文部省科学研究費補助金 特定領域研究(A)
環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究
A04 日本班

最終更新日 2002.5.20.

危機に瀕した伝統的琉球語沖縄方言の緊急調査研究

 研究組織

 氏 名  所 属 機 関   E-mail 
研究代表者 津波古 敏子 沖縄大学   
研究分担者 高江州 頼子 沖縄大学   
研究分担者 上村 幸雄 沖縄大学   
研究分担者 生塩 睦子 広島経済大学   


                  2002年度

 研究の目的
 明治時代以降の標準語教育政策により沖縄方言は標準語に侵食され、特に沖縄の本土復帰後はテレビや観光産業の発達、交通機関の発達により早い速度で失われつつある。それとともに島々の諸方言は若い世代には継承されず、その担い手は高齢者のみになり、しかも年々その数が減ってきている。沖縄本島周辺の方言のばあい、危機的な状況はさらに深刻である。標準語および首里・那覇の方言から、二重に影響をうけて大きく変容しているからである。その意味では、アイヌ語とともに、これらの諸方言は典型的な危機に瀕する言語となっている。他方では、小中高校における郷土の言語文化の学習の場や高齢者を対象にする行政の場にいる人にとっては村々の方言の知識が必要になってきており、それに対応できる人材を育てなければならないという社会状況が生じている。その意味でも小方言の調査・記録は緊急を要すると言わねばならない。これまでほとんど調査されてこなかった沖縄本島周辺離島の調査を行うこと、記録・保存を目的とした資料の収集を行うことなどが本研究計画の目的である。


 研究実施計画
 研究代表者、分担者の役割分担は以下のとおりである。平成13年度にひきつづき調査研究を進める。
   津波古敏子(代表者)久米島鳥島方言・古宇利島方言・屋我地島方言・浜比嘉方言
   高江洲頼子(分担者)渡名喜島方言
   上村幸雄 (分担者)八丈島方言(沖縄南北大東島・八丈島)・東北方言・出雲方言
   生塩睦子 (分担者)伊江島方言
 上記の役割分担は基本的なものであって、相互に協力しあって資料の収集、意見の交換、成果の公刊を行う。平成14年度は、昨年度にひきつづき、沖縄本島の周辺離島のうち、久米島の鳥島、屋我地島、渡名喜島、伊江島の各方言についての調査をおこなう。今年度からは古宇利島を加え、各方言の音韻、文法、語彙の調査・研究をすすめる予定である。また、日本語形成の観点から、琉球語
諸方言と同じように、日本の古代語の特徴をよく残していると言われる八丈島方言、東北方言、出雲方言などの本土方言の調査を昨年度にひきつづきおこなって、比較対照の材料となる資料を収集するとともに、これにあわせて、八丈島から開拓のために集団で移住してきた人々がつくった集落である、大東島方言の調査もおこなう。渡名喜島の方言については、高江洲頼子が方言辞典の編纂にむけて作業をさらに進め、語彙の補足調査と音声の記述、簡単な文法の記述を行う。伊江島方言については、生塩睦子が35年間にわたる調査研究の成果として1999年に『沖縄伊江島方言辞典』を刊行したので、辞典と並んで伊江島方言の継承にとって欠くことのできない文法書の編纂をめざして文法の調査を進めている。本研究計画では、経費のおおくを旅費で使用するが、これは複数地点での臨地調査による資料の収集を主要な目的にしているためである。



                  2001年度

 研究の目的
 明治時代以降の標準語教育政策により沖縄方言は標準語に侵食され、特に沖縄の本土復帰後はテレビや観光産業の発達、交通機関の発達により早い速度で失われつつある。それとともに島々の諸方言は若い世代には継承されず、その担い手は高齢者のみになり、しかも年々その数が減ってきている。沖縄本島周辺の方言のばあい、危機的な状況はさらに深刻である。標準語および首里・那覇の方言から、二重に影響をうけて大きく変容しているからである。その意味では、アイヌ語とともに、これらの諸方言は典型的な危機に瀕する言語となっている。他方では、小中高校における郷土の言語文化の学習の場や高齢者を対象にする行政の場にいる人にとっては村々の方言の知識が必要になってきており、それに対応できる人材を育てなければならないという社会状況が生じている。その意味でも小方言の調査・記録は緊急を要すると言わねばならない。これまでほとんど調査されてこなかった沖縄本島周辺離島の調査を行うこと、記録・保存を目的とした資料の収集を行うことなどが本研究計画の目的である。


 研究実施計画
 @ 咋年度より調査によって収集している資料を整理,分析する。
 A研究代表者、分担者の役割分担は以下のとおりである。平成12年度にひきつづき調査研究を進める。
    津波古敏子(代表者)久米島鳥島方言・古宇利島方言・屋我地島方言・浜比嘉方言 
    高江洲頼子(分担者)渡名喜島方言 
    上村幸雄 (分担者)八丈島方言(沖縄南北大東島・八丈島)・東北方言
    生塩睦子 (分担者)伊江島方言 
 上記の役割分担は基本的なものであって、相互に協力しあって資料の収集、意見の交換、成果の公刊を行う。
 平成12年度は、沖縄本島の周辺離島のうち、久米島の鳥島、屋我地島、渡名喜島、伊江島の各方言についての調査を開始した。今年度からは古宇利島を加え、各方言の音韻、文法、語彙の調査・研究をすすめる予定である。また、日本語形成の観点から、日本語の古い特徴をよく残していると言われる琉球語諸方言と同じように日本の古代語の特徴を残している八丈島方言、東北方言などの本土方言の調査を昨年度にひきつづきおこなって比較対照の材料となる資料を収集するとともに、これにあわせて、八丈島から開拓のために集団で移住してきた人々がつくった集落である、大東島方言の調査もおこなう。渡名喜島の方言については、高江洲頼子が方言辞典の編纂にむけて作業をさらに進め、語彙の補足調査と音声の記述、簡単な文法の記述を行う。伊江島方言については、生塩睦子が35年間にわたる調査研究の成果として、1999年、『沖縄伊江島方言辞典』を刊行したので、辞典と並んで伊江島方言の継承にとって欠くことのできない文法書の編纂をめざして文法の調査を進めている。


