神山孝夫 『脱・日本語なまり:英語(+α)実践音声学』 (大阪大学出版会

解説と音声・映像データ 

(音声データ) (音声・映像データ) を含む付加的な情報を掲載しています。自習等にお役立てください。

正確な音声表記のため、一部で Doulos SIL font を使用しています。

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第T章 日本語の音と音声学の基礎 その1

 

映像 をクリック!を参考に、自分でも同じように、ゆっくり、はっきり、大きな声で 発音しながら、

自分の発音をばかりでなく も用いて確認してください。

日本語の音が発されるしくみと音声学の基礎が身に着き、耳も口も鍛えられることでしょう。

これこそが 「日本語なまり」 を脱するためのもっとも重要なプロセスです。

 

国際音声記号 IPA : the International Phonetic Alphabet) はこちら。 本書206頁に日本語版があります。

 

§

参考映像

ひとことアドヴァイス

声の介在

§8

   

喉に手を触れて 映像と同様に大きな声で!

有声音 無声音 の差異を把握してください。

両者の差を生む喉頭 で作られます。

男性(東日本出身)と女性(西日本出身)のの差異にも注目のほど!

鼻のはたらき

§9

   

鼻に手を触れて 映像と同様に大きな声で!

鼻音 口音 の差異を把握してください。

§10

   

で口の中を覗き、交互に口と鼻で呼吸しながら

口蓋帆 (軟口蓋) の動きを観察してください。

口蓋帆は口呼吸では上がり、鼻呼吸では下がります。

鼻音と口音の差異はこの動きから生まれます。

§11

ノーマル+スロー

いわゆる 鼻濁音 のガ行子音の例です。

今ではこれを用いるのは少数派ですが、

スロー映像によりこれが鼻音だとよくわかることでしょう。

閉鎖音

§12

   

パ行子音 [ p ]無声 両唇 閉鎖音 (破裂音) です。

§13

   

はっきり発音したバ行子音 [ b ]有声 両唇 閉鎖音 です。

§14

   

マ行子音 [ m ]有声 両唇 鼻(音化 閉鎖)音 です。

§15

   

無声 両唇 鼻音[ m̥ ] (mの下に丸)です。

要するに口を閉じた鼻息の音ですね。

 

§16

   

「タ、テ、ト」の子音 [ t ]無声 歯(茎) 閉鎖音 です。

§17

   

「ナ、ヌ、ネ、ノ」の子音 [ n ]有声 歯茎 鼻音 です。

舌先が歯茎に密着して発されます。

他方、「ニ」「ニャ」の子音は 有声 硬口蓋 鼻音 [ ɲ ] です。

舌先はどこにも密着せず、舌背前部が硬口蓋に密着しています。

 

ただし、概して西日本では「ニ」「ニャ」の子音として [ n ] の一種

(硬口蓋化した [ nʲ ]§49)を用いることが多いようです。

「ニ」「ニャ」を発するときに舌先が歯茎に密着していたら

このタイプの発音をなさっています。

 

§18

   

カ行子音 [ k ]無声 軟口蓋 閉鎖音

はっきり発音したガ行子音 [ ɡ ]有声 軟口蓋 閉鎖音 です。

§21

   

ノーマル+スロー

いわゆる鼻濁音 [ ŋ ]有声 軟口蓋 鼻音 です。

今日の日本語ではあまり使われなくなりましたが、

英語などを学ぶ人はきちんと習得しなければなりません。§120参照

   

[ ɡ ] で発音した場合。丁寧な発音です。

   

今日ではこれが最も一般的な発音です。

しかし、これは [ ɡ ] でも [ ŋ ] でもありません。

詳しくは§38を参照のこと。

 

§22

   

「促音」あるいは「つまる音」とも呼ばれる 「ッ」

次の子音を長く(一拍分)発音することです。

§23

   

次に子音がないとき

 「ッ」 はしばしば 声門 閉鎖音 [ ʔ ] として発音されます。

   

日本語では、区切って発音しようとすると、

声門閉鎖音が発されます。

摩擦音

§24

   

「フ」 の子音は 無声 両唇 摩擦音 [ ɸ ] です。

[ f ] とも [ h ] とも異なる音です。

§25

   

「ヒ」 の子音は 無声 硬口蓋 摩擦音 [ ç ] です。

[ h ] とは異なる音です。

§26

   

   

「ハ、ヘ、ホ」 の子音は原則的に 無声 声門 摩擦音 [ h ] です。

        

しかし、「ハ」 「ホ」 の子音は時にこれらと異なる音になります。

映像では 無声 軟口蓋 摩擦音 [ x ] の一種が用いられています。

§27

   

