は、歴史学のみならず、仏教・言語など様々な分野のチベット学研究者が60名ほど参加した。なお日本西蔵学会は、今大会での決議により「日本チベット学会」と名称表記を改める。(Y.M.)



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■森安教授、九州・シルクロード協会第4回交流会にて講演(08.10.4)

講演中の森安教授  10月4日、福岡アジア美術館で開催された九州・シルクロード協会第4回交流会にて、森安孝夫教授が「日本へのマニ教絵画の伝来とその世界史的背景」と題する講演を行った。

 本講演では、まずユーラシア世界史の大きな流れと、マニ教の東西伝播の歴史的背景について説明がなされ、その上で、最近2点ものマニ教絵画が日本で発見された意義が提示された。このマニ教絵画のうちの1点は、モンゴル時代に中国の江南・福建近辺で作られ、寧波から九州に舶載されたものと推測されるものである。

 上記の内容は、今年度前期の中央アジア史学講義で取り扱った内容を、学界での発表に先駈け、初に一般に向けて公開したものであり、質の高い聴衆の好評を博した。

講演の様子
写真: 九州・シルクロード協会提供



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大阪大学大学院・文学研究科・東洋史学研究室