研究室だより (2010.4.〜9.)
目次

森安教授海外調査(2010.8.16-9.7)

 森安孝夫教授は8月16日〜9月7日まで、イギリスのロンドンにある英国図書館 British Libraryと、ドイツのベルリンにあるベルリン=ブランデンブルク科学アカデミーおよびアジア美術館を訪問し、調査を行った。

 英国図書館ではスタインが敦煌とトゥルファンから将来した古ウイグル語文書と漢文のマニ教関係文書の調査、ベルリン=ブランデンブルク科学アカデミーでは20世紀初頭にドイツのトゥルファン探検隊が将来した古ウイグル語文書のうちの手紙文書の調査、アジア美術館では同じくトゥルファン将来の布製品や木製品の調査を行った。3箇所を通じての最大の目的は、森安教授のライフワークである『シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書集成』の完成を目指すことであった。その研究編である「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式」の前編は、今年度中に出版予定の『大阪大学文学研究科紀要』に発表されることになっている。(M.T.)

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桃木教授海外調査(2010.8.15-9.3)

 8月15日から9月3日にかけて、桃木至朗教授がベトナムにおいて学術調査をおこなった。本研究室関係者では蓮田隆志(OB・京都大学東南アジア研究所特任研究員)と吉川和希(M1)が同行した。

 今回はハノイとタインホア省、ゲアン省、クアンビン省、クアンチ省、トゥアティエンフエ省などベトナム北中部をまわり、胡朝城、黎朝の故地である藍山、広南阮氏の営跡など各地の遺跡の調査をおこなった。調査に際しては、訪問先の関係者各位からのご協力を得て、多くの知見を得ることができた。

 また8月18日には、タンロンに関するワークショップがハノイにて開催され、桃木教授が「中世王都タンロンを構成する諸空間と諸機能」と題する問題提起をおこなった。(Y.K.)

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荒川教授海外調査:「シルクロード東部の文字資料と遺跡の調査−新たな歴史像と出土史料学の構築に向けて−」(2010年度−2013年度)(2010.8.1-20)

 本科研調査は、課題名にあるように、シルクロード東部の文字資料と遺跡の調査を目的としている。具体的には、全体をトゥルファン・敦煌・ハラホトの三班に分け、①それぞれの文字資料と関連遺跡について中国、新疆ウイグル自治区のトゥルファン、甘粛省の敦煌および内モンゴル自治区のフフホト・ハラホトを中心にした現地調査を行い、②それを踏まえて、各文字資料群資料の分類と性格・機能の解明およびそれらの統合化を推進する予定である。

 今年度は、トゥルファン班では、8月1日〜8月7日にかけて、荒川正晴・白須淨眞(広島大学・教授)・高橋照彦(本学・准教授)が、吐魯番学研究院(博物館)において1975年〜1989年に出土したトゥルファン文書の実見調査を行った。既に柳洪亮氏により、その図版と録文[『新出吐魯番文書及其研究』新疆人民出版社、1997]が公表されているが、図版がかなり不鮮明なうえに移録ミスも多く、その修正版を作成中である。併せて文書が出土した場となる「アスターナ」「カラホージャ」「巴達木」「洋海」「木納爾」の古墓群の遺跡調査を行い、それぞれの墳墓の分布状況と、埋葬者が居住したオアシス都市との位置関係を確認した。この調査を通じて、出土文書の内容に反映される空間的な広がりを理解するとともに、トゥルファンにおける日常空間と非日常空間の広がり方に一定の規則性が存在するらしいことを認めた。

 ハラホト班では、8月11日〜20日にかけて、荒川正晴・松井太(弘前大学・教授)・舩田善之(九州大学・講師)・荒川慎太郎(東京外国語大学・准教授)・山本明志(本学・特任研究員)・伊藤一馬(本学・D2/学術振興会特別研究員)が、フフホトの内蒙古文物考古研究所に赴き、「ハラホト遺跡より新たに出土した諸言語資料」の調査を行った。今年は初年度ということもあり、申請した文書の多くを調査することはできなかったが、漢文・モンゴル文・西夏文の文書について、その一部を実見調査することができた。また来年度以降、研究協力者である内蒙古大学のフグジルド氏とハラホト文書の共同調査を進めるべく、内蒙古大学において正式な協定書を作成した。 このほか齊藤茂雄(本学・D3)は、陰山南部に位置する唐代の遺跡を調査した。(A.M.)

