四九 何がし大坂へ数年相勤め罷り下り、請役所罷り出で候節、上方口にて物を申し候に付て、無興千萬の物笑ひにて候。それに付、江戸上方へ久しく詰め候節は、常よりも御国口ひらき申すべき事に候。おのづから気前よそ風に移り、御国方の事は田舎風と見おとし、他方に少しも理の聞えたる事これある時は、それをうらやみ申す儀、何の味も存ぜず。うつけたる事に候。御国は田舎風にて初心なるが御重宝にて候。よそ風をまね候ては似せ者にて候。或人春岳へ、「法花宗はじゃうがこはき物にて宜しからず。」と申され候へば、春岳申され候は、「じゃうがこはきゆゑ法花宗にて候、じゃうのこはうなければ餘宗にてこそ候へ。」と申され候。尤もの事に候。