就労を目的として滞在する外国人の日本語習得過程と習得に関わる要因の多角的研究


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このプロジェクトは、延べ10名余りの大学院生と元院生の方たちにお手伝いいただいています。特に1年間の面接調査は、衣川隆生、黒野敦子、水田澄子の三氏の協力がなければ続けられなかったでしょう。ありがとうございました。

このページは1996年7月23日にWWWに載せました。今後、私たちの作業の進行にあわせて、随時アップデイトしていく予定です。最後に変更したのは1998年12月1日です。


研究の概要

(1)助成団体: 文部省科学研究費

(2)研究代表者:土岐 哲

(3)研究種別: 総合A
   課題番号: 06301099

(4)研究組織:
代表者

 土岐 哲  大阪大学文学部教授(日本語教育学)
       tokiss@let.osaka-u.ac.jp
       総括・発音調査の分析

分担者

 青木直子  大阪大学文学部助教授(日本語教育学)
       naoko@let.osaka-u.ac.jp
       発話資料の分析および文字化作業の統括

 尾崎明人  名古屋大学留学生センター教授(日本語教育学)
       g44396a@nucc.cc.nagoya-u.ac.jp
       発話資料の収集と分析およびデータベース化

 助川泰彦  東北大学留学生センター助教授(日本語教育学)
       suke@insc.tohoku.ac.jp
       発音調査の分析

 谷口すみ子 調布学園女子短期大学日本文化学科助教授(言語習得論)
       jac00523@nifty.ne.jp
       アンケート調査の分析および発話資料の分析

 土井利幸  福岡女学院大学人文学部講師(言語習得論)
       発話資料の分析

 野元弘幸  東京都立大学人文学部助教授(社会教育学)
       EZI01434@nifty.ne.jp
       アンケート調査の分析および文字調査の分析

 平高史也  慶応大学総合政策学部助教授(日本語教育学)
       anf@sfc.keio.ac.jp
       発話資料の分析

 籾山洋介  名古屋大学留学生センター助教授(日本語学)
       j46083a@nucc.cc.nagoya-u.ac.jp
       発話資料の収集と分析

 吉岡 薫  ニーメゲン大学客員研究員(言語習得論)
       k.yoshioka@worldonline.nl
       発話資料の分析およびデータベース化

(5)研究経費:
  平成6年度280万円
  平成7年度200万円
  平成8年度110万円

(6)研究の概要

研究課題設定の背景:
1990年に改正入管法が施行され、就労ビザの取得が容易になったことからブラジル、ペルーなどから就労を主たる目的とする日系人が多数来日するようになった。このような日系人の多くは日本語教育機関で体系的な日本語教育を受ける機会をもたないまま、日本で生活している。

これまでに行われた日系人に対する意識調査などによると職場や日常生活の場面で日本語能力の不足による「ことばの壁」が大きな問題の一つになっているという。しかし、日系人と日本人がどのようなことばでコミュニケーションをしているのか(接触場面のコミュニケーション)、滞在期間が長くなれば日系人の発話能力や識字能力も高くなるのか(日本語の習得研究)、などについての実証的な調査研究はまったく行われていない。

日本語教育の分野でも日本語の習得研究が注目されるようになってきたが、研究の多くは体系的な日本語教育を受けた者を調査対象としており、日本語の自然習得の過 程を記述、分析する試みは皆無といってよい。そこで本研究グループは就労を目的として日本に滞在している日系人の日本語習得の過程と、習得に関わる要因について基礎的な調査研究を行うことにした。このような研究は、今日本各地でボランティアを中心に行われている「日本語教室」の教育内容と方法、あるいは地域在住外国人に対する日本語学習支援のあり方を考える上で貴重な知見を与えてくれるものと期待している。

研究目的:
本研究は、南米から来日した日系人の日本語使用の実態を把握し、日本語習得について以下の諸点を明らかにすることを目的とする。

研究計画:
以下のような研究計画の概要をもとに科学研究費を申請した。

しかし、研究費が大きく縮小されたため当初の研究計画は変更せざるを得なくなった。そこで初年度(平成6年)の第1回打ち合わせ会議で研究計画の詳細な再検討を行い、最終的に以下の計画を決定した。

調査の経過:

