神山孝夫 『脱・日本語なまり:英語(+α)実践音声学』 (大阪大学出版会

解説と音声・映像データ 

(音声データ) (音声・映像データ) を含む付加的な情報を掲載しています。自習等にお役立てください。

正確な音声表記のため、一部で Doulos SIL font を使用しています。

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第U章 英語の音と日本語なまり その1

 

音声や映像を参考にして、ゆっくり、はっきり、大きな声で 発音しながら、

自分の発音を ばかりでなく も用いて確認してください。

§

映像・音源

ひとことアドヴァイス

 

§91

もちろん英語には様々なヴァリエーションがあります。

(興味のある方は例えばこちらを覗いてみてはいかがでしょう。)

しかしながら、やはり手本とすべきは下記の2つでしょう。

  英国標準発音 (RP

    一般米発音  GA

以下ではネイティヴによる録音掲載箇所にこれらの旗を用います。

GAばかりを重んじる人が多いようですが、RPを軽んじることは感心しません。

英語は本来英国の言語ですし、英国ばかりかオーストリアやニュージーランド、

さらには米国北西部でもRPに準じる発音が用いられています。

是非、両方の発音に慣れて、相手によって使い分けてください。

母音の有無を知る

― 脱・日本語なまりの基礎 ―

§94

まずは余計な母音を言わない練習が必要です。

up

無声子音に終わる単語

 

列はよくある日本語なまりの誤った発音です。

語末の子音の後に余計な母音がくっついています。

列の映像に倣い、喉に手を触れて、

語末で声が出ないようにしてください。

ship

cap

cat

hat

coat

steak

cook

back

dice

house

mouse

bush

dash

push

catch

much

touch

time

有声子音に終わる単語の手はじめ

[ m ] に終わる単語

語末ですぐに口を開かないように

come

steam

 *

web

[ b d ɡ ] に終わる単語

これらの場合には

末尾でちょっとだけ声が出ちゃってもかまいません。

 

* [ b ] の位置で [ β ] が発されています → §37

 

その他の子音は別途練習を要するので省略。

 *

snob

cab

sad

mad

mud

bag

bug

hug

  

上の映像を参考にして、ご自分の症状を把握し、

充分練習した上でネイティヴの発音を聞いてください。

 

§95

上と逆のようですが、ちゃんと必要な母音を言う練習も必要です。

ノーマル+スロー

日本語話者は、例えば Chicago や city の赤字部分を

脱落無性化させる誤りを多発します。→ §85

左の映像では母音が二つ抜けて [ ɕkaɣoɕtiː ] と発音されています。

[ ɡ ] の位置で [ ɣ ] が発されています → §38

ノーマル+スロー

喉に手を触れてChicago city の赤字部分の母音が

ちゃんと発音されているか確認してください。 → §8

  

充分練習した上でネイティヴの発音を聞いてください。

ただし、comfortable や police の赤字部分は脱落してもかまいません。

これは、もっとも弱い音節の母音が脱落する現象です。→ §167

§96

ノーマル

+スロー

ノーマル

+スロー

Picaso

上と同じ趣旨の練習です。

きわめて多くの方

今まで間違った発音をしてきたはずです。

しつこく練習してください。

participate

chicane

hospital

beautiful

architect

occupation

reputation

  

充分練習した上でネイティヴの発音を聞いてください。

§100

あまり知られていないようですが、

実は多くの方が [ l ] を正しく発音できません

くれぐれも慎重に練習してください。

   

舌先を上の前歯の後ろにくっつけたままで声が出せますか?

