神山孝夫 『脱・日本語なまり:英語(+α)実践音声学』 (大阪大学出版会

解説と音声・映像データ 

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第U章 英語の音と日本語なまり その2

 

音声や映像を参考にして、ゆっくり、はっきり、大きな声で 発音しながら、

自分の発音を ばかりでなく も用いて確認してください。

§

映像・音源

ひとことアドヴァイス

イに類する母音

§128

  

長い [ iː ] は日本語話者にとって簡単です。

短い [ ɪ ]の中間の音です。

ではありません。むしろのほうが近いかも。

エに類する母音

§129

  

[ ε ] も日本語話者にとって簡単です。

ややだらしなく口を開け気味にしてください。

 

§130

  

英語にエーに当たる音はありません。

エーにやや似ているのは二重母音の [ eɪ ] です。

[ e ] の部分が長く、徐々に口の開きが狭まります。

英語では開音節(母音に終わる音節)に [ ε ] が生じません。

このような位置にある外来語の [ e ] [ ε ]

英語では一般に [ eɪ ] となります。

ただし、録音にご協力いただいたお二人はインテリですので、

原音に近い発音をなさっている箇所もあります。

アに類する母音(1)

§131

英語の発音でもっとも厄介なのは

にあたる母音がたくさんあることでしょう。

いい加減に済ませてきた人が多いはずですが、

この機会にしっかりと学びなおしてください。

必ずできるようになりますよ。

 

§132

英米で大して差がないものを先に扱います。

  

 [ æ ]

口を縦にも横にも大きく開けて、アーと言ってください。

りんごを丸かじりするときの口の形がベストです。

よくの中間だと説明されますが、

そのような説明も妥当でしょう。

長母音と言っていいほど長い点にはご注意の程。

基本母音4番  のやや狭い変種とも言えます。

英米の中でもやや違いがありますが、あまり気にしなくても大丈夫です。

何だかかっこいいと思うのでしょうか。

他の母音の代わりにこれを用いる誤りが多発します。

Chicagoの第2音節では§134で扱う [ ɑː ] を用いねばなりません。

ついでながら、それに続く単語はcityのつもりのはずですが、

間違いなく shtty と聞こえます。→§113

ヤバイ誤りです。

 

§133

   

  

[ ʌ ]

口が半開きで充分でしょう。

英米の中でもかなりの地域的な違いがありますが、

映像のような発音で立派に通用します。

慣用に従い上の記号を用いますが、

本来ならば [ ɐ ]  と記されるべき母音です。

 

§134

   

  

[ ɑː ]

コーラスの発声練習のように

口を縦に大きく開けてアーと言いましょう。

ほぼ基本母音5番  です。

 

§135

   

  

[ ə ]

§133よりもさらに口の開きが小さいです。

弱い音節にしか現れず、しばしば脱落します。

 

一般の辞書等で略式[ ər ][ əːr ] と記されている母音は

上記の [ ə ] とはまったく異なる母音です。

§136-138でしっかり学んでください。

The Beatles, A Day in the Life  歌詞

[ æ ʌ ɑː ə ] を探してください。

アに類する母音(2)

以下は英米で大きく異なります

是非両方の発音に慣れてください。

urn, serve, dirt 等では英米でまったく異なる母音が用いられます。

一般の辞書等では英米の発音をまとめて略式[ ər ][ əːr ] と記しています。

§136

§137

   

 では [ əː ] が用いられます。

§135で紹介した母音をただ長く言えば結構です。

にっこりして、前歯をむき出しにするのがコツでしょうか。

   

 では [ ɚː ] が用いられます。

@  そり舌母音

A もり上がり舌母音

という2種類の発音が可能で、

どうやら舌先を使う @ ばかりが教えられているようですが、

優勢なのは舌背を用いる A です(映像の発音も A です)。

[ x ][ ɣ ] から舌先を引っ込めて唇を突き出す

§137に記した練習法を試してください。

何だかかっこいいと思うのでしょうか。

他の母音の代わりにこれを用いる誤りが多発します。

こんな馬鹿な間違いをおかすと

例えば carcur 「野良犬」 と聞こえちゃいますよ。

ヤバイ誤りです。

 

March, art, car 等では英米で異なる母音が用いられます。

一般の辞書等では英米の発音をまとめて略式[ ɑːr ] 等と記しています。

§139

   

 では [ ɑː ] が用いられます。

§134で学んだのと同じ母音です。

   

 では [ ɑɚ ] が用いられます。

上の母音に§137で学んだ [ ɚ ] を軽く添えます。

 

以上をまとめ、ask words と呼ばれる有名な英米の差異を紹介します。

§140

 では [ ɑː ] が用いられます。

 では [ æ ] が用いられます。

 