平成6年度

上記の研究計画を決定し、以下の作業を進めた。

I.調査のための課題設定と調査キットの作成  

A.対話と独話を引き出すために次の5つの課題を設定した。

  1. インタビューに答える課題
      (来日時期や家族、仕事などに関する身近な話題を質問項目として選び、毎回必ず尋ねる必須項目と自由に取り上げてよい選択項目のリストを作成した。)
  2. 一枚のを見て説明する課題
      (空間の描写がどの程度できるかを調べる課題。イラストレーターに調査の目的を説明し、居間でくつろぐ3人家族の絵を描いてもらった。)
  3. 一連の写真を見てお話を作る課題
      (時間の流れにしたがって物語が作れるかを調べる課題。日系ブラジル人の女性から写真を借りて、「ブラジルでの卒業式、結婚、来日、職場での仕事の 様子 、ご主人の職場の様子、スキー旅行」などの場面を時系列に並べた。)
  4. 単純なロールプレイをする課題
      (職場の上司からボールペンを借りる場面を設定した。)
  5. 複雑なロールプレイをする課題
      (病気の弟を見舞うために二日間の休暇を上司に求める場面を設定した。)
B.被験者の母語が日本語の発音に及ぼす影響を調べるために次の課題を設定した。
  1. 単語(たまご、こども、百円など)を表した絵カード20枚を発音する課題
C.文字の知識を調べるために次の課題を設定した。
  1. ひらがな、カタカナ、漢字で書かれた単語カード(とまれ、ブラジル、名前など)10枚を読む課題
  2. 自分と家族の名前、住所や会社の名前をひらがな、カタカナ、または漢字で 書く課題

II.調査マニュアルの作成
複数の調査者が資料収集にあたるので調査者間の相違をできる限り小さくする必要 がある。そこで調査の手順、使用機器、調査実施上の留意点を詳細に述べた調査マニ ュアルを作成した。このマニュアルは、今後同様の調査を行おうとする研究者が参考 資料として利用できるものであり、調査マニュアル自体が本研究の成果の一つである と考えられる。

III.アンケートの作成
 以下の項目を含むアンケート調査票を作成し、ポルトガル語に翻訳した。

IV.予備調査の実施
調査マニュアルにしたがって2名のブラジル人に予備調査を行い、その結果をもと に課題の指示方法に改善を加えた。また、別のブラジル人2名にアンケートの予備調査を行い、指示文の翻訳と回答形式を修正した。

V.被調査者の選定
被調査者については、20代で高校卒業の学歴をもち、滞在期間は1年から1年半 程度、現在日本企業で働いている者で、かつ、できれば男女同数にする、という条件 を考えたが、この条件を満たし、かつ1年間にわたり確実に調査に協力してくれるブ ラジル人10名を確保することはきわめて困難であった。最終的に、次の 10名が 調査協力を約束してくれた。

           被調査者の性別、年齢、来日時期
  保見地区   A 男性(独身) 25歳 94年11月
           B 男性(独身) 25歳 94年11月
         C 女性(既婚) 32歳 93年 2月
         D 男性(既婚) 36歳 94年 9月(2度目の来日)
         E 女性(既婚) 32歳 94年 9月(2度目の来日)
  三好地区   F 男性(独身) 29歳 92年11月(2度目の来日)
         G 男性(独身) 21歳 93年 5月
         H 男性(独身) 24歳 94年12月
  大久手地区  I  男性(独身) 20歳 94年 2月
         J  男性(独身) 25歳 94年 1月
平成7年度

I.顔合わせと調査依頼
6月から順次、被調査者に会って調査担当者との顔合わせ、調査の趣旨説明、およ び第1回のアンケート調査をお願いした。

II.発話資料の収集
2カ月に1回3名の調査班(インタビュー係、録音係、通訳)が被調査者の自宅を訪問した。DATのテープレコーダー2台でインタビューなどを録音するとともに入室から辞去するまでの全てを別のテープレコーダで状況録音をした。調査時には被調査者と日本人調査者、録音係のみが同席し、通訳と被調査者の家族 や友人は別室に退いてもらった。
 なお、3回目調査の際には2回目のアンケートもお願いした。

III.発話資料の文字化マニュアルの作成と文字化作業
発話内容が分かるだけの文字化では資料として不十分であると考え、第一段階としてまず発話内容だけの文字化を行い、これをチェックする段階で、息継ぎごとの音調 、発話の重なり、ポーズ、あいづちなどを加えた。チェックの方法はマニュアル化し た。第一段階、第二段階の作業はいずれも日本語母語話者のアルバイターに依頼した。