それが [ l ] です。

   

うまくいかなければ、

舌先を上の前歯の後ろにくっつけたまま口で呼吸してからどうぞ。

§101

  

lie, rye の順に発音してもらいました。

上で練習した [ l ] の状態からゆっくりと舌先を前歯の後ろから離します。

するとこんな正しい発音ができます。ちゃんと lie と理解されますよ。

いい加減に日本語のラ行の発音をした場合です (→ §40以下)。

場合によって rye あるいは die と理解されることでしょう。

§102

  

英語の癖として、次に母音がない場合、

暗い L [ ɫ ] と呼ばれる変種が使われます。

[ l ] を発しながら(あるいは)を言おうとすると

[ ɫ ] が簡単にできますよ。

 

§103

お待ちかねの R の番です。

英語の標準的な R[ ɹ ] (主に英)あるいは [ ɻ ] (主に米)と記される

やや特殊な音で、他の言語ではほとんど用いられません。

(以下では代表として [ ɹ ] を記します)

以下の順序で練習するのはいかがでしょうか ([ ɻ ] の場合)。

なかなか効果的のようですよ。

@ 普通に [ da ] と発音してください。

A 舌先が上あごに触れる位置を1cm程うしろにずらす( [ ɖa ] )。

B 舌先を上あごから少し離す。これでほぼ完成。

C 唇を少し突き出すと独特の響きが得られます。

  

[ ɹ ][ l ] で意味が変わる単語若干。

 

§104

付加的な情報です。

英語の R には他の音が用いられることもあります。

今では上記の [ ɹ ] がかなり支配的になりましたが、

かつて RP では母音間 (語境界を越えてもOK) や th, b, g の後で

[ ɾ ] がさかんに用いられました (→ ラ行子音§40)。

 

左はここまでに掲載した音源等の中で [ ɾ ] が用いられているものです。

今では古臭い、あるいは気どった(また田舎くさい)イメージを

与えるのだと思いますが、もちろん立派に通用します。

The BeatlesWhen I’m Sixty-Four という歌にも

数箇所で [ ɾ ] (と [ r ]) が用いられています。

歌詞は例えばこちらにあります。

 

例えばラテン系の人は、英語で話す際に

しばしば [ ɾ ] [ r ] を用いますが、

やはり問題もなく通用します。

(多少なまっていると聞こえることでしょう)。

左にリンクしたのはF1ドライバーが英語で話している映像です。

彼らの語学力は大したものですよ。

流暢に数ヶ国語話す人も珍しくありません。

Fernando Alonzo はスペインの、

Ayrton Senna はブラジルの出身です。

Senna はときどき [ ɹ ] も用います。

 

[ ɾ ] [ r ] ばかりか、(あまりほめられたことではありませんが)

[ ʁ ](フランス語のR)や [ ʀ ](ドイツ語のR)を使っても

ちゃんと英語でのコミュニケーションは成立します。

[ f ] [ v ]

§105

§106

意外でしょうが、これらが正しく発音できない人はもとても多いんです。

これまで適当に済ませてきた方は心を入れ替えて練習してください。

[ fːːː ]

もちろん英米で差はありません。

上の前歯で見えるように。また長めに。

下唇は上の前歯の下端に軽く接触します。

 

§107

[ fːːːvːːː ]

もちろん英米で差はありません。

上に同じ。途中からを加えて。

  誤!

こんな音を用いるひどい誤りも聞かれます。

(異常音声を記すためのExtIPAで [ b̪ ][ b ] の下に

table と呼ばれる符合を加えます)と書かれます。

この音を使う言語はありません。)

下唇を思いっきり噛んではいけません

2008年に放送されていたTVコマーシャルから。

最後に [ b̪ ] が発されているようです。

[ b ] [ v ][ b̪ ] を混乱しているのでしょうか。

[ θ ð ] [ s z ]

§108

これらも大問題です。しつこく練習してください。

まずは [ s ] を長く発してください。

今度は途中から上下の前歯の間を少しあけましょう。

舌を噛んではいけませんよ。歯は舌に軽く触っているだけです。

この弱々しい音が [ θ ] です。

  

[ s ][ θ ] で意味が変わる単語

 

§109

[ θːːːðːːː ] (英米で差はありません)

上に同じ。途中からを加えて。

単独の [ ð ] です。

 

§110

普通の日本語話者は [ z ] を正しく発音できません。

[ sːːː ] 声を加えて

[ sːːːzːːː ] を何度も練習してください。

普通の日本語話者は [ z ] [ dz ] を区別できません。

[ ts ] 声を加えて

[ ts  dz ] を何度も練習してください。

これが単独の [ z ] です。

これが単独の [ dz ] です。

  