その他、英米で発音に差異が見られる単語を紹介します。

特に綴り ur 等の発音が英米で大きく異なります。

§141

ur 等が [ ʌ ] と発音されます。

ur 等が [ ɚː ] と発音されます。

オに類する母音

§142

に類する母音は1個だけ (  のみ) です。

[ ɔ ]

大きめに口を開けて発したです。

わが国での慣用に従い上の記号を用いましたが、

基本母音6番  よりもやや広いので、

基本母音13番  の記号 [ ɒ ] で記すのが本式です。

[ ɑ ]

対して  では唇の丸めがなくなり、こんな発音になりました。

長く発音されることもあります。

§134で学んだのと同じ母音です。

 

§143

オーに類する母音(群)は3種類あります。

[ ɔː ]

今のところ英米の別なく広口のオーで充分ですから、

特に練習を要しません。

やや付加的な情報ですが、英米間で徐々に差異が生じつつあります。

 では口が小さくなって [ oː ] に転じる傾向があり、

 では逆に口が大きくなって [ ɒː ]

さらには唇の丸めがなくなって [ ɑː ] と発音されるようになってきました。

 

§144

綴り OR 等の場合には英米で明らかな差があります。

一般の辞書等では英米の発音をまとめて略式[ ɔːr ] 等と記しています。

[ ɔː ]

上に同じ。

[ ɔɚ ]

[ ɔ ] [ ɚ ] を軽く添えます。

上と違って、口の開きは大きくなりません。

 

§145

二重母音 [ oʊ ] 等と以上のまとめ

[ oʊ ]

で唇を丸めればオウで充分です。

[ əʊ ]

英国を含めて英語圏全域で [ oʊ ] はちゃんと通用しますが、

 では [ o ] が唇の丸めを失い、

 [ əʊ ] と発音されるようになっています。

 

かつてこの発音は好ましくないと考えられていて、

My Fair Lady の Eliza は Higgins 教授から

[ əʊ ] と言うな。[ oʊ ] と言え。」

という趣旨の指導も受けていました。

ウに類する母音

§146

  

[ uː ]

ウーに類する母音は当然これだけです。

日本語の  とは著しく異なるので、まずは  §76)を参考に

基本母音8番  の練習をすることをお勧めします。

 

以下は付加的な情報です。

例えば cool ではこれに近い母音が発されますが、

two のように歯茎音に後続すると [ ɪu ] のようにも発音されます。

§147

  

[ ʊ ]

一般書では [ u ] のように書かれることがありますが、

上の [ uː ] とは異なる母音  ですので

専門的には別の記号で表されます。

日本語話者にとっては、ぞんざいに発音した

(つまり少し中舌化した)が最も近いと思います。

あまり唇を丸めない変種もありますから

(あまり積極的にはお勧めできませんが)

極論すれば、でも通じることでしょう。

二重母音など

§148

  

[ aɪ ] [ ɔɪ ]

前半部が長くなめらか [ ɪ ] に近づきます。

 

§149

  

[ aʊ ]  上と同様に前半部が長いことに注意。

[ juː ] 歯茎音の後では [ j ] が脱落する傾向があります。

 

§150

[ ɪə ] [ ɛə ] [ ʊə ]

[ ʊə ] はしばしば [ oː ] となります ( sure, poor 等)。

The Beatles, Help   歌詞

assure や insecure に上の現象が聞かれます。

The Beatles, Mother Nature’s Son   歌詞

poor に上の現象が聞かれます。

[ ɪɚ ] [ ɛɚ ] [ ʊɚ ]

 では [ ə ] の位置に [ ɚ ] が用いられます。

[ ʊɚ ] はしばしば [ oɚ ] となります。

 

§151

[ jʊə ]     しばしば [ joː ] となります  your, you’re  等)。

[ aɪə ]    [ a ] の部分が長い。 [ aː(ə) ] とも(古めかしい)。

[ aʊə ]    [ a ] の部分が長い。 [ ɑː(ə) ] とも(古めかしい)。

[ jʊɚ ] [ aɪɚ ] [ aʊɚ ]

 では [ ə ] の位置に [ ɚ ] が用いられます。

[ jʊɚ ] はしばしば [ joɚ ] となります。

The Carpenters, Top of the World  (歌詞は画面に出ます)

your you’re に上の現象が聞かれます。

 

§152

本文掲載の表をご覧になり、

英語の綴りと発音の関係を整理してください。

この関係が他の言語よりはるかに複雑なのは

15〜17世紀に生じた大母音推移 (the Great Vowel Shift)

と呼ばれる現象に起因しています。

15世紀はじめのスペリングが保たれ、

発音だけが変化したのです。

 

第U章 英語の音と日本語なまり その1

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