研究室だより (2012.10.〜2013.3.)
目次

博士論文公開審査(2013.2.4)
試問に臨む伊藤
試問に臨む伊藤

 昨年12月に提出された伊藤一馬(博士後期課程)の博士論文「北宋の軍事政策と東部ユーラシア情勢」の公開審査が、文学研究科棟本館・大会議室にて行われた。まず申請者の伊藤が論文概要を述べた後(約30分)、主査の荒川教授(約30分)、次いで副査の片山教授・田口准教授・桃木教授(各10〜15分)が試問・コメントし、最後にフロアからの質疑が為された。遠方からも多くご臨席を賜り、活発な議論が交わされた。(I.Y.)

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テムル副教授、阪大で講演(2013.1.30)
講演中のテムル副教授
講演中のテムル副教授

 1月30日(水)、南京大学歴史学系のテムル(特木勒、Temur Temule)副教授が「将帥家丁与明蒙関係:前近代長城沿線游牧―農耕関係重審」との題目で講演をされた。

 テムル氏は、16世紀末に起こったバハンナギの明朝投降をきっかけとする「隆慶和議」について、「なぜそれまで明朝とモンゴルとの間で和議が結ばれなかったのか」、という斬新な角度から明―モンゴル関係を検討された。

 従来は、貧困にあえぐ遊牧社会側が裕福な明朝側を略奪し、遊牧社会は明朝がなければ成り立たないという従属的な考え方が一般的であったが、テムル氏は「将帥家丁」の複雑で多様な出自を持つ人員構成、或いは「将帥家丁」の経済的基盤が「辺境地帯における略奪」から成立するなどの視点から、明代における農牧接壌地帯の特質を考察された。

 テムル氏の講演は、近年注目が高まっている農牧接壌地帯の歴史について、新たなパースペクティブから一石を投じるものであり、質疑応答では、明代沿海地域との比較やモンゴル語史料の可能性など、議論は活況を呈した。(Y.H.)

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片山教授・田口准教授ら、南京で学術調査(2012.12.16-27)
南京市内の古民居街 古民居の内部
南京市内の古民居街 古民居の内部

 2012年12月16日から27日にかけて、本研究室の片山剛教授、田口宏二朗准教授が南京にて史料調査・フィールドワークを実施した。今回の調査には、朱海濱教授(本研究室OB・復旦大学)、大坪慶之准教授(本研究室OB・三重大学)、山本一(大阪大学特任研究員)等が参加した。

 この調査は科学研究費補助金(基盤研究A)「中国における土地領有の慣習的構造と土地制度近代化の試み」によるもので、一行は南京市档案館等で史料調査を行い、民国時期における南京郊外の長江中洲の開発の様子や、地主と開発者との間の軋轢について記した档案や、民国時期の土地権利に関する裁判文書等を収集した。

 他にも档案史料中で問題となっている長江の中洲でフィールドワークを行ったが、高層ビルの建設が急ピッチで進み、また住民の立ち退きも行われていたため、今後古老への聞き取りや過去の景観の確認といった現地調査は困難が予想される。中国の急速な経済発展が、歴史研究に与える影響が少なくないことを実感した。また南京市内の古民居が残る地域を参観し、民国時期の戸地図に記された住居が多数現存しており、さらに住民からの簡単な聴き取り調査から、民国時期からの土地利用が現在も継続していることが確認できた。

 なお、片山教授は12月21日に南京大学歴史系において、「珠江三角洲地区漢族斉民社会的誕生及其特質」と題する学術報告を行い、南京大学の夏維中教授や大学院生と活発な議論を交わした。(Y.H.)

