荒川 正晴 教授 


 滞在先の内蒙古大学桃李湖賓館ロビーにて、ホグジルト副学長(左)より記念品の贈呈を受ける荒川教授(右) (2008年9月2日)
内蒙古大学桃李湖賓館ロビーにて、ホグジルト副学長(左)より記念品の贈呈を受ける荒川教授(右) [2008年9月2日]



2011年度の主な開講講義・演習 (開講区分/曜日と時限/対象学生)


●西域出土漢文文書演習(通年 木曜1限 院生)

 大学院生を対象とした演習で,トゥルファン・敦煌・コータンなど中央アジア諸地域から出土した漢文俗文書を,既発表の録文がある場合も含めて,直接写真から移録して解読・検討する。
 本学の森安教授や,吉田豊(ソグド言語学専攻)先生,大阪教育大学の伊藤敏雄(楼蘭史専攻)先生ら,関連諸分野の第一線で活躍する学外の諸先生をもお招きし,さらに,本学以外の学生も参加し,活発な議論を行なっている。
 本年度は,敦煌文献うち手紙文書を中心とし,併せてその他関連する文書も取り扱う。



●漢文演習(通年 金曜4限 院生)
  「北〜中央アジア史漢文史料読解」

 大学院生を対象に,唐代内陸アジア史に関わる漢文史料を講読する。
 これまで唐の中央アジア支配に関する問題は,「中国西域経営史」の一齣として漢や清などのそれと同一の俎上にのせて検討することが多く,それらとの性格の相違を意識的に論ずることはなかった。もちろん,漢や清およびそれに続く現時亜の中国が中央アジアを領有し,何れも「他人の手足」とも意識されていてた領域に,例外的に中国の支配を拡張したという点では一致している。したがって,唐の中央アジア支配の問題も,漢や清朝以降のそれも視野にいれ,そこに通底する性格を模索する必要があることはいうまでもない。しかしながら,当該時代に限定された個別的な分析を深め,それを通して唐の中央アジア支配の特質を模索することこそ先ずは為されるべき作業であろう。
 今期は,中央アジア支配に関わる漢籍史料として,九世紀に出された詔勅類,特に李徳裕の『会昌一品集』を取り上げて講読する。



●漢籍史料講読(通年 火曜5限 学部生)

 中国史以外の領域を志望する3年次生と、同じく中国史以外の領域を志望する4年次生のうち大学院志望者は、原則として全員必修である。ただし漢文以外の資料言語を独自に学習している者は、必修からはずす。
 中国内地に限らず中国周辺地域の歴史を探るのに、漢文史料の利用が不可欠となることは言うまでもなく、中国史以外の領域を志望する学生も、卒業論文の執筆に十分な漢籍読解能力を身につける必要がある。今年度は、昨年度に続き、正史外国伝のひとつである『新唐書』巻218、沙陀伝を講読する。百衲本をテキストとして使用する。校点本が存在するが、漢籍史料の読解力を深めるための演習でもあるので、先ずは白文と格闘することを義務づける。
 正史の成り立ちや正史外国伝というものの性格を踏まえ、正史以外の史料をも参照しながら講読してゆく。



●東洋史学講義「ソグドの歴史と文化」(2学期 火曜4限 学部・院生共通)

 イスラーム化以前の中央アジア史を捉える上で、ソグディアナから活発に東方へ移住していたソグド人の活動を検討することが不可欠な作業であることは言うまでもない。また彼らは経済面だけでなく、政治・軍事・文化面においてもユーラシア東部域で大きな影響力を有する存在となっていた。とくに近年、中国ではこうしたソグド人の墳墓や墓誌が新たに発見され、大きな注目を集めている。今後、ユーラシア東部地域におけるソグド人の役割を考えるうえでも、この発見が様々なヒントを与えるものとなることは疑いない。
 そこで本講義では、中央アジア史とソグド人に関する従来の研究の整理を行いつつ、ソグドの歴史と文化に関して、以下のトピックスを柱として講義を進める。
 (1)ソグド人の東方移住と交易・軍事
 (2)ユーラシア東部の歴史動向とソグド人
 (3)ソグド人の宗教信仰と東アジアの仏教文化