文部省科学研究費補助金 特定領域研究(A)
環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究
A04 日本班

最終更新日 2002.5.22

危機に瀕した伝統的琉球語八重山方言の緊急調査研究

 研究組織

 氏 名   所 属 機 関   E-mail 
研究代表者 加治工 真市 沖縄県立芸術大学   
研究分担者 波照間 永吉 沖縄県立芸術大学
研究分担者 久万田  晋 沖縄県立芸術大学   


                  2002年度

 研究実施計画
 代表者、分担者の役割分担は以下の通りである。ただし、これは一応の分担であって、 相互に協力しあいながら共同で作業をおこなうものである。特に、録音資料、映像資料の編集は、複数でおこなう。

 加治工真市−方言資料(音声・語彙・語法)の収集研究とテキスト(音声表記)化、および民話、昔話等の録音録画収集とそのテキスト(音声表記)化
 波照間永吉−口承文芸、歌謡の文学的研究、および言語作品のテキスト化
 久万田 晋−映像による記録、および言語表現を伴う民族音楽の収集とテキスト化

 平成13年度に引き続き、池間苗氏、宮良保全氏に研究協力者として参加してもらい、『与那国ことば辞典』、『与那国島の民俗と暮らし』、『琉球の方言−八重山・与那国島』をデジタル方式による資料収集に力を入れる。与那国方言は、原則として長短の区別のない/a,i,u/の3母音体系であり、八重山諸方言の中で喉頭化子音音素を発達させた唯一の方言でもある。また標準語の語頭におけるヤ行子音(弱摩擦音)/j/に与那国方言の/d/が対応するなど極めて特異な音韻現象を有していて、記録保存が必要と考えるからである。
 その他小浜方言、西表祖納方言、鳩間方言、竹富方言、黒島方言、新城方言、波照間方言の音声資料の収集に研究協力者として、八重山方言の調査の実績を持つ仲原穣(千葉大学大学院博士課程)、中本謙(法政大学沖縄文化研究所)、宮良安彦の各氏に参加してもらう予定である。なお、本年度は最終年度にあたるが、危機言語の記録保存、調査研究は、長期にわたっておこなうことが必要であることから、そのための環境整備(地元研究者、情報提供者との協力関係、大学院生、学生をふくむ若手研究者の育成)をおこなう。



                  2001年度

 研究の目的
 琉球語のなかの八重山方言は、人の住む島としては日本最南端の波照間島や、台湾の東100`に位置し日本最西端の与那国島を含む八重山諸島ではなされているが、島ごとの方言差が大きく、与那国島の方言のように、原則として長短の区別をもたない3母音体系(a,i,u)の方言もあれば、竹富島の方言のように鼻母音を発達させた方言もある。しかし、八重山諸島は、その中心地である石垣島の市街地を除けば過疎化が進行して、伝統的な方言の話者がいなくなった集落もあれば、1人あるいは数人しか方言話者がいないという集落もあり、その存続と継承がきわめて危機的な状況にある。本研究計画では、これらの諸島の方言のうち、日本最西端の与那国島、および鼻母音を発達させた竹富島、および調査研究のあまりすすんでいない西表島など八重山諸島の方言音声、口承文芸、民族音楽などを収集し、研究することを目的とする。


 研究実施計画
 代表者、分担者の役割分担は以下のとおりである。ただし、これは一応の分担であって、相互に協力しあいながら共同で仕事をおこなうものである。特に、録音資料、映像資料の編集は複数でおこなう。
  加治工真市−方言資料(音声・語彙)の収集と研究
  波照間永吉−口承文芸、歌謡の文学的研究、および言語作品のテキスト化
  久万田晋−映像による記録、および言語表現を伴う民俗音楽の収集とテキスト化
 2000年度にひきつづき、池間苗氏に研究協力者として参加してもらい、『与那国ことば辞典』をデジタル方式による資料収集に力をいれる。与那国方言は、原則として長短の区別のない/a,i,u/の3母音体系であり、八重山諸方言のなかで喉頭化した子音を音素として発達させた唯一の方言でもある。また、標準語のヤ行の子音(半母音)/j/に与那国方言の破裂音/d/が対応するなど極めて特異な音声現象を有していて、この方言の記録保存が特に重要だと考えるからである。また、音声テキストの作成、音声資料の収集に研究協力者として八重山諸方言の調査の実績をもつ仲原譲(千葉大学大学院博士課程)に参加してもらう。そのほか随時地元八重山の研究者に研究協力者として参加してもらう予定である。地元研究者の協力は本研究計画にとって重要である。


