英語圏で出版された日本語習得研究の文献

吉岡 薫


以下は、最近主に北米で出版された第二言語としての日本語習得に関係する論文の例(アルファベット順)である。文法項目の習得、種々の言語/認知プロセス、データ処理、情意面の影響、語用論、カリキュラム作成に関わる論文を含んでいるが、社会言語学、心理言語学関係のものは入っていない。「第一言語」はL1、「第二言語」はL2、「目的言語」はTL、「第二言語としての日本語」は学習環境によってJFL/JSL、「第二言語としての英語」は学習環境によってEFL/ESL、母語話者はNS、非母語話者はNNS,「ユニバーサルグラマー」はUGと記述した。また、一部で動詞をV、名詞をNと表わした。

Aida, Yukie. 1994. Examination of Horwitz, Horwitz, and Cope's construct of foreign language anxiety: The case of students of Japanese. The Modern Language Journal , 78/2. 155-167.

Horwitz, Horwitz, とCopeによる外国語習得時の不安に関する理論モデルを参考にして、大学レベルの日本語コースにおける不安度とその影響を研究した。データは学習者(1レベル、96名)のThe Foreign Language Classroom Anxiety Scaleを応用したアンケートから得た。英語や他のヨーロッパ言語での例と同じく、言語に関する不安感が学習効果にマイナスの影響を与える結果が出ている。
Austin, Theresa, Chisako Nakayama, Akiko Oda, Sadako Urabe and Yoshioko Ley. 1994. A Yen for business: Language learning for specific purposes - A Japanese example. Foreign Language Annals, 27/2, 196-220.
大学での初級日本語レベルのシミュレーション・ビジネスコース(100分週2回、一年間)の開発、試用、評価をレポート。教室は日本の会社という設定で、教師も学生も会社内の肩書きを持ち、文法事項などの導入は会社内で行われるタスクという形を取った。教科書に日産のビジネスJapaneseを使用。
Chikamatsu., Nobuko. 1996. The effects of L1 orthography on L2 word recognition: a study of American and Chinese learners of Japanese. Studies in Second Language Acquisition, 18/4, 403-432.
L1の表記システムがL2の言語認識手段にどのような影響を与えるかを調べるため、アメリカ人(45名)と中国人(17名)の日本語学習者に日本語のかな表記の文字を見せて意味がわかるか判断させた。アメリカ人学習者は音声情報に頼って判断した(長いものほど時間がかかった)のに対し、中国人学習者は視角情報に頼る(見慣れていないものほど時間がかかった)傾向があった。
Doi, Toshiyuki, and Kaoru Yoshioka. 1987. Which grammatical structure should be taught when?: Implications of the Pienemann-Johnston Model to teaching Japanese as a Foreign/Second language. In K. Hijirida and G. Mathias (eds.). Proceedings of the 9th HATJ-UH Conference on Japanese linguistics and language teaching, 10-22.
Pinemann とJohnstonの提唱する言語習得モデル(英語、ドイツ語を使用)を説明し、日本語への応用を助詞「は」、「が」、「を」の構造で検討する。データはJFL 学習者(3レベル、計23名)の繰り返しテストで、正答率は高い順に「は」>「を」>「が」だが、レベルが上がるにつれて差が小さくなり、4年目のレベルでは「は」以外の助詞の正答率が「は」を上回った。
Donato, Richard, Janis L. Antonek and G. Richard Tucker. 1994. A multiple perspectives analysis of a Japanese FLES Program. Foreign Language Annals, 27/3. 365-378.
アメリカ、ピッツバーグのFolk Schoolで幼稚園から小学校5年度までの全ての児童に毎週75分日本語を教える、という3年間プロジェクトの1年目の計画、実践、評価報告。カリクラムはACTFLの提言に基づいてプロフィシエンシーを中心に組み立てられた。総じて好意的な評価が報告されている。両親が日本語学習を奨励しているという児童の意識と達成度の間に高い相関が見られた。
Donato, Richard, Janis Antonek & G. Richard Tucker. 1996. Monitoring and assessing a Japanese FLES Program:Ambiance and achievement. Language Learning, 46/3, 497-528.
