研究室だより (2013.4.〜9.)
目次

荒川教授、ワークショップを開催(2013.9.21-22)
荒川正晴教授
ワークショップの趣旨説明をする荒川教授

 2013年9月21日と22日の2日間にかけて、荒川教授の科研研究班「シルクロード東部の文字資料と遺跡の調査」と中央ユーラシア学研究会との共催ワークショップ「ユーラシア東部地域における公文書の史的展開 ――胡漢文書の相互関係を視野に入れて――」が開催された。

 北京大学の栄新江教授をお招きし、「新発見的唐代于闐地方軍鎮的官文書」と題して講演していただいた。阪大東洋史研究室からは、助教の赤木崇敏、さらにOBとして松井太氏(平成11年博士後期課程修了、現・弘前大学人文学部教授)、坂尻彰宏氏(平成15年博士後期課程修了、現・大阪大学全学教育推進機構准教授)、佐藤貴保氏(平成16年博士後期課程修了、現・新潟大学研究推進機構准教授)、伊藤一馬氏(平成25年博士後期課程修了、現・甲南大学文学部非常勤講師)が、それぞれ発表を行った。

栄新江教授(左)と通訳する白玉冬氏(右;平成22年博士後期課程修了、現・内モンゴル大学蒙古史研究所副教授)
栄新江教授(左)と通訳する白玉冬氏(右)

 本ワークショップは、時代・地域・言語の壁を越え、広く東部ユーラシアにおける文書行政を俯瞰し、文書の形態・処理手続きの変化、互いに及ぼした影響等について、各専門家が意見を出し合って検討する非常に貴重な機会となった。(H.H.)

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モンゴル採拓調査(2013.9.11-9.23)
採拓作業
ホショーツァイダム博物館での採拓作業
右からオチル博士、ハラホリン博物館ツァンバー学芸員、齊藤
[2013年9月16日 鈴木撮影]

 招聘研究員の鈴木宏節と特任研究員の齊藤茂雄がモンゴル国のハラホリン・ホショーツァイダムの古跡を訪問した。今回のミッションは、森安孝夫・本学名誉教授が代表する三菱財団人文科学助成金《中央ユーラシア遊牧文明世界における歴史書の誕生》プロジェクトによって実現したもので、突厥碑文のひとつ「ビルゲ=カガン碑文」の拓本を採取するというものである。同碑は突厥第二可汗国(682〜744年)の第三代カガンに捧げられたものであり、現在、世界遺産《オルホン渓谷の文化的景観》の中核をなす文化財に指定されている。

キョル=テギン廟
夕日を浴びたホショーツァイダムのキョル=テギン廟
[2013年9月14日 齊藤撮影]
チベット仏教寺院
ハラホリンのチベット仏教寺院エルデニ=ゾー外壁
[2013年9月14日 鈴木撮影]

 今回の採拓調査は、国際遊牧文明研究所のA.オチル博士、モンゴル国立大学講師のO.オユンジャルガル博士の協力を仰ぎ、モンゴル国の文科省の認可を得て実施された。一同は碑文が保存されている、モンゴル帝国の首都ハラホリン(カラコルム)近郊のホショーツァイダム博物館で採拓作業を行った。

今後、この拓本は裏打ちした上で本研究室に保管される予定であるが、写真撮影後は大阪大学博物館や図書館などのウェブサイトで一般に公開することも企図している。ビルゲ=カガン碑文の拓本は日本国内で所蔵されていない史料である。ほぼ同じ内容のテキストを含むキョル=テギン碑文の拓本(京都大学、広島大学、立命館大学、東洋文庫などで所蔵)とともに本邦の東洋史学のみならずトルコ・モンゴル学にも必ずや資することになろう。(S.K. & S.S.)


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片山教授、田口准教授ら、南京にて学術調査(2013.8.25-9.7)

 8月末から9月初旬にかけて、本研究室の片山剛教授、田口宏二熄y教授が南京にて学術調査を行った。今回の調査は、片山剛教授代表の科学研究費補助金(基盤研究A)「中国における土地領有の慣習的構造と土地制度近代化の試み」によるもので、大坪慶之准教授(本研究室OB・三重大学)、山本一(大阪大学特任研究員)等が参加した。

 今回の調査の目的は大きく分けて2点あり、1点目は南京市档案館や南京市図書館における文献史料調査、2点目は長江に浮かぶある中洲でのフィールドワークであった。

 特に2点目のフィールドワークでは、南京市という大都市の近くにありながら、今も都市郊外の農村風景が残る地域を訪れ、そこに住む古老から聞き取り調査を行った。古老からは、民国期における当該中洲への移住の情況や生活実態、秘密結社的組織の活動など、文献史料を裏付ける証言、また文献史料からはうかがえない証言を聞くことができ、今後の研究に大いに資することとなるだろう。(Y.H.)

