文部省科学研究費補助金 特定領域研究(A)
環太平洋の「消滅に瀕した言語」に関する緊急調査研究
A04 日本班

最終更新日 2002.10.20

環太平洋地域に残存する日本語の調査研究

 研究組織

 氏  名     所  属  機  関  E-mail
研究代表者 渋谷 勝己 大阪大学大学院文学研究科   
研究分担者 土岐  哲 大阪大学大学院文学研究科   
研究分担者 宮島  達夫 京都橘女子大学文学部   
研究分担者 由井 紀久子 京都外国語大学日本語学科   
研究協力者  簡  月真 大阪大学大学院文学研究科   
研究協力者 真田 信治 大阪大学大学院文学研究科   


                         2002年度

 研究の目的
 本研究では、パラオ共和国・ミクロネシア連邦・マーシャル共和国・台湾に残存する日本語の会話データをコーパス化する。また、当該日本語の、音声・文法・語彙・言語行動面での体系・運用の実際を詳細に記述する。具体的には次の通り。(1)昨年度までに収集したパラオ・ミクロネシア・マーシャル・台湾の高年層の日本語会話を文字化し、データベースを構築する。また引き続き、可能な限りの会話データを収集する。(2)(1)のデータに基づいて、音声、文法事象、語彙、言語行動などの面での言語的、社会言語的特徴を記述し、報告する。(3)インフォーマント間に見られる日本語の普遍的・個別的な特徴を明らかにする。(4)それぞれのインフォーマントの日本語習得・使用歴等を把握し、(3)の結果と照らし合わせつつ、第二言語としての日本語能力の衰退にかかわる社会言語的な要因を特定化する。
 本年度の主たる目的は(2)である。


 研究実施計画
 昨年度までと同様、ミクロネシア班と台湾班にわかれて研究を実施する。
 [1]ミクロネシア地域担当の渋谷・由井は、昨年度に引き続き、以下の調査・分析にあたる。(1)音声・画像データの収集。パラオ共和国・グアム(渋谷)・ミクロネシア連邦・マーシャル共和国・グアム(由井)において、高年層の日本語話者にインタビューを行い、日本語の会話データをさらに蓄積する。また、日本語使用にかかわる画像データを構築する。会話データは、文字化するほか、コンピュータに入力して、各種機械処理が可能なかたちに変換する。(2)データの分析・記述。(1)のコーパスに基づいて、渋谷は、テンス・アスペクト・ムードといった動詞の文法カテゴリを中心に、包括的な記述報告書を作成する。また由井は、高年層の日本語に用いられる語彙の、計量的な構造、意味体系などを分析し、最終報告書を作成する。
 [2]土岐・宮島は、研究協力者である真田信治・簡月真とともに、以下の調査・分析を行う。(1)音声・画像データの収集。台湾各地の高年層インフォーマントにたいして日本語インタビュー調査、調査票による調査を行い、日本語会話データ、音声・アクセントデータ等を収集する。また、日本語使用にかかわる画像データを構築する。会話データは、文字化するほか、コンピュータに入力して、各種機械処理が可能なかたちに変換する。(2)データの分析・記述。作成したコーパスに基づいて、土岐は音声面の、また宮島・真田・簡は文法面と語彙面の、詳細な分析を行って最終報告書を作成する。



                         2001年度

 研究の目的
 本研究では、パラオ共和国・ミクロネシア連邦・マーシャル共和国・台湾に残存する日本語のデータを収録・蓄積し、データベース化することを計画する。また、当該日本語の、音声・文法・語彙・言語行動面でのシステムを詳細に記述する。具体的には次の通り。(1)パラオ・ミクロネシア・マーシャル・台湾の高年層の日本語による会話を録音・文字化し、データベースを構築する。(2)調査地の言語生活において日本語の果たす、またこれまで果たしてきた社会的な役割や、日本語話者の日本語習得・使用歴等を把握することによって、第二言語としての日本語の消滅にかかわる社会言語的な条件を特定化する。(3)(1)のデータに基づいて、音声、文法事象、語彙、言語行動などの面での言語的、社会言語的特徴を記述する。(4)(3)の作業を踏まえた上で、インフォーマント間に見られる普遍性及び個別性を明らかにし、また(2)の結果と照らし合わせつつ、その普遍性・個別性をもたらした要因をさぐる。


 研究実施計画
 [1] 渋谷・由井は、以下の調査・分析にあたる。(1)音声・画像データの収集。パラオ共和国・グアム(渋谷)・ミクロネシア連邦・マーシャル共和国・グアム(由井)において、高年層の日本語話者にインタビューを行い、日本語の会話データを蓄積する。また、日本語使用にかかわる画像データを構築する。(2)社会言語データの収集。国立国会図書館等において、旧南洋群島における日本語・日本語教育関係の文献調査を行い、またインタビューデータの内容を分析することによって、第二言語としての日本語の維持・摩滅にかかわった社会言語面での要因を特定する。(3)データの分析・記述。(1)のコーパスに基づいて、渋谷は、テンス・アスペクト・ムードといった文法カテゴリを中心に、記述作業を継続する。また由井は、高年層の日本語に用いられる語彙の、計量的な構造、意味的構造などの解明を試みる。
 [2] 土岐は、研究協力者である真田信治・簡月真とともに、以下の調査・分析を行う。(1)音声・画像データの収集。台湾各地の高年層にたいして日本語インタビュー調査を行い、日本語会話データを収集する。また、日本語使用にかかわる画像データを構築する。会話データは、文字化するほか、コンピュータに入力して、各種機械処理が可能なかたちに変換する。(2)データの分析・記述。作成したコーパスに基づいて、土岐は音声面の、また宮島・真田・簡は文法面と語彙面の、詳細な記述を試みる。(3)現地研究者との協力体制の確立。昨年度に引き続き、台湾東呉大学のスタッフ等と情報交換を行い、また、本研究課題のための長期的な連携体制を確立する。