「国宝」 の発音

正確にすべての音が発音された場合。

第2音節の母音が脱落(無性化)した場合。

§85参照。

        

さらに第3音節の子音が [ x ] になった場合。

かなり頻繁に行われる発音です。

        

F1” の発音

 [ ɸ ] を用いた標準的な発音。

        

[ x ] を用いた場合。

F1中継をやっているアナウンサーも頻繁にこんな発音をします。

 

§29

   

「サ、ス、セ、ソ」 の子音 [ s ]無声 歯茎 摩擦音 です。

[ t ] の状態から舌先だけを下げて作られます。

映像ではその舌の動きを簡易的に指で表現しています。

§30

        

「シ」 の子音部は [ s ] より後ろ、かつ [ ç ] より前で調音される

無声 歯茎硬口蓋 摩擦音 [ ɕ ] です。

英語等で用いられる [ ʃ ] とは少し異なる音です。§111参照。

破擦音

§32

        

「チ」 の子音部は、[ t ][ ɕ ] が一体化して発される

無声 歯茎硬口蓋 破擦音 [ ʨ ] です。

英語等で用いられる [ ʧ ] とは少し異なる音です。§111参照。

§33

        

「ツ」 の子音部は、[ t ][ s ] が一体化して発される

無声 歯茎 破擦音 [ ʦ ] です。

有声摩擦音と有声破擦音

§34

        

「ザ、ズ(ヅ)、ゼ、ゾ」 の子音部には2通りの発音があります。

通例、語頭では破擦音 [ dz ]、語中では摩擦音 [ z ] が発されます。

それぞれ [ ts ], [ s ] の有声音です。

        

やや丁寧に発音した場合には、語中でも [ dz ] が発されます。

[ dz ][ z ] は日本語で区別されませんが、

英語等、外国語では区別されます。§110参照。

 

§35

        

「ジ(ヂ)」 の子音部には2通りの発音があります。

通例、語頭では破擦音 [ ʥ ]、語中では摩擦音 [ ʑ ] が発されます。

それぞれ [ ʨ ], [ ɕ ] の有声音です。

        

やや丁寧に発音した場合には、語中でも [ ʥ ] が発されます。

[ ʥ ][ ʑ ] は日本語で区別されませんが、これに類する

[ ʤ ][ ʒ ] は英語等、外国語では区別されます。§112参照。

 

§36

        

§3435に述べた音節の子音部は

「ッ」 の後では必ず破擦音として発されます。

 

§37

        

バ行 の子音部には2通りの発音があります。

通例、語頭では [ b ]、語中では 両唇 摩擦音 [ β ] が発されます。

後者は [ ɸ ] の有声音です。

スローモーション

        

よくわかりませんか?

ではスローモーションでご覧ください。

ほら、2番目の 「バ」 では唇が閉じていませんよ。

        

やや丁寧に発音した場合には、語中でも [ b ] が発されます。

[ b ][ β ] は日本語で区別されませんが、

この癖を保持すると英語等、外国語では誤解が生じます。

スローモーション

        

同じくスローモーションで確認してください。

語中でもちゃんと [ b ] が発音できるよう、

鏡で口を見ながら練習してください。

 

§38

   

§21で触れたように、語中のガ行子音には3通りの発音があります。

以下の@BAの順序で発音されています。

ノーマル+スロー

@ [ ŋ ] を用いた場合。東日本で用いられます。

ノーマル+スロー

   

A [ ɡ ] を用いた場合。やや丁寧な発音ですね。

ノーマル+スロー

   

B 有声 軟口蓋 摩擦音 [ ɣ ] を用いた場合。

これは§26, 27で紹介した [ x ] の有声音です。

今日では日本全国でこの音が一般的に用いられています。

§39

        

語中のハ行子音は語頭とは微妙に異なる発音になることがあります。

ノーマル+スロー

        

   

一瞬普通の [ h ] が発されている場合もありますが、

その直後には 有声 声門 摩擦音 [ ɦ ] が現れます。

ラ行の子音

§40

   

母音間のラ行子音は 有声 後部歯茎 たたき音(はじき音) [ ɾ ] です。

これは立派なR音です。

§41

   

上記以外のラ行子音は 有声 そり舌 閉鎖音 [ ɖ ]

あるいは 有声 そり舌 たたき音 [ ɽ ] です。

        

この子音とダ行子音の差異は微妙です。

§42

        

有声 (後部)歯茎 ふるえ音 [ r ] が用いられる場合もあります。

時代劇でおなじみでしょう。

これは世界中の多くの言語で用いられる標準的なR音です。

        

