合同演習(卒論相談会)ルポ 

 10月18・19日,東洋史専攻の4回生にとって最後の関門となる,第3回卒業論文相談会が開催された。今後,東洋史専攻を希望する学生の参考に供すべく,その模様の一部をお伝えしよう。



 10月19日,日曜日,午前10時。東洋史研究室所属の教官・院生・学部生が文学部第一会議室に集まり,合同演習・卒論相談会が始まった。

 近年の全国的な「史学科ブーム」に伴って本学東洋史専攻学生も人数が激増し,ここ3〜4年間は1学年20人前後の学部進学者を迎えている。この結果,毎週木曜午前のゼミだけでは年3回の卒論相談会をこなしきれないので,3年ほど前から,卒論相談会のための合同ゼミは土・日曜日に朝から夕方までかけて行なうこととなったのである。

 ちなみに,今年度初めに卒論執筆を予定していた4回生は18名であった。このうち,3回の相談会全てにおいて報告を行ない,今年度卒業論文を執筆する資格を獲得した4回生は,昨日(18日)の発表者7名に今日の発表者7名を加えた合計14名となった。もちろんこの14名とて,無事締切までに提出できるかどうかは保証の限りではないわけだが。

 発表者の持ち時間は,報告・質疑応答時間を含めて1人40分。およそ25分程度で発表者は報告を終え,続いて質疑応答に入る。

 質疑応答に際し,積極的に発言するのはアジア諸民族史専攻の院生である。彼らは,発表者のわずかなミス・怠慢・論理の不通をも見逃さず,鋭い質問や厳しいコメントを容赦なく浴びせかける。これは下級生相手に演習漬けの毎日のウサを晴らしているわけでは決してなく,積年の演習で鍛えられた成果が「愛のムチ」として発揮されているのである。

 

 アジア諸民族史専攻の院生からのコメントが一段落ついた後,満を持していた教官からのコメントがある。
 最近の東洋史の教官は「まるくなった」と評判ではあるが,怠けている学生相手には,こんなシビアな発言が出ることも…
(以下,各教官の写真とコメントの内容とは,直接には関係ありません)


バンバン!!(机を叩く音)
「バカなことを言っちゃいけないよ!」


「こんなことやって,どこが面白いの?」


「いじわるな質問をさせてもらうとね…」


「この論文を読んでないなんて,言語道断ですよ」


「これぐらいのことは知っとかんと,お前はアホかということになります」


(昼休みに一服しつつ)
「彼がやろうとしているテーマは,もう中国の研究者がやりつくしているから,ムダですな」

 発表内容の出来不出来にかかわらず,議論が白熱すると,1人40分という制限時間を超え,1時間以上にわたることもしばしばである。
 今日の発表者は4回生7名に大学院進学希望の研究生1名を加えた計8名だから,単純に計算すれば今日の合計発表時間は5時間あまり,午後4時前後には終了の予定であったが,やはり予想以上に延長され,6時以降にまで及んだ。
 日も傾く頃には,厳しい質疑応答に刀折れ矢尽きた発表者たちの屍が,会議室内に累々と横たわることになったのである。

※文中の一部の箇所では,事実が誇張されているのでご注意下さい。


 ともあれ,4回生たちの卒業論文はもとより,出席する学生・院生の歴史学的センスも,厳しい合同演習を通じて磨かれていくのである。
 このような知的研鑽を経て卒業論文の提出段階で高いレヴェルに到達し,ほとんど手を加えることなく雑誌論文として掲載されているものさえ多数あることを付記しておこう。