[ z ]  [ dz ]  [ ð ] で意味が変わる単語等

何度も聞いて正しく繰り返してください。

[ ʃ ] [ ʒ ]

§111

[ ʃ ] は日本語の「」の子音 [ ɕ ] と少し違います。

日本語の「」の子音 [ ɕ ] を発しながら口の形を変えましょう。

すぐに標準的な [ ʃ ] ができます。

[ ʧ ] も同じ要領で。

ネイティヴの発音を確認してください。

英米で差はありません。

 

§112

日本語話者にとって [ ʒ ] [ ʤ ] での区別は大問題です。

[ ʃ ] を長く発音し、途中から声を加えると [ ʒ ] になります。

[ ʧ ] に声を加えれば [ ʤ ] になります。

これが単独の [ ʒ ] です。

英語では語頭に現れません。

これが単独の [ ʤ ] です。

  

[ ʒ ] [ ʤ ] で意味が変わる単語・表現

(ただし、 ではleisure が [ ˈliːʒɚ ] と発音されますから、

ledger [ ˈʤɚ ] とは母音部の発音も異なります。)

The BeatlesShe Loves You を聞いてください。

ちゃんと [ ʃiːlʌvʒuː ] と言っています。

(正確には ʌ ɐ です §80, 133

歌詞は例えばこちらにあります。

 

§113

特に [ i ] の前で [ s ] [ ʃ ][ z ] [ ʤ ] を混乱している人がいます。

その原因はもちろん日本語にあります。

日本語では [ takɕiː ] ですね。無声化した母音は捨象しました。

でも、英語では [ tæksiː ] です。

同様に、日本語では [ ɕiːdiː ] ですが、

英語では [ siːdiː ] です。

[ si ] はちゃんと言えますか?

[ ɕi ] [ ʃi ] とは異なります。

[ zi ] はちゃんと言えますか?

[ ʥi ] [ ʤi ]、 あるいは [ ʑi ] [ ʒi ] とは異なります。

  

[ s ] [ ʃ ][ z ] [ ʤ ] で意味が変わる単語

 にはちょっと下品な単語を含むペアが含まれていません。)

[ h ]

§114

実は日本語話者は [ h ] も苦手です。

   

まずは [ i ] などの前の [ h ] が問題です。

こんな間違いがよく聞かれます。

何が違うのかわかりますか?

   

正しくはこうです。

」の子音 [ ç ] を使っちゃいけないんです。

こんな練習をたくさんしてください。

[ i ] の前で [ h ] の発音に慣れたら

ようやく he が正しく発音できますね。

  

ではよく聞いてまねしてください。

 に加えられている behind に有声の [ ɦ ] が聞かれます。

 

§115

次の問題は [ u ] などの前の [ h ] です。

こんな間違いがよく聞かれます。

何が違うのかわかりますか?

正しくはこうです。

」 の子音 [ ɸ ] (や [ x ] を使っちゃいけないんです。

こんな練習をたくさんしてください。

[ u ] の前で [ h ] の発音に慣れたら

ようやく who が正しく発音できますね。

  

ではよく聞いて繰り返してください。

[ f ] の復習も兼ねています。

[ w ]

§116

  

映像は wear の発音(米音)です。

唇を激しく丸めて突き出してください。

[ ʍ ]

§117

  

wh はかつて [ ʍ ] (一般の辞書等では略式[ hw ]

発音されました (例外は who whole [ h ])。

しかし、今日では英米ともに [ w ] が一般的です。

無用の誤りを避けるためにも、是非 [ w ] と発音してください。

例えば where wearwhyYwhiteWight 等は同じ音になります。

[ j ]

§118

[ j ]の子音ですから日本語者には何の問題もないはずです。

しかし、[ i ɪ ] 等の前では少し練習を要します。

例えば east は簡単ですね。

他方 yeast の語頭では通常の接近音(半母音) [ j ] ではなく、

意図的に摩擦音の [ ʝ ] を発しましょう。

の子音 [ ç ] に声を加える練習ですぐにできます。

  