時に 有声 歯茎 側(面接近)音 [ l ] が用いられる場合もあります。

例えば桑田佳祐さんは歌の中で [ l ] を多用します。

この歌 ( 歌詞 ) の場合、ラ行子音が31回出てくるうち

27回(87%)が [ l ] でした。

残り4回は [ ɾ ] が発されています。

まれに、側面はじき音 [ ɺ ] という珍しい子音の用いる人もいます。

煩瑣を避けて捨象します。ご容赦ください。

半母音

§43

ノーマル+スロー

ヤ行子音はイの半母音あるいは有声 硬口蓋 接近音 [ j ] です。

左のスロー映像を見れば、

イを子音として使っていることがおわかりいただけることでしょう。

§45

ノーマル+スロー

ワ行子音はウの半母音、あるいは唇の丸めが弱い

有声 唇軟口蓋 接近音 [ w̜ ] です ( w の下に ( )。

ウを子音として使っていることがスロー映像でわかるでしょう。

拗音

§49

        

小さな「ャ、ュ、ョ」で表記される、いわゆる(開)拗音の子音部は

原則的に硬口蓋化子音です。 [ pʲ ] のように記されます。

        

上記以外にこれらが該当します。

        

イ列の子音が他列と異なる行の拗音です。

撥音ン

撥音」とか「はねる音」とも呼ばれる 「ン」 は実に様々な音として発音されています。

日本語なまりの最大の要因と言っていいでしょう。

§52

ノーマル+スロー

        

        

        

両唇音の前では [ m ] と発音されます。

ノーマル+スロー

        

        

        

歯茎音の前では [ n ] と発音されます。

ノーマル+スロー

        

        

硬口蓋音の前では [ ɲ ] と発音されます。

ノーマル+スロー

        

        

軟口蓋音の前では [ ŋ ] と発音されます。

§54

   

母音の前では鼻母音として発音されます。

ノーマル+スロー

        

   

スローモーションで確認してください。

   

この鼻母音 [ n ] だと誤解している人が多く、こんな誤りが多発します。

   

もちろん正しくはこうです。

日本語を学ぶ外国人にとっては、この発音が難しいようです。

    ノーマル+スロー

        

こう言ったら通じないでしょうね。

§55

ノーマル+スロー

   

   

半母音の前でも、やはり鼻母音として発音されます。

        

   

代わりに [ n ] を使ったらちょっと通じないでしょう。

§56

ノーマル+スロー

   

サ行子音の前でも鼻母音として発音されます。

        

ノーマル+スロー

        

ハ行子音の前でも鼻母音として発音されます。

   

   

こんなふうに、代わりに [ n ] を使ったら通じるでしょうか。

§57

        

   

        

ザ行子音の前では2通りの発音があります。

ザ行子音が摩擦音として発音される(通常ないし早口の)場合、

鼻母音として発音されます。

        

   

        

ザ行子音が破擦音として発音される(ゆっくり念入りの)場合、

[ n ] として発音されます。

§58

        

   

ラ行子音が [ ɖ ] として発音される通常の場合、

その前の そり舌 鼻音 [ ɳ ] として発音されます。

        

   

ラ行子音が [ l ] として発音されるややめずらしい場合、

その前の [ n ] と発音されます。

        

   

[ n ] で、ラ行子音を [ r ] で発音した場合。

日本語を学ぶ外国人にこんな発音がまま聞かれますが、

通じないかもしれませんね。

§59

ノーマル+スロー

後続音がない場合、口蓋垂 鼻音 [ ɴ ] として発音されます。

鼻母音や、[ m ] が用いられる場合もあります。

 

ローマ字では n と書かれますが、

断じて [ n ] と発音されることはありません。

   

   

§60

   

上のような事情を無視して、芸能界などでは

「ン」 [ m ] と発音する 根拠のない 指導が行われているようです。

日本語の習慣に合致した発音は左の映像です。

   

しかし、歌手の方々はこんな 妙な 発音を強いられています。

関係者に善処を切に望みます。

天童(吉田)よしみさん 「大ちゃん数え歌

アニメ 「いなかっぺ大将」 のオープニングソングです。

残念ながらレコーディング時の口の動きは見えませんが、

該当部分は [ temtemtemkano ] と聞こえます。

ライブ映像

妙な規範意識が薄れたのでしょうか。

やや奇妙さは軽減されて

該当部分は [ tenteɴm temkano ] と言っているようです。

秋川雅史さん 「千の風になって

目で見て明らかなように

[ semnokazeɲi semnokazeɲinaːtːe ] と言っています。

 

序章 気づかない日本語なまり

第T章 日本語の音と音声学の基礎 その2

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