アメリカ、ピッツバーグハ大学付属のFolk Laboratory Schoolで幼稚園から小学校5年度までの全ての児童(300名)に毎週75分日本語を教える、という3年間プロジェクトの3年目の評価報告。生徒、親、教師などの日本語に関する態度や受取り方、また学習者の発話能力、語彙力、言語使用状況を検討する。
Dowling, Carol, and Anita Mitchell. 1993. Reading in a specfic purpose foreign language course: A case study of technical Japanese. The Modern Language Journal, 77/4, 433-444.
オーストラリア、 Griffith大学での学部レベル4年間の日本語プログラムを報告する。日本での最新科学情報を学生が独自に得られるようになることを目的に、科学の学位取得に日本語を毎年導入。4年目には学生が自分の専門分野の知識を日本語で読んで得られるようになる、またその知識を英語に訳せるようになることが目標。発話能力もある程度求めている。
Grainger, Peter Ralph. 1997. Language-learning strategies for learners of Japanese: Investigating ethnicity. Foreign Language Annals, 30/3, 378-385.
人種間でJFL学習ストラテジーに違いがあるかどうかを研究。大学レベルの学習者(レベルは様々、8ヵ国、133名)がThe Strategy Inventory for Language Learning (version 5)に答える形でデータを提供。全体のストラテジーの使い方にはほとんど差はなかったが、アジア系と英語圏の学習者の間にははっきりした違いが見られた。
Harrington, Michael. 1987. Processing transfer: Language-specific processing strategies as a source of interlanguage variation. Applied Psycholinguistics, 8/4, 351-377.
Competition Modelによる発話理解のプロセスを基にして、英語のL1、日本人ESL、日本語のL1(各12名)に文の理解を調べる実験を行った。非験者は語順、名詞が動物かどうか、読みの強弱を変えた文を聞いて、その文の主語・動作主を判断した。日本語のL1 グループは名詞が動物かどうかに影響され、英語のL1グループは語順の影響を強く受けた。ESL グループはその間の数値を示した。英語のL1グループは二つのパターンに分かれ、言語習得の変異を示している可能性がある。
Horiba, Yukie. 1990. Narrative comprehension process: A study of native and non-native readers of Japanese . The Modern Language Journal, 74/2, 188-202.
テクストを意味のあるものとして読む作業の際にトップダウンとボトムアップのプロセスがどのように相互に影響するかを調べた。日本語のL1(9名)は学習者(11名、1レベル)より一般知識を使っていることが、読みと同時に口頭で考えを述べるthink aloud protocolで示された。学習者は下位レベルの情報に頼ってはいたものの、テクストの意味を後に形成することができた。
Horiba, Yukie. 1996. Comprehension processes in L2 reading: Language competence, textual coherence, and inferences. Studies in Second Language Acquisition, 18/4, 433-473.
JFL(2レベル各20名)、日本人L1(20名)、アメリカ人L1(16名)の4グループが原因と結果の首尾一貫性に差があるふたつの文章を読みながら考えていることを話し、後に記憶をたどって口述した。L1を読んだグループは上位レベルの情報に注目し、首尾一貫性が低い文章の場合はさらに詳しい点について述べた。反面、L2を読んだグループは下位レベルの情報に注目し、首尾一貫性の違いのある文章を同じように読んだ。学習者はレベルによって違いが見られた。
Horiba, Yukie. 1993. The role of causal reasoning and language competence in narrative comprehension. Studies in Second Language Acquisition, 15/1, 49-81.
JFL(2レベル)、日本語NS(各20名)と英語NS(16名)首尾一貫性に差がある文章を読み、後に口述した。そのうち半数は読みながら考えを述べた。L1を読んだ非験者は首尾一貫性が高いもののほうをよく覚えていた。上級学習者も二回目に読んだ時、同じ様な傾向を示した。中級学習者の記憶はより低く、首尾一貫性が高いテクストでも結果は変わらなかった。
Ito, Yuri. 1996. Communication between high school and college Japanese language education: Implications from a survey on the use of video materials in the United States. Foreign Language Annals, 29/3, 463-479.
アメリカの大学(9校)と高校(84校)でビデオ教材を使用している教師へビデオの種類や使用目的などを質問したアンケートの結果を報告。高校では文化面が強調されるが、大学では言語が主体で関係する文化的側面とともに使用されている。
Kamimoto, Tadamitsu, Aki Shimura and Eric Kellerman. 1992. A second language class reconsidered - the case of Schachter's avoidance. Second Language Research, 8/3, 251-277.