上の練習が済んだらどうぞ。

[ m ]  [ n ]  [ ŋ ]

§119

日本語話者にとって [ m ] [ n ] は簡単のはずです。

でも、[ ɲ ] を用いるこんな間違いが多発します。

正しい発音では [ n ] が用いられます。

舌先だけが上の前歯の後ろにくっつくように。

  

上の練習が済んだらどうぞ。

 

§120

他方、[ ŋ ] は多くの日本語話者にとって大問題です。

(鼻濁音を用いる東日本出身の方には簡単のはずです。)

まずは§38を復習して事情を理解してください。

どこのご出身であっても 「トカツ」 の 「」 は [ ŋ ] です。

繰り返し 「トン〜〜カツ」 と発音して [ ŋ ] に慣れてください。

では、そろそろ [ ŋːa ] と言えますか?

(仮名書きでは 「ンガ」 でしょうか)

子音部を短くしてみましょう。

(仮名書き 「」 でしょうね)

以上がOKなら、手はじめに 「ショウヤキ」 の

赤字部分を [ ŋa ] で言う練習をお願いしましょう。

 

§121

上で [ ŋa ] は習得していただけましたね?

では、これと紛らわしい [ ŋɡa ] を練習してください。

  

以上をクリアしてから、これらを練習してください。

 

§122

語末にある [ m ] [ n ] [ ŋ ] の区別もやはり大問題です。

まずは画面を見ないで、耳だけで判断しましょう。

最後の子音は何ですか?

何度もトライして耳を鍛えてください。

(おわかりのとおり、上から順に [ m ] [ n ] [ ŋ ] です)

  

上がすべてクリアできてから挑戦してください。

上の例にはビートルズの歌の一部が含まれています。

これ以降、様々な歌が出てきますのでお楽しみください。

When I’m Sitxty-Four  歌詞

I’ve Just Seen a Face  歌詞

A Hard Day’s Night  歌詞

It’s been a hard day’s night ...

Let it Be  歌詞

When I find myself  in times of trouble ...

[ p b ]  [ t d ]  [ k ɡ ]

§124

  

  

英語では、アクセント母音の前にある [ p t k ]

猛烈な息の音aspiration)を伴います。

(前に [ s ] がある場合を除く)

映像は少し大げさですが、ティッシュを用意して練習してください。

  

上がクリアできてからどうぞ。

 

§125

既述のように、日本語話者は母音間で

しばしば [ β ] [ ɣ ] を用います。

正しく [ b ][ ɡ ] を発することが困難なら、

これらの前に 「」 があるつもりでどうぞ。

  

上がクリアできてからどうぞ。

 

§126

英語の閉鎖音は場合よって通常とは異なる発音になることがあります。

リスニングのためには心得ておかねばなりませんが、

通常の発音でまったく問題なく通用しますので

無理にまねする必要はありません。

  

文末、フレーズ末の閉鎖音はしばしば無開放となります。

左の録音で無開放になっている箇所を探してください。

[ t ] は時に声門閉鎖音 [ ʔ ] として発音されます。

主に  において、

有声音にはさまれ、無アクセント母音に先行するとき、

[ t ] [ d ]たたき音 [ ɾ ] として発音されることもあります。

例に用いた表現を含む歌をお楽しみください。

The Beatles,  A Day in the Life  歌詞

無開放の閉鎖音がたくさん出てきます。

Cream, White Room  歌詞は画面に出ます

正確に [ waɪt ɹuːm ] と言っていますが [ waɪʔ ɹuːm ] も可能です。

The Beatles, Sexy Sadie  歌詞

What have you done? t [ ʔ ] と言っています。

The Beatles, Tell me What you See  歌詞

下線部を [ tʃ ] と言っていますが、[ ʔj ] も可能です。→§166

The Eagles, Take it Easy  歌詞

下線部に [ ɾ ] が用いられています。

The Carpenters, Top of the World   歌詞は画面に出ます

not a cloud in the sky [ ɾ ] が用いられています。

 

第T章 日本語の音と音声学の基礎 その2

第U章 英語の音と日本語なまり その2

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