古老に採訪する片山教授・田口准教授ら 農村風景が残る南京郊外の長江中州
古老に採訪する片山教授・田口准教授ら(左写真)/農村風景が残る南京郊外の長江中洲(右写真)
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若手アジア史論壇関西部会(2013.8.13)
発表中の遠藤
発表中の猪原および司会の齊藤
発表中の遠藤(上写真)/猪原(下写真・左)と司会の齊藤(同・右)

 8月13日(火)、大阪大学の文学部棟大会議室で若手アジア史論壇の関西部会が開かれた。

 若手アジア史論壇は、東方学会から支援を受けた研究会であり、若手研究者相互の交流を図ると共に、次代を担う研究者の育成とレベルの向上を目指した研究会である。主宰者はもちろんのこと、発表者や参加者も全て1980年代以降生まれを中心とする若手研究者で構成されている。今回の関西部会は、本研究室OBである齊藤茂雄によって主宰された。

 本研究室からは、博士後期課程の猪原と博士前期課程の遠藤が発表者として参加し、それぞれ『唐代宦官制度における中使就任者の実態に関する一考察内養と供奉官の比較から』、『北宋のチャンパー認識』というタイトルで発表した。

 会には京都大学や関西学院大学、同志社大学、立命館大学といった関西圏の大学はもちろんのこと、東京大学や早稲田大学など関東圏の大学からも多くの若手研究者が参加し、熱のこもった質疑応答が飛び交った。(E.S.)

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モンゴル・ウイグル調査(7.16-7.30 & 8.7-8.19)

 招へい研究員の鈴木宏節が、7月16日から30日までをモンゴル国で、8月7日から19日までを新疆ウイグル自治区で、現地調査を行った。

 7月の調査は、モンゴル科学アカデミー考古学研究所と協同で現存の突厥関連遺跡を調査する《ビチェース》プロジェクトの一環であり、本学外国語学部の大澤孝教授とともに実施したものである。本年は、ドンドゴビ県のデル山脈の銘文や、オブルハンガイ県・アルハンガイ県に散在する石人などを追跡。しばしば天候不順の豪雨や雷雨に見舞われながらも、およそ2,000kmの行程を走破することができた。今回の調査と成果報告をもって、2010年度にはじまる《ビチェース3》が終結するが、来年度以降も日本・モンゴル協同調査を継続してゆく予定である。

ドンドゴビ県デル山脈の砂礫を散歩するラクダ アルハンガイ県のエルデネマンダル遺跡

(左)ドンドゴビ県デル山脈の砂礫を散歩するラクダ[2013年7月23日 鈴木撮影]

(右)アルハンガイ県のエルデネマンダル遺跡[2013年7月27日 バヤンバット氏撮影]

右から石人同伴遺跡をスケッチする大澤孝教授、鈴木、考古学研究所研究員のフンドゥ氏

 8月の調査は、科学研究費補助金「牧畜文化解析によるアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明とその現代的動態の研究」[名古屋大学 嶋田義仁教授 代表]によるものであり、研究分担者である名古屋大学の中川原育子助教が企図されたものである。本年はユーラシア中央部に広がる新疆ウイグル自治区の、おもに北部の山岳草原地帯がフィールドとして設定された[昨年はおもに内モンゴル自治区の中西部]。金沢大学で考古学を専攻する大谷育恵氏(博士後期課程)も参加し、ボルタラ・モンゴル自治州やイリ・カザフ自治州などで、古代岩画や石人を実見したほか、各地の博物館で青銅器、金銀器などを参観。美術史学・歴史学・考古学それぞれの観点を活かした草原遊牧民の実態解明が期待される。(S.K.)

温泉県のボロタラ川沿いにカザフスタンを望む 額敏県の山岳草原に古代岩画を求めて

(左)温泉県のボロタラ川沿いにカザフスタンを望む[2013年8月9日 鈴木撮影]

(右)額敏県の山岳草原に古代岩画を求めて[2013年8月12日 鈴木撮影]眼前の山並みの向こうにアルタイ山脈が聳える

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明清史研究合宿2013(2013.8.7-8.9)

 8月7日から8月9日にかけて、2013年明清史研究合宿が吹田市のパナソニック・リゾート大阪にて開催された。

 合宿では、7日から8日にかけて若手研究者による3本の報告があり、初日に本研究室博士後期課程の多賀良寛が「近世ベトナムにおける銀山開発とベトナム銀の対中流出」というタイトルで報告を行った。若手報告ののちには、「越境する明清史」と題するシンポジウムが組織された。シンポジウムでは、地理学・政治学・経済学の分野より合計3本の報告が行われ、中国研究をめぐって異なるディシプリン間での相互交流が図られた。さらに最終日の総合討論では、これまでの諸報告で提出された論点を踏まえ、明清中国のモデル化の問題をはじめとする包括的な議論がかわされた。

 なお本年度の明清史研究合宿は阪大が主管校であったため、本研究室の教員、オーバードクター、大学院生および学部生が合宿の準備に携わり、当日はスタッフとして会場運営に尽力した。(T.Y)

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東洋史集中講義(2013.7.26-7.29)

 7月26日から29日にかけて、徳島大学から荒武達朗先生をお招きして前期集中講義が開講された。荒武先生は近現代華北の地域社会や移住民の問題を中心に研究を進められており、ご著書には『近代満洲の開発と移民』(汲古書院, 2008年)がある。