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Natalia Starostina准教授、阪大で講演(2012.11.14)
田口准教授(中央左)からのコメントを受けるNatalia准教授(中央右)
田口准教授(中央左)からのコメントを受けるNatalia准教授(中央右)

 11月14日(木)、アメリカ合衆国Young Harris collageのNatalia Starostina准教授が"Engineering the Empire of Images: Constructing Railways in Asia before the Great War"というテーマで講演を行った(片山教授・田口准教授のゼミと桃木教授のゼミの合同開催)。

 同氏は、19世紀末から20世紀初頭、フランスがインドシナ・雲南に当時最先端技術による鉄道敷設を敢行した折に、フランス国内の大衆小説や写真つき雑誌等がこのプロジェクトを仔細に記述・報道していた点に着目。共和政期のフランス国民編成が、文明化・工業化の橋頭堡というセルフ=イメージの形成過程と相即的であったことを示した。

 講演後、engineeringに対する高い意識、雲南での流通や労働力移動、ベトナムでの世界観と"civilizing mission"との絡み合いから、documentary historiographyとカルスタとの関係などに至るまで、数多くのテーマに関して1時間以上にもわたる白熱した質疑と議論が繰り広げられた。(Y.H.)

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岡田雅志(特任研究員)、史学会大会にて研究報告(2011.11.11)
発表中の岡田雅志
発表中の岡田雅志

 11月11日(日)、東京大学(本郷キャンパス)において開催された史学会第110回大会東洋史部会において、本研究室の岡田雅志(特任研究員)が「18世紀における中越境界地域の社会変容−諒山・高平地方における藩臣集団の形成をめぐって−」と題した研究報告を行った。本報告は、17世紀後半から同地方に出現する藩臣集団の形成について論じたもので、これまで国家間の関係から論じられることが多かったのに対し、碑文史料などを用いて在地社会の視点から検討を加えたものである。

 また、今大会では研究室OBの齊藤茂雄氏(甲南大学・四天王寺大学非常勤講師)が「突厥第二可汗国の内部対立−古代チベット語文書『北方誌』(P.t.1283)にみえるブグチョル('Bug-chor)の検討から−」と題する研究報告を行った。本報告は、チベット語文書に記述されるブグチョル十二部の淵源について、墓誌も含めた漢文史料を用いて分析し、突厥第二可汗国衰退の原因を考察したものである。(O.M.)

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秋季ソフトボール大会(2012.11.5)
優勝を記念して
優勝を記念して

 11月5日、猪名川河川敷のグラウンドにて文学部対抗の秋季ソフトボール大会が開催された。大会当日は予報よりも早く雨が降り始めたために決行できるか心配されたが、参加した6チームによる熱戦は無事に最後まで行なわれた。

 大会の結果は以下の通り。

 優勝:東洋史/2位:日本史/3位:西洋史/4位:哲学・哲学史/5位:文学・語学連合/6位:日本学

 東洋史は春季大会で逃した優勝を果たすことができ、昨年に続いて秋季2連覇を成し遂げた。

 今大会では例年の爆発的な打線に加えて投手を含めた守備が冴えわたり、予選リーグの2チームに大差をつけて勝つことができた。また、決勝戦では敵の堅い守備に苦しめられたが、諦めずに粘り強く守り打線を繋いだことが大逆転に結びついた。

 ここに東洋史は2008年以来の黄金期を迎えたと言える。しかし、現状に慢心することなく日々練習を積み重ね、来年の春季大会での連覇を目指したい。(M.N.)

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荒川教授、内陸アジア史学会で講演(2012.11.4)

 11月4日に北海道大学で内陸アジア史学会が開催され、荒川正晴教授が「前近代中央アジアの国家と交易」と題して公開講演を行った。

 発表では、遊牧国家・集団やオアシス国家による活発な使節の「やり取り(交換)」が、中央アジア地域のキャラヴァン交易の基盤を成すものであり,それはまたオアシス国家の農業をはじめとする諸産業の「あり方」を強く規定するものとなったことを明らかにした。

 この指摘は、「中央アジアのオアシス地域では、交易が大事か、農業が大事か」という、これまでの論争に一石を投じるものとなった。(M.N.)

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大阪大学大学院・文学研究科・東洋史学研究室