J. Schachterによる An error in error analysisの「回避」(avoidance)を再検討する。ある文法項目がL2で回避されているかどうかはL1での形、分布と機能を調べる必要があるが、Schachterの使用した英語の関係節のデータではこの点が欠けている。"The Great Gatsby"の英語版と日本語訳の比較をし、関係節をそれぞれ数えたところ、数え方によって大きな違いが見られ、日本語で関係節が少ないとは言えなかった。習得を主にした論文ではないが、日本語の関係節、データ処理について示唆に富む。
Kanagy, Ruth. 1994. Developmental sequences in learning Japanese: A look at negation. Issues in applied linguistics, 5/2, 255-277.
大学レベルの学習者(初級の上下、各々5、7名、L1は様々)の日本語の発話に見られる否定型の変化を調べるため、二か月毎に4回面接を行った。30枚の絵を使用し、それに関する質問に答えさせた。名詞型の否定型が最も頻度が高く、動詞型、形容詞型と続く同じ様な傾向が見られた。英語などに見られる動詞直前の否定はなく、これは日本語のL1の習得と同じ傾向を示した。
Kanagy, Ruth. 1994. Affective variables in learners of Japanese in different settings. Journal of Asian Pacific Communication, 5/1, 131-145.
アメリカ(中〜上級5名)と日本(初〜中級4名)で日本語を学習する二つのグループ間の日記から、学習者の情位面の差異を探る。カテゴリーは、大きく不安または恥ずかしさ、個人の学習スタイル、学習環境に対する反応に分類。両グループとも不安間や学習スタイルに関する記述があるが、環境に関して一番違いが見られた。日本グループは教室以外の事実、感情に関する反応が多い。
Kanno, Kazue. 1997. The acquisition of null and overt pronominals in Japanese by English speakers. Second Language Research, 13/3, 265- 287.
英語を母国語とする学習者(四学期目、28名)の外国語としての日本語習得におけるUGの役割を探る。学習者は「田中さんは来週彼が高校へ行くと言いましたよ」などの文に現われる有形・無形の代名詞の意味する人物を考えた。結果は、学習者がUGにあてはまる傾向を示したのみならず、日本語母語話者の数値と有意差がなかった。
Kitajima, Ryu. 1997. Referential strategy training for second language reading comprehension of Japanese texts. Foreign Language Annals, 30/1, 84-85.
日本語学習者の読みに際して指示関係に注意するようなストラテジーのトレーニングを行った。学習者(四学期目、28名)は、指示語に関する問題を解く、統語・談話上のかぎになるヒントを使うなどを含む長文読解のトレーニングを受けた。結果、対照群よりマクロレベルでの読解度が高かった(有意差あり)。
Koda, Keiko. 1988. Cognitive process in second language reading: Transfer of L1 reading skills and strategies. Second Language Research, 4/2, 133-156.
書記体系が異なる四つのL1(アラビア語、スペイン語、英語、日本語)で読みに慣れている人(83名)に、1)英語の単語を見て即座に判断する、2)読解の際の同音意義語(eightとate など)の影響を見る、というテストを行った。非験者は英語を読む際にL1の認知スキルとストラテジーを使用した。また、L1の書記体系は第二言語の読みに際して大きな影響があった。TLは英語だが、日本語の読みのプロセスに関する記述は参考になる。
Koda, Keiko. 1989. The effects of transferred vocabulary knowledge on the development of L2 reading proficiency. Foreign Language Annals, 22/6, 529-540.
読みのプロセスでL1からトランスファーされた語彙の知識がL2の読解を助ける点を研究。学習者(1レベル、24名)は、間をおいて2回、JFLの文法力、視覚プロセスのスキル、読解に関するテストを受けた。 L2の語彙力は読解と一番相関が高く、この点がL1が漢字圏とそうでない学習者とを分ける一番有為な要素だった。また、このようなL1による違いは時を経てさらに広がった。
Koda, Keiko. 1990. The use of L1 reading strategies in L2 reading: Effects of L1 orthographic structures on L2 phonological reading strategies. Studies in Second Language Acquisition, 12/4, 393-410.