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坂尻助教海外調査(2010.7.22-9.21)
大英図書館エントランス
大英図書館エントランス(坂尻撮影)

 坂尻彰宏助教は、7月22日〜9月21日まで、大阪大学文学研究科の「多言語多文化研究に向けた複合型派遣プログラム」により、イギリス・ロンドンにて大英図書館( The British Library) 所蔵の敦煌文献の調査を行なった。長期の滞在により、9-10世紀の漢文文書とチベット文文書とを中心に100件余りの文書を観察し、原物からしか得られない文書の形態等の情報を多く収集することに成功した。(S.A.)

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海外調査・2010年夏(2010.7月-9月)
福建省晋江県安海鎮の境廟
福建省晋江県安海鎮の境廟(田撮影)

 この夏の休業期間中、博士前/後期学生など総勢9名がOVCプログラム等を利用し海外調査に出向いた。OVCプログラムとは、日本学術振興会の「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」のひとつとして採択された、大阪大学文学研究科の「多言語多文化研究に向けた複合型派遣プログラム」の略称であり、国際的視野を有する若手研究者の育成を目的とし、平成22年より3年間、講師・助教・ポスドク・大学院生・学部学生など総計150名を、調査や学会発表などのために海外へ派遣するものである。なお、OVCプログラムによる派遣者については、専用サイトに報告書が掲載される予定である。

 海外調査をした各員にあっては、研究室を離れ、生の史料や、歴史の展開された自然・生活環境を実際に眼にし、身体で感じることによって、新たな知見を得られたことと思う。それらを今後の研究に有意義に生かすことが願われる。(I.Y.)



 この夏に海外調査に赴いた者は、以下の通り(文責は各人)。

 (印はOVCプログラムによる海外派遣者)

台北市、国家図書館前にて(山本)
台北市、国家図書館前にて(山本)

LSEにて敦煌の水利史研究について説明する石川
LSEにて敦煌の水利研究について説明する石川
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前期集中講義(2010.8.9-12)
銀の流通について講義する岸本先生 スペインドルを示して説明をする岸本先生
銀の流通について講義する岸本先生(左) / 中国では「双柱」と称されたスペインドルを示して説明をする岸本先生(右)

 8月9日から12日にかけて、お茶の水女子大学から岸本美緒先生をお招きして前期集中講義「東アジア近世論」が開講された。岸本先生は明清時代の社会史・経済史がご専門で、主な著書に『清代中国の物価と経済変動』(研文出版, 1997年)『明清交代と江南社会―17世紀中国の秩序問題』(東京大学出版会, 1999年)がある。

 本講義では、16世紀から17世紀にかけての東アジアにおける、旧秩序の崩壊と新秩序の誕生について、当時の絵図や銀塊・銀貨・秤の現物なども交えて、具体的に説明が行われた。

 また、懇親会にも、多数の学生が参加し、大いに盛り上がった。

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卒論裏相談会(2010.8.5)
卒論裏相談会
先輩たちから厳しい指摘が飛ぶ!!

 8月5日、東洋史研究室恒例、卒論裏相談会が開催された。

 本年は9名の4回生が、それぞれの卒業論文の構想と作業状況を報告した。出席した院生や学部生からは、報告の内容から史料の読み方、語句の使い方、今後の展望に至るまで、様々な質問や意見が寄せられた。ひとつひとつのアドバイスが、発表者にとって有益となったことであろう。

 4回生は今後も卒業論文という学生生活の集大成に向けて、努力を積み重ねていってほしい。

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李錦綉氏、文書ゼミに参加(2010.7.10)

 7月10日の西域出土漢文文書ゼミに、中国社会科学院研究員の李錦綉氏が参加された。

 李錦綉氏は、唐代社会経済史の大家であり、主な著書に『唐代制度史略論稿』(中国政法大学出版社,1998)、『唐代財政史稿』全五冊(社会科学文献出版社,2007)などがある。氏は、中央アジア史にも関心を持たれており、広くユーラシア大陸の歴史を対象とした中文雑誌『欧亜学刊』の編集者でもある。

 今回のゼミでは、昨年詳細が公表された杏雨書屋蔵の「敦煌秘笈」コレクションより、新出の文書を取り上げたため、活発な議論となった。

 参加した学生にとっては、李錦綉氏の深い見識に触れることができた貴重な機会となった。(I.E.)