 成果報告
 平成13年度は、研究計画に基づき、以下のとおり調査・研究を実施した。
 加治工真市は、竹富方言・小浜方言・西表島古見方言・与那国方言の調査を実施した。竹富方言については、過去の研究実績の上に立ちながら、竹富方言の基礎語彙のうち「食」「住」に関する語彙をまとめ『琉球の方言』26号(法政大学沖縄文化研究所)に発表した。また、西表島古見方言については、その基礎語彙の調査結果を「古見方言の基礎語彙」として『沖縄芸術の科学』第14号(沖縄県立芸術大学附属研究所紀要)に発表した。与那国方言については、「音韻論−音韻体系、音韻法則」および「与那国の昔話」を「環太平洋の言語」琉球班の研究成果刊行物に発表し、鳩間方言については、「八重山鳩間方言」と題して、音韻体系と語法について『国文学解釈と鑑賞』7月号(2002年)に発表した。石垣方言については、宮城信勇著・加治工真市監修・波照間永吉協力による『石垣方言辞典』を基にした『石垣方言語彙一覧』の刊行作業を進めている。
 波照間永吉は、主に八重山歌謡の音声資料の収集とその歌詞解釈研究、狂言(伝承文学)およびその他の芸能に見られる文芸資料の収集に従事した。また、秘祭とされる西表島古見の豊年祭で歌われる歌謡の“生態”を明らかにするための調査の他、小浜のアヨー、ジラマまどの古謡の演唱資料の継続収集にあたった。さらに西表島祖納村や与那国町租納村にも臨地調査を行い、重要歌謡語彙および民俗語彙の音声資料収集と古謡の演唱資料の収集にあたった。その調査研究の成果の一部を「八重山歌謡のなかの地名」として『沖縄芸術の科学』第15号(沖縄県立芸術大学附属研究所紀要)に発表した。
 久万田晋は、八重山地方の芸能に関する映像・音声資料の収集にあたった。既存資料の収集の他、現地で実施されている芸能記録の作成に従事した。


                            2000年度

 研究の目的
 琉球語のなかの八重山方言は、人の住む島としては日本最南端の波照間島や、台湾の東100`に位置し日本最西端の与那国島を含む八重山諸島ではなされているが、島ごとの方言差が大きく、与那国島の方言のように、原則として長短の区別をもたない3母音体系(a,i,u)の方言もあれば、竹富島の方言のように鼻母音を発達させた方言もある。しかし、八重山諸島は、その中心地である石垣島の市街地を除けば過疎化が進行して、伝統的な方言の話者がいなくなった集落もあれば、1人あるいは数人しか方言話者がいないという集落もあり、その存続と継承がきわめて危機的な状況にある。本研究計画では、これらの諸島の方言のうち、日本最西端の与那国島、および鼻母音を発達させた竹富島、および調査研究のあまりすすんでいない西表島など八重山諸島の方言音声、口承文芸、民族音楽などを収集し、研究することを目的とする。


 研究実施計画
 つぎのような役割分担で本年度の資料収集と研究をおこなう。
   加治工真市(方言資料(音声・語彙)の収集と研究)
   波照間永吉(口承文芸、歌謡の文学的研究、および言語作品のテキスト化)
   久万田晋(映像による記録、言語表現を伴う民族音楽の収集とテキスト化)
 特に『与那国ことば辞典』(池間苗著)の約1万語を著者みずからに発音してもらい、その録音、録画に力をいれる。
 仲原譲(千葉大学大学院博士課程)、および現地八重山石垣市で八重山方言の収集・研究にあたっている石垣繁(元八重山高校教諭)、登野城るり子(石垣市史編纂室嘱託)にも研究協力者として参加してもらう予定である。


 成果報告
 2000年度は研究計画に基づき、以下のとおり調査・研究を実施した。
 加治工真市は、竹富島方言・小浜島方言・西表島古見方言・与那国島方言の調査研究を実施した。竹富島方言については過去の研究実績の上に立ちながら、竹富島方言の分類語彙のうち「衣」に関する語彙をまとめ『琉球の方言』25号(法政大学沖縄文化研究所)に発表した。また、西表島古見方言については、その基礎語彙の調査結果を「古見方言の基礎語彙」として『沖縄芸術の科学』13号(沖縄県立芸術大学附属研究所紀要)に発表した。さらに、調査補助員を使って、40年来の調査で得られた録音テープ資料をデジタル資料化する作業も進め、一定の成果を挙げた。
 波照間永吉は、主に八重山歌謡の音声資料の収集とその歌謡解釈研究、狂言(伝承文芸)およびその他の芸能にみられる文芸資料の収集に従事した。また、秘祭とされる西表島古見の豊年祭でうたわれる歌謡の”生態”を明らかにするための調査の他、小浜島のアヨー、ジラマなどの古謡の演唱資料の収集にあたった。これらの成果は、「八重山歌謡解説」「西表島古見の豊年祭の歌謡の”場”」という形にまとめられた。このような現地調査とは別に、喜舎場永『八重山古謡』(上下)、『八重山民謡誌』などの既存資料中の語注を整理し、索引化する作業も行った。この作業を基に、次年度では重要歌謡語彙およびその他民俗語彙の音声資料の作成を行う予定である。
 久万田晋は八重山地方の芸能に関する影像・音声資料の収集にあたった。既存資料の収集の他、現地で実施されている芸能記録の作成に従事した。なお、この領域については波照間永吉も資料の作成・収集を行っている。この他、調査補助員による与那国方言・小浜方言の調査、石垣島の方言民話の再録なども行っている。

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