 成果報告
 津波古敏子は昨年(平成12年)にひきつづき、沖縄本島の周辺離島のうち、屋我地方言を調査した。昨年調査をした屋我、饒平名、両集落については、今年度は助詞の調査および基礎語彙の補足調査をおこなった。そのうち、助詞については「屋我地方言の助詞の概観」として調査の結果をまとめた。一方で、昨年から調査をはじめた鳥島方言の予備調査を継続しておこなった。
 上村幸雄は琉球語を含む日本語系言語の形成過程をあきらかにするために重要な鍵を握っていると考えられる日本語の周辺的な方言として、とくに出雲方言(もしくは雲伯方言)を選び、次年度以降に出雲およびその周辺地域(山陰海岸、隠岐)を中心としての日本語圏全体を対象とする比較歴史方言学を展開するための諸種の準備的調査をおこなった。その調査には研究分担者の高江洲頼子、協力者の加藤陽一郎も同行した。
 高江洲頼子は渡名喜島の方言辞典の編纂にむけてこれまで収集した資料の整理を昨年度にひきつづきおこなった。その資料をもとに音韻体系について「渡名喜島の音韻」としてまとめた。
 生塩睦子は、伊江島方言について、すでに出版した方言辞典の語彙の補足調査と文法書の編纂にむけての資料収集を昨年度にひきつづきおこなった。文法についてはとりたて助詞について「沖縄伊江島方言のとりたて助詞」としてまとめた。



                  2000年度

 研究の目的
 本研究計画では、沖縄本島の周辺離島のうち、久米島の鳥島、渡名喜島、伊江島、浜比嘉島の各方言の音韻、文法、語彙の調査をおこなう。これらの方言は、琉球語のなかの中央方言的な役割をはたしている首里那覇方言と日本語標準語から二重の影響をうけ、マイノリティーのさらにマイノリティーとして変容が激しく、その固有の方言はきわめて危機的な状況にある。しかし、これまでほとんど調査されてこなかった。また、沖縄県北大東島には八丈島から集団で移住した人々がいて、古代東国方言の特徴をもつ八丈島方言の調査が可能であるが、沖縄出身者にまじって暮らしているためにその伝統的な方言が消えようとしている。本研究計画ではこの大東島の八丈島方言の調査もおこなう予定である。これまでほとんど調査されてこなかった沖縄本島周辺離島の調査をおこなうこと、記録・保存を目的とした資料の収集をおこなうことなどに本研究の学術上の意義がある。
 代表者、分担者はともに科研費や沖縄県委託事業「琉球列島の言語の記録・保存」など、多くの琉球語諸方言の調査、研究に長年従事したものである。


 研究実施計画
 研究代表者、分担者の役割分担は以下のとおりである。
 音声・語彙資料の収集
  津波古敏子(代表者):久米島鳥島方言・屋我地島方言
  高江洲頼子(分担者):渡名喜島方言
  上村 幸雄(分担者):八丈島方言(沖縄南北大東島・八丈島)・東北方言
 文法の記述的調査
  生塩 睦子(分担者):伊江島方言
 上記の役割分担は基本的なものであって、相互に協力しあって資料の収集、意見の交換、成果の発表をおこなう。津波古敏子、高江洲頼子も担当地点の文法的な特徴を把握するための概略的な調査をおこなう。


 成果報告
 津波古敏子は、言語の島である硫黄鳥島方言が琉球方言においてどこに位置づけられるかを探るために調査をおこなった。平成12年度は音韻体系をまとめ、音韻変化の特徴について分析した。分析の結果、硫黄鳥島方言における音韻の変化のし方に沖縄北部方言と同じ特徴が見られると同時に沖縄中南部方言と同じ特徴も見られることがわかった。また、津波古は沖縄北部の屋我地島の方言を調査し、基礎語彙の資料収集をおこなった。
 上村幸雄は、日本語の形成過程をあきらかにするうえで重要なアイヌ語について予備調査をおこなった。アイヌ語の話し手はほとんどいないと言われているが、予備調査の結果、まだアイヌ語が多少とも記述できる状態であり、調査が可能であるということを北海道にわたりアイヌ語研究者に会ってたしかめることができた。ただし、それには研究資金に恵まれるという条件が必要不可欠である。
 また、上村は、日本における方言形成とそれに先行する言語の存在の問題を探るために、日本の諸方言や日本の周辺地域の諸方言を概観した。
 高江洲頼子は、渡名喜島の方言辞典の編纂にむけてこれまで収集した資料の整理をすすめつつ、資料の追加の作業をおこなった。また、音韻体系をまとめるために確認調査をおこなった。
 生塩睦子は、伊江島方言について、すでに出版した方言辞典の語彙の補足調査と、文法書の編纂にむけて資料収集をおこなった。文法については、今回は名詞を中心に調査をし、格助詞についてまとめた。


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