文部省科学研究費補助金 特定領域研究(A)
環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究
A04 日本班

最終更新日 2002.5.8.

危機に瀕した伝統的琉球語奄美方言の緊急調査研究

 研究組織

 氏  名  所 属 機 関   E-mail 
研究代表者 かりまた しげひさ 琉球大学法文学部   
研究分担者 大胡 太郎 琉球大学法文学部   
研究分担者 須山 名保子 聖学院大学
研究協力者 島袋 幸子 琉球大学非常勤
研究協力者 仲間 恵子


                   2001年度

 研究の目的
 九州から島伝いに南下してきた琉球語祖語が琉球列島の全体に普及するに際しての出発点になった奄美方言も他の琉球語諸方言と同様に、その継承が危機的な状況にあるが、本研究計画はこの奄美方言の様々な音声資料、語彙資料をデジタル録音、デジタル映像によって後世に記録保存しようするものである。また、奄美方言の文法の記述をおこない、方言の継承にとって不可欠な資料を提供する。また、諺、シマウタ、わらべ歌などの様々な言語作品をデジタル録音、デジタル録画によって恒久的な保存が可能な状態で記録し、危機言語の継承のための教材としても活用できるようにしたい。


 研究実施計画
 
研究代表者狩俣繁久は、「言語の島」として周辺集落の方言から孤立している笠利町佐仁集落の語彙と音声の収集をおこなう。この方言は鼻母音を有し、古代日本語ハ行子音のpを保存するなど、特異な音韻体系を有する方言であるが、標準語と周辺方言の影響によって方言の変容と衰退が著しい。研究協力者須山名保子は奄美大島中部の大和村、南部の瀬戸内町の方言の文法の調査をおこなう。両地域の研究は音声に関する研究が多く、文法に関する研究がおくれていて、とくに動詞の形態論に関する調査を中心におこなう予定である。研究分担者大胡太郎は、両者をたすけつつ、映像資料の収集をおこなう。また、大胡太郎は、民話、諺などの口承の言語作品の録音をとりつつ、同時に映像資料の収集もおこなう。狩俣繁久と須山名保子は、その言語作品の文字化、翻訳などの仕事をたすける。大胡太郎は、映像資料、及び音声資料の編集作業の中心的役割を果たす。円和之氏(名瀬市役所)、および仲間恵子(沖縄言語研究センター)、狩俣幸子(琉球大学非常勤講師)が研究協力者として現地での調査に参加する。


 成果報告
 研究代表者狩俣繁久は、昨年度にひきつづき、奄美大島最北端の笠利町佐仁方言の調査をおこなった。昨年度は琉球方言中、そして奄美諸方言のなかでも、音声の観点からみて古い姿をのこす佐仁方言の実態調査と音声に関する調査をおこなったが、今年度は、基礎語彙以外の語彙に調査の範囲をひろげて、約3千の語彙を収集した。また、狩俣は、龍郷町瀬留集落の方言によることわざ集発行にむけた聞き取り調査をおこなった。
 須山名保子も昨年度にひきつづき奄美大島中部の大和村の方言と奄美大島南部瀬戸内町方言の文法の調査をおこなった。文法は言語の学習と継承にとって重要な要素であるが、奄美方言に関して、特に中部地域と南部地域に関して研究が遅れている。今年度は、とくに、動詞のテンスとアスペクトに関する調査、および形容詞の語彙の収集をおこなった。また、『奄美方言分類辞典』(上下巻・長田須磨、須山名保子、藤井美佐子著)をデータベース化し、インターネット上にのせるための方法などについて狩俣らと協議し、そのための作業をすすめた。これは沖縄言語研究センターのホームページ上で公開予定である。
 研究分担者大胡太郎は、狩俣らとともに奄美大島龍郷町のシバサシにともなう歌謡の調査を行ない、ビデオによる収録をおこなった。また大胡は、宮古水納島からの移住集落である高野で民俗儀礼スツウプナカの調査、および、フユウプナカの調査をおこない、儀礼をビデオに収録した。故郷水納島では人口が激減し、民俗行事がおこなわれておらず、移住集落であるために、周辺集落との文化的接触で固有の文化が変容と消滅の危機に瀕していて調査が急がれるところである。
 狩俣は、昨年11月京都で行われた国際学術講演会「消滅に瀕した言語」のシンポジウムで琉球語研究の現状について報告した。



                   2000年度

 研究の目的
 九州から島伝いに南下してきた琉球語祖語が琉球列島の全体に普及するに際しての出発点になった奄美方言も他の琉球語諸方言と同様に、その継承が危機的な状況にあるが、本研究計画はこの奄美方言の様々な音声資料をデジタル録音、デジタル映像によって後世に記録保存しようとするものである。奄美方言を特色づける音声(中舌母音、閉音節構造の単語、喉頭化した子音)の良質な録音資料を収集して、音響的な分析などの言語学的な分析の材料を提供するほかに、諺、シマウタ、わらべ歌、民話などの様々な言語作品をデジタル録音、デジタル録画によって恒久的な保存が可能な状態で記録し、危機言語の継承のための教材としても活用できるようにしたい。


 研究実施計画
 研究代表者狩俣繁久と研究分担者須山名保子は、名瀬市を中心にする奄美大島方言を対象に語彙の収集をおこないつつ音声の収集と調査を相互に協力しつつおこなう。研究分担者大胡太郎は、両者をたすけつつ、映像資料の収集をおこなう。また、大胡太郎は、民話、諺などの口承の言語作品の録音をとりつつ、同時に映像資料の収集もおこなう。狩俣繁久と須山名保子は、その言語作品の文字化、翻訳などの仕事をたすける。大胡太郎は、映像資料、及び音声資料の編集作業の中心的役割を果たす。円和之氏(名瀬市立奄美博物館係長)、および仲間恵子(琉球大学大学院修士課程修了)に研究協力者として現地での調査に参加してもらう。


 成果報告
 奄美大島最北端の笠利町佐仁の方言は、ハ行子音にp音を保存し、カ行子音のkが摩擦音hに変化するなどの点で周辺の方言と異なり、「言語の島」として知られている。また、佐仁方言は語中のマ行子音のmが後続する母音を鼻音化させたのち、消失している。狩俣繁久は、笠利町佐仁の方言の音声と語彙の調査を2度にわたっておこなった。調査ではp音はまだよく保持されているが、鼻母音は90代の話者に痕跡的に観察できるものの、70代の話者にはみられないことがわかった。須山名保子は、同じく奄美大島中部の大和村の方言と奄美大島南部の瀬戸内町方言の文法の調査をおこなった。文法は言語の学習と継承にとって重要な要素であるが、奄美方言に関して、特に中部地域と南部地域に関して研究が遅れていた。須山はこの二つの地域の方言の文法調査に着手し、12年度中に4回の現地調査をおこなった。調査では奄美方言文法の全体の概要をつかむための調査をおこなった。調査にさきだって琉球大学で調査の方法、調査項目などについての検討会をおこなった。大胡太郎は、奄美大島の歌謡の歌詞に関する調査を行なったほか、狩俣とともに、水納島からの移住集落である高野で民俗儀礼スツウプナカの調査をおこなった。故郷水納島では人口が激減し、民俗行事がおこなわれておらず、移住集落であるために、周辺集落との文化的接触で固有の文化が変容と消滅の危機に瀕していて調査が急がれるところである。


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