 講義では、まず日中間における農村社会の比較を通して中国社会の特徴が提示され、さらに総力戦体制と農村組織の関係、日中戦争時における山東省の地域社会の様相、中国共産党が地域社会に与えた影響といったテーマが取り上げられた。また講義中には、日本・中国側双方の同時代資料が多数用いられ、受講生は具体的かつ多面的に中国近現代史に接近することができた。(T.Y)

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ソフトボール親善試合(2013.6.9)

 今年の春季ソフトボール大会は、東洋史の卒論相談会と日程が重なってしまい、文院協への再三の申し入れもむなしく、東洋史研究室は出場できなかった。しかし、日本史・西洋史を中心にした各研究室の厚意によって、6月9日に猪名川河川敷グラウンドにて日本史連合チームとの親善試合を開催することができた。

 日程の関係上、フルメンバーを招集することはかなわず、ベテランを中心としつつ新人を多く起用して試合に臨むこととなった。序盤は、両チーム共によく守り接戦が展開された。特にショート(元主将)伊藤の堅守が目立ち、再三のピンチを粘り強く切り抜けた。しかし中盤以降、日本史連合チームの打撃が爆発し一気に差を広げられる。それまで粘ってきた東洋史チームの守備も、徐々に綻びが目立つようになり大量失点につながってしまった。途中2本のホームランによって必死の追い上げをみせるも、結果は及ばず、最終的にはダブルスコア以上の大差を付けられて敗れ去った。

 結果は非常に悲惨なものであり、秋に向けての課題が多く残された。特に守備の経験不足と、打ち損じの多さは緊急の課題と言えるだろう。しかし、そのような中にも少なからず得たものはある。まずは、期待の新人・原井の打撃である。スイングが安定し、しっかりと振り切る意識が、マルチ安打という結果につながった。次に、先発齊藤の後をうけてマウンドに立った眞嶋の投球が挙げられる。安打こそ多く打たれたが、日本史の強力打線に怯むことなく立ち向かい、ストライクゾーンで勝負することができたのは、秋季に向けて良い要素だったと言えるだろう。(E.S)

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多賀良寛(博士後期課程)、東南アジア学会にて研究報告(2013.6.1)

 6月1日(土)、鹿児島大学(郡元キャンパス)で開催された東南アジア学会第89回研究大会において、本研究室の多賀良寛(博士後期課程・日本学術振興会特別研究員)が、「19世紀ベトナムにおける銀納制の展開」と題した研究報告を行った。本報告は、貨幣としての銀が18-19世紀のベトナム社会に与えた影響を税制面から検討したものである。報告では、銀納制の展開過程を通時的に分析したのち、銀税 収入の地域的偏差や銀価騰貴が銀納制に与えた影響について考察を行った。(T.Y)

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新歓遠足・コンパ(2013.4.11)
新しいメンバーたち
新しいメンバーたち

 4月11日、新入生歓迎遠足が行われた。 今年の遠足は妙見山へのハイキング。晴天にも恵まれて、例年になく遠足らしい遠足となった。晩春の新緑の中、山尾をわたる心地よい風を肌に感じながら、山頂をめざしてのんびりと登る。皆、思い思いに会話や眺望を楽しみながら、各々のペースで登り切った山頂の光景は一入のものであったに違いない。

 山頂で休憩した後、少し下ったところで新入生歓迎のBBQコンパを行った。5つの班に分かれ、BBQを囲みながら各班内で自己紹介をした。その後、新入生た ちにはみんなの前で自己紹介をしてもらい、それに対する質疑応答を行った。例年、怒濤の様な質問攻めが繰り広げられる自己紹介タイムだが、とてもなごやかな雰囲気ですすみ、研究室に吹く新しい風の兆しを感じさせるものとなった。

 遠足とBBQコンパも無事終わり、新入生と研究室の距離も少しづつ縮んできているように思える。新たなメンバーの声が響く研究室は、東洋史の踏み出した新たな一歩といえるだろう。

 遠足最初の集合時間に幹事が遅刻したのは、ご愛敬ということにしてほしい。(E.S)

登山中の一行
登山中の一行
楽しいバーベキュー
楽しいバーベキュー
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新年度ガイダンス(2013.4.4)

 4月4日、平成25年度の東洋史研究室ガイダンスが行われた。本年度より研究室に新しく加わったのは、学部2回生9名、マスター2名、研究生1名、PD1名であり、さらにマスター2名、ドクター1名が内部進学している。これにより、本研究室は教員5名、学部26名、 マスター9名、ドクター10名、研究生2名、各種研究員8名の体制になった。

 なお本年度は非常勤講師として、森安孝夫先生(近畿大学特任教授)、鈴木宏節先生(本学招聘研究員)、岡田友和先生(日本学術振興会特別研究員PD、大阪大学)をお招きしており、さらに7月下旬には荒武達朗先生(徳島大学)による集中講義が開講される予定である。(T. Y)

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大阪大学大学院・文学研究科・東洋史学研究室