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新入生歓迎遠足・コンパ(2010.5.6)

 5月6日、東洋史研究室恒例の新入生歓迎遠足が開催された。

 本年は奈良国立博物館を訪れ特別展「大遣唐使展」を見学した。本展示では遣唐使が日本にもたらした文物はもとより、法隆寺旧蔵ソグド文字・パフレヴィー文字銘文付き香木、法門寺地宮宝物、唐代墓壁画、過所文書、闕特勤碑拓本、唐蕃会盟碑拓本など東洋史に関わる展示も直接目にすることができ、貴重な体験となった。

 博物館見学の後はいくつかのグループに分かれ、ならまちを散策する者、奈良公園で鹿と戯れる者、歴史ある寺院を訪れる者など、それぞれ奈良を満喫した。

 遠足の後は恒例の新入生歓迎コンパが難波で開催され、新入生に向けて教員や学生代表から歓迎の言葉が贈られた。新入生の自己紹介の場面では思いがけない質問も飛び出し、会場は大いに盛り上がった。

 新入生は、これを機に研究室に慣れ親しんでいってほしい。(Y.K.)

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春季ソフトボール大会 (2010.05.03)

 連休の中日の5月3日、初夏の強い日差しが差し込む中、猪名川河川敷運動場にて文院協主催のソフトボール大会が開催された。今季は東洋史、日本史、日本学、哲学、文学・言語学連合の5チームの総当りにより優勝が争われた。

2010年度春期ソフトボール大会集合写真
2010年度春期ソフトボール大会集合写真

 大会の結果は以下の通り。(+数字は女性点)

 優勝:日本学/2位:哲学/3位:日本史/4位:東洋史/5位:文学・言語学連合

 東洋史は4戦1勝3敗の成績で、4位に終わった。なお優勝は、日本学・哲学・日本史が3勝1敗で並んだ結果、じゃんけんにより日本学が秋春連覇を達成した。

 今季は4試合で46点を奪うなど打線が爆発した一方、守備面でのミスが大きく響いて勝敗を左右した。しかし、長年貧打にあえいでいた東洋史打線が強力打線に生まれ変わる兆しが見えている。投手力を含めた守備面を強化できれば、秋には優勝を狙えるはずである。東洋史黄金時代の到来は近い!(I.K.)

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新年度ガイダンス (2010.4.6)

 4月6日(火)、毎年恒例の東洋史研究室ガイダンスが行われた。本年度は、新2年生の7名と、上田新也(日本学術振興会特別研究員PD・ベトナム史)が研究室の一員に新たに加わり、博士前期課程に1名、後期課程に2名が進学した。ガイダンスでは、新加入の面々の自己紹介と、研究室の教育・運営方針や各演習・講義の説明、履修上の注意、研究室利用の諸注意がなされた。新年度のスタートとともに気持ちを新たにして日々の研究・学習に邁進してもらいたい。

 なお、本年度は非常勤講師として岸本美緒先生(お茶の水女子大学・明清史)に前期集中講義をお願いし、山内晋次(神戸女子大学・海域アジア史)・赤木崇敏(神戸市外国語大学・中央アジア史)両先生には前期に講義を、蓮田隆志(ベトナム史)先生に後期の講義をそれぞれお願いしている。(I.K.)

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モンゴル国現存遺蹟に関連する碑文の拓本, 電子画像として公開 (2010.4)
採拓当時のシネウス碑文・大断片(8世紀・ウイグル時代)
採拓当時のシネウス碑文・大断片(8世紀・ウイグル時代)
1996.8.31. (c) Bichees Project All rights reserved.

 東洋史学研究室に所蔵されているモンゴル国現存遺蹟に関連する碑文の拓本が,大阪大学図書館学術情報庫OUKA(桜華)で電子画像として公開されることとなった.

 これらの拓本は,1996年度から1998年度にかけてモンゴル国から将来されたものであり,森安孝夫教授が研究代表者となった「突厥・ウイグル・モンゴル帝国時代の碑文および遺蹟に関する歴史学・文献学的調査」プロジェクトの成果のひとつである.

 本プロジェクトの報告書は,森安孝夫・A.オチル(共編)『モンゴル国現存遺蹟・碑文調査研究報告』として1999年に公刊され,碑文読解の成果が多数収められているが,残念ながら拓本の写真は掲載されなかった.しかし今後は,それらの拓本画像を「大阪大学学術博物館・統合資料データベース」ならびに「大阪大学附属図書館・学術情報庫OUKA(桜華)」で閲覧できるのであり,プロジェクトの成果が広く周知されるとともに,突厥・ウイグル・モンゴル時代に作成された碑文研究のための根本的資料となるであろう.(S.K.)

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大阪大学大学院・文学研究科・東洋史学研究室