IV.被調査者の減少
大久手地区の被験者Jは転職による転居、またIも本人の都合で調査が続けられなくなった。この結果、最終的な被調査者は8名になった。

平成8年度

I.資料収集の継続
平成7年6月に開始した資料収集は平成8年7月現在6名について6回の調査が終わり、残り2名も5回目まで終了している。8人の資料、延べ46回分、及び回収済みアンケートが22部集まっている。2名についても6回目の最終調査を近々行う予定である。

II.アンケート調査の集計を行うためフォーマットを作成し、入力作業に取りかかっている。

III.チェック済みの文字化資料台帳をCHILDESのコンピューター分析ソフトにかけられるような形式に作り替える方法を検討している。

IV.ブラジル人被験者に行ったのとまったく同じ調査を日本人母語話者4名に対しても実施し、比較の対象となる資料を収集する。

V.報告書の作成
平成9年3月までに概ね以下のような内容の研究成果報告書を作成する。

第1部 総論:本研究の目的と意義

第2部 研究方法:
1.調査マニュアル
2.発話調査のためのタスク
3.音声調査のためのタスク
4.文字調査のためのタスク
5.発話資料のデータ処理
6.アンケート調査(調査項目、回答の処理方法)

第3部 分析結果:
1.インフォーマントのプロファイル
2.アンケート調査の結果分析
3.全体的な量的分析の結果
4.調査項目別の分析結果
 (音声、語彙、形態素、語順、時間概念の表現、談話構造など)

資料集

膨大な資料なので、報告書は研究経過と分析結果の一部を盛り込んだ中間報告書的なものになると予想される。平成9年度以降も分析を行い、引き続き研究成果を公表していく。

今後の研究課題
これまでの調査研究の結果、さらに多くの研究課題が出てきている。その内のいくつかを列記する。

  1. 発話資料のデータベース化
    発話資料台帳をCHILDESのフォーマットに作り替えて、データベースを作る。これにより資料の量的分析が迅速かつ正確に行えるようになる、また、そのデータベースを公開することで他の発話資料との比較、対照が容易になる。

  2. 日本語母語話者による被調査者の日本語能力の判定
    被調査者の日本語が伸びたかどうかを一般の日本人に判定してもらい、その判定が 何にもとづいて行われているかを分析する。これにより日本語母語話者の日本語能力 判定基準の一部が明らかにできる。

  3. 他の外国人日本語学習者との比較
    地域ボランティアが運営している「日本語教室」で学んでいる日系ブラジル人を追跡調査し、本調査の被験者(「日本語教室」に通っていない)と比較してみる。あるいは、母語の異なる外国人について同様の縦断調査を行う。

  4. 研究成果の継続的な公表
    インターネット上に本研究に関するホームページを開設する。これにより研究成果を継続的に公表することが容易になるだけでなく、第二言語習得研究に関心をもつ研究者との情報交換を促進することができる。

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報告書

目次

第1部:はじめに(土岐 哲)

第2部:調査の概要と研究方法(尾崎明人)

第3部:各論

1 就労外国人の日本語音声習得に関する縦断調査:単語カード読み上げ方式による分析(助川泰彦)

2 絵の説明のタスクの分析(谷口すみ子)

3 就労を目的として滞在している外国人のテンス・アスペクトの習得について(黒野敦子)

4 外国人就労者における時間概念の習得について(平高史也、稲葉圭子)

5 就労外国人における読み能力と書字能力の習得(衣川隆生)

6 第二言語話者と第一言語話者とのやりとりにおける理解達成のプロセス(青木直子、大石美智恵、金敬善、小林浩明、竹腰道子、西野由夏、ニ・ニョーマン・ユダニンシー、林立梅)

第4部:文献解題
1 日本語による日本語習得研究の文献(谷口すみ子)

2 英語圏で出版された日本語習得研究の文献(吉岡 薫)

3 欧文による第二言語習得一般の研究(平高史也)

第5部:資料
1 調査マニュアル

2 アンケート用紙

3 文字化マニュアル

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プロジェクトのその後

報告書の作成後、収集したデータの分析にどのような進展があったかを随時、報告します。

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関連サイト・リンク集

「集」といっても、まだリンクはこれしかはってありません。情報収集に鋭意努力しますので、お許しを...

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