 成果報告
 昨年同様、南洋班(渋谷・由井)、台湾班(土岐・宮島)の2班に分かれ、それぞれ調査を行った。具体的な調査・分析の内容は以下の通り。南洋班:1〜4、台湾班:5〜7。
 1.パラオ共和国において老年層の日本語話者にインタビューを行い、MDで録音、文字化した。
 2.記述書に付すテキストとして、日本語によるパラオの昔話を収集し、文字化した。
 3.渋谷は、文字化した談話データの一部を分析し、当該地域に残る日本語の可能表現面での特徴を、話者間の違い、同じミクロネシア地域のヤップに残る日本語との異同などにも留意しながら、報告書にまとめた。主に、形態面での簡略化の諸相を明らかにしている。
 4.国立国会図書館等において、戦前・戦中期のパラオ・ミクロネシアの日本語教育・日本語生活の実態を示す資料を収集した。
 5.台湾東部地域および台北近郊地域において本調査を実施し、老年層日本語話者の談話を大量にDATで録音・文字化した。
 6.録音、文字化したデータについて、土岐が台湾日本語の音声面を、また研究協力者の簡月真が人称代名詞(自称詞・対称詞)・可能表現・丁寧形式などに見られるスタイルの切換えの実態を分析し、報告書にまとめた。
 7.研究協力者真田信治と簡月真は、協力して台湾の言語事情を展望し、それにかかわる論文(黄宣範『語言・社会與族群意識―台湾語言社会学的研究―』第4章第2節)を訳出して報告した(「台湾における『国語』普及計画」)。



                2000年度

 研究の目的
 (1) 調査地であるミクロネシア・パラオ、及び台湾の言語生活において日本語の果たす、またこれまで果たしてきた社会的な役割を把握することによって、第二言語の消滅にかかわる社会言語的な条件の特定化を試みる。
 (2) ミクロネシア・パラオ、及び台湾の老年層の日本語による会話を録音・文字化し、データベースを構築する。
 (3) このデータに基づいて、音声、文法事象、語彙、言語行動などの面での言語的、社会言語的特徴を記述する。
 (4) (3)の作業を踏まえた上で、インフォーマント間に見られる普遍性及び個別性を明らかにし、また(1)の結果と照らし合わせつつ、その原因をさぐる。


 研究実施計画
 渋谷・由井は、(1)ミクロネシア連邦およびパラオ共和国において老年層の日本語話者にインタビューを行い、DATテープレコーダで録音したものを文字化して、日本語会話データコーパスを作成する。(2)グアム大学MARCにおける文献調査、及びインタビューの内容の分析から、日本語の維持・消滅にかかわる社会言語的要因を探る。(3)同時に(1)のコーパスを分析し、渋谷はテンス・アスペクト・ムードの体系について、由井は語彙の意味的・計量的構造について、詳細な記述を行う。
 土岐・宮島は、台湾において予備的調査を実施し、問題点の洗い出しを行う。具体的には、(1)国立国会図書館や台湾の図書館等における文献調査と現地調査によって、台湾における日本語話者の居住地、日本語使用能力などの実態を把握し、今後の研究計画を作成する。同時に、現地の研究者との協力体制を確立する。(2)台湾人老年層の日本語による談話をDATテープレコーダで録音し、文字化して、音声・文法・言語行動面の部分的な記述を試みる。
 また4名の調査結果に基づいて、消滅しつつある日本語を調査するための、共通の調査票を作成する。
 なお平成12年度は、台湾の現地研究者とのネットワークを編成するために日本班代表の真田信治(大阪大学大学院文学研究科)が、また台湾に残存する日本語を社会言語学的な見地から研究するために簡月真(大阪大学大学院生)が、研究協力者として本研究に参加し、台湾で調査等の活動を行う。


 成果報告
 南洋班(渋谷・由井)、台湾班(土岐・宮島)の2班に分かれ、それぞれ調査を行った。具体的な調査・分析の内容は以下の通り。南洋班:1〜3、台湾班:4〜7。
 1.パラオ共和国・ミクロネシア連邦・マーシャル共和国において老年層の日本語話者にインタビューを行い、DATおよびMDで録音、文字化した。
 2.文字化したデータの一部を分析し、当該地域に残る日本語のテンス・アスペクト・ムード面での特徴(渋谷)および語彙面での特徴(由井)を、話者間の違いにも留意しながら取り出した。テンス・アスペクト面では形式−意味対応が単純化されていること、ムード形式はほとんど分化していないこと、また語彙面では汎用が目立つことなどを見出している。
 3.渋谷は、パラオの日本語を形成するのにあずかったと思われる社会言語的な要因を、報告書にまとめた。
 4.台湾東部地域において予備調査を実施し、日本語話者とのインタビューを試みることによって、日本語話者のおおよその日本語能力を把握した。また、日本語話者の居住地情報なども入手した。
 5.現地の研究者と共同で研究会をもち、今後の研究のためのネットワークを組織した。研究会の内容については、宮島が報告書にまとめた。
 6.DATで録音したインタビューデータを一部文字化した。また、研究協力者の簡月真を中心として、人称代名詞の使用状況などについて予備的分析を施し、報告書にまとめた。
 7.土岐は国立国会図書館等において、戦前・戦中期の台湾の日本語教育の実態を示す資料を収集した。


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