L1の書記体系がL2の読解における認知プロセスに及ぼす影響を調べた。アルファベット、音節書記法(syllabary)、表語書記法(logography)はふたつのタイプ、表形態文字と表音文字に分けられる。読解文の英語の一部がサンスクリットで書かれ音韻情報が欠如した場合、L1が表音文字(アラビア語、スペイン語、英語)の読者(各々20、20、21名)は読解に問題をきたした。これに対し、L1が表形態文字の日本語の読者(22名)は読む速度に変化がなかった。L1の読みのストラテジートランスファーが見受けられた。
Koda, Keiko. 1993. Task-induced variability in FL composition: Language-specific perspectives. Foreign Language Annals, 26/3, 332-346.
種々の書くタスクがFLの作文の質と量に与える影響と学習者のストラテジーを調べた。学習者(2レベル、25名)は記述文と叙述文とを書いた結果、この二つのタスクは言語学的、認知的に難度が異なり、叙述文の方が難度が高いことがわかった。
Koda, Keiko. 1993. Transferred L1 strategies and L2 syntactic structure in L2 sentence comprehension. The Modern Language Journal, 77/4, 490-500.
学習者(初年度、46名)は1)名詞を二つ(助詞、基準語順ともに有/無の二パターン)聞いて動作主を選ぶ、2)空欄に助詞を書き込む、3)読解とクローズテストというタスクを行った。L1によって格助詞の有無と語順の影響が異なった。格助詞の知識と読解には高い相関が見られた。助詞の知識はテクスト読解を助けるという結果になった。
Koda, Keiko. 1996. L2 word recognition research: A critical review. The Modern Language Journal, 80/4, 450-460.
語彙の認識と読解との関係、コネクショニストの枠組みで考えるL1の語彙認識に関する研究について述べる。また、語彙認識のプロセスの言語間の違いを探りL2での語彙認識の概念的枠組みを考える。一般的、理論的な論文だが、JSLのデータを扱った論文が数点引用されている。
Loschky, Lester. 1994. Comprehensible input and second language acquisition: What is the relationship? Studies in Second Language Acquisition, 16/3, 303-323.
インプットと言語交流活動における修正がL2習得を促進する、という仮説を検証するため、JFL学習者(2、4学期、41名)を1)インプット修正なし、言語交流活動なし、2)インプット修正有、言語交流活動なし、3)インプット修正なし、言語交流活動有の三つの群に分けた。その場での理解は交渉を含む言語交流活動があるグループで一番高かったのに対し、他の2グループには差がなかった。その場での理解と語彙認識の向上、また文法項目の習得の間には相関が見られなかった。
Okamura, Akiko. 1995. Teachersユ and nonteachersユ perception of elementary learners' spoken Japanese. The Modern Language Journal, 79/1, 29-40.
NSと4名の初級学習者の会話の録音テープを、39名のNS教師と41名の非教師が聞いた結果を比較した。教師の方が非教師より批判的な傾向が見られた。6つの判断カテゴリーのうち、理解可能かどうかという要素が最も重要で、流暢さと文法力が学習者の進度レベルを分けるかぎになった。
Oxford, Rebecca, Yound Park-0h, Sukero Ito, and Malenna Sumrall. 1993. Japanese by satellite: Effects of motivation, language learning styles and strategies, gender, course level, and previous language learning experience on Japanese language achievement. Foreign Language Annals, 26/3, 359-371.
アメリカの高校の衛星放送JSLクラス(107名)での学習者の達成度に影響する要因を調べた。達成度を予測する一番の要素は動機で、言語学習ストラテジーの使用度も影響が大きかった。通常のクラスと衛星クラスへの提案を多く含む。
Rose, Kenneth. 1994. On the validity of discourse completion tests in non-Western contexts. Applied Linguistics, 15/1, 1-14.
社会的距離と力関係を考慮した内容の談話完成テストを使って、アメリカ人NS(46名)と日本人ESL学習者(89名)のアメリカ英語での依頼を調べた。日本人の方がアメリカ人より直接的な依頼をするという結果になった。ところが同じ日本人非験者に選択肢のあるアンケートを使って依頼を調べたところ、こちらの方が実際の会話に近い特徴が見られた。談話完成テストを使ってのデータ収集の問題点を述べる。
Rose, Kenneth, and Reiko Ono. 1995. Eliciting speech act data in Japanese: The effect of questionnaire type. Language Learning, 45/2, 191-223.
談話完成テストと選択肢のあるアンケートを使って、日本人NS(36名)2グループの日本語での依頼を調べた。二つのデータ収集方法で得たデータの間にほとんどの項目において有意差が見られた。談話完成テストを使ってのデータ収集の問題点を述べる。
Saito, Yoshiko. 1995. Assessing perceived needs for Japanese language taining in U.S. Business education: Perspectives from students, business faculty, and business professionals. Foreign Language Annals, 28/1, 103-115.
ビジネス担当の教員と学生(162名)による、キャリアにおける日本語力の価値の評価と、アメリカ企業の管理職と国際部部長の考える現代ビジネス世界での日本語力の意義を報告。ビジネススクールでは語学力により力を注ぐべき、また語学コースの内容はビジネスを学ぶ学生の具体的なニーズに添ったものであるべき、という結果が出ている。
Saito, Yoshiko & Keiko Samimy. 1996. Foreign language anxiety and language performance: A study of learner anxiety in beginning, intermediate, and advanced-level college students of Japanese. Foreign Language Annals, 29/2, 239-251.
アメリカの大学で日本語を履修する学生(4レベル、257名)が学習を継続しない例が多い。その理由を調べるべく、言語学習での不安感やクラスでのリスクに対する許容度に関するアンケートを行った。外国語に対する不安感は学習者の達成度に悪影響を及ぼしかねず、レベルが高くなるにしたがってより大きな要素になっていた。
Samimy, Komiya Keiko and Motoko Tabuse. 1992. Affective variables and a less commonly taught language: A study in beginning Japanese classes. Language Learning,42/3, 377-398.
初級JFL(収集2回−68名、39名)の学習者の情位面の要素(態度、動機、教室での性格)と言語学的な達成度の関係を調べた。動機と態度に関する要素が日本語で成功するかどうかのかぎで、リスク許容度と教室での気分も学期末の成績を予測する要素になった。
Sasaki, Yoshinori. 1991. English and Japanese interlanguage comprehension strategies: An analysis based on the competition model. Applied Psycholinguistics, 12/1, 47-73.
日本語と英語それぞれのNS、L1が英語のJFL学習者、L1が日本語のESL学習者(各12名)が動詞一つと名詞二つの組み合わせを聞き、それを文とした場合の主語を決定した。語順と名詞が動物かどうかという点は一致する場合としない場合があった。JFL 学習者は日本語のNSと動物を主語にしがちである点で一致したが、ESL学習者は英語のNSほど語順に頼らなかった。この結果は、文法を基準に理解を試みるストラテジーより意味をを基準に理解を試みるストラテジーが習得上優先されるという事実と一致する。
Sasaki, Yoshinori. 1994. Paths of processing strategy transfers in learning Japanese and English as foreign languages: A competition model approach. Studies in Second Language Acquisition, 16/1, 43-72.
L1が英語のJFL学習者(2レベル)とL1が日本語のESL学習者(各10名)が動詞一つと名詞二つの組み合わせを英語と日本語で聞き、それを文とした場合の主語を決定した。語順、名詞が動物かどうかという点、また格助詞は一致する場合としない場合があった。JFL学習者の日本語力が上がるにつれ格助詞に頼って判断するようになる、というストラテジーの変化が見られた。JFL学習者はどちらの言語でも格を表わす要素に頼っていた。表面上の語順のトランスファーは見られなかった。
Sasaki, Yoshinori. 1997. Material and presentation condition effects on sentence interpretation task performance: Methodological examinations of the competition experiment. Second Language Research, 13/1, 66-91.
JSL学習者(2レベル)と日本人NS(各10名)に英語のNVNと日本語のNNVの組み合わせを、格助詞と名詞が動物がどうかという点はコントロールして聞かせた。まず一度基準語順で聞かせ、二度目は非基準語順で聞かせた。名詞によって動物かどうか、という点の影響が異なった。英語の格変化の方が日本語の格助詞より影響が大きく、英語のNSは提示語順によって異なる反応をした。
Sawyer, Mark. 1992. The development of pragmatics in Japanese as a second Language: The setence-final particle ne. In G. Kasper (ed.), Pragmatics of Japanese as native and target language (Technical report No. 3, 27-82). Honolulu, University of Hawai'i at Manoa, Second Language Teaching & Curriculum Center.
JFL学習者(大人11名、L1は様々)の終助詞「ね」の使用を、一年間、四回の面接で追った。学習者の方がNSの面接者より文法的な助詞を使用したのに対し、面接者は「ね」を多用した。「ね」は当初決まり文句の中に現われる形で使われ、中間言語での使用頻度はあまり伸びなかった。ただし学習者によってその使用と頻度の伸びは異なった。
Siegal, Meryl. 1996. The role of learner subjectivity in second language sociolinguistic competence: Western women learning Japanese. Applied Linguistics, 17/3, 357-382.
白人女性の日本での日本語習得を民族学的に追った論文。学習者の自己、社会における自己の概念、NNSの面子、また社会言語学的能力に対するL2の影響などを中心にする。語用論的なデータ分析を含む。
Thomas, Wayne P., Virginia P. Collier, and Martha Abbott. 1993. Academic achievement through Japanese, Spanish, or French: The first two years of partial immersion. The Modern Language Journal, 77/2, 170-179.
日本語、スペイン語、フランス語による小学校一から三学年(719名)の一部イマーションプログラム(算数、保健等)の最初の2年間を比較。2年経過後、算数ではイマーショングループのテスト結果は、通常のグループと同じか上だった。また、英語でも授業時間が少なかったのにもかかわらずイマーショングループの方が結果が良く、著者はL2からのスキルトランスファーと考える。それぞれのTLのオーラルプロフィシエンシーレベルも言及されている。
Tomita, Hideo. 1995. Identifying and explaining learners' difficulties: A case of L2 Japanese particles wa and ga. Doctoral dissertation. The Ohio University.
言語上のヒント(局部的/全体的)がクローズテストで「は」と「が」を選ぶ際にどのような影響があるかを調べた。学習者(4レベル、計35名)は会話形式のクローズテストをおこなった。答えは「は」か「が」のどちらかだったが、学習者には助詞だとだけ伝えた。局部的ヒントがある助詞の方がエラーが少なく、同じヒントの場合「は」のほうがエラーが少なかった。レベルの影響は見られなかった。
Tucker, Richard, Richard Donato & Janis Antonek. 1996. Documenting growth in a Japanese FLES Program. Foreign Language Annals, 29-/4, 539-550.
アメリカ、ピッツバーグのFolk Laboratory Schoolで幼稚園から小学校5年度までの全ての児童に毎週75分日本語を教える、という3年間プロジェクトの2年目の実践、評価報告。数量的・質的な種々の言語タスクから、児童の日本語の能力が伸びていることを述べる。
White, Ron. 1997. Back channelling, repair, pausing, and private speech. Applied Linguistics, 18/3, 314-344.
アメリカ人と日本人の英語での商取引のシミュレーションから、あいづち、修正、間などを比べる。あいづちの持つ意味合いが二つのグループ間で異なっていた。ここでのTLは英語だが、日本人にとってのあいづちについての記述が参考になる。
Yi, Hyangsoon Junko Majima. 1993. The teacher-learner relationship and classroom interaction in distance learning: A case study of the Japanese language classes at an American high school. Foreign Language Annals, 26/1, 21-30.
アメリカ、ジョージア州で日本語を教える高校23校のうち17校が衛星による授業を行っている。そこでの遠距離教育のメカニズム、生徒による教師の認識度、及び、教室内の言語交流活動をとおして「ファシリテーター」(各衛星校に存在)の役割の検討する。遠距離教育の成功は、ファシリテーターが他校にいる教師と教室の生徒との間をどのように取り持つかにかかっていた。
Yoshioka, Kaoru. 1991. The acquisition of Japanese particles: An effort to test the Pienemann-Johnson model with three measurements. Unpublished master thesis. University of Hawai'i.
格助詞「は」、「が」、「を」の習得を探り、 Pienemann-Johnsonモデルの日本語への応用を検討した縦断的研究。学習者(1〜4学期レベル、70名)は1)他動詞を含む文(語順と助詞の分布を変えて)を聞き、二つの絵のうちあてはまる方を選ぶ、2)聞いた文をできるだけそのまま直後に繰り返す、3)自由会話、の三つのタスクを行った。聴解の正解率と生産的使用ともに高い順に「は」と「を」>主語の「が」>存在の「が」>目的